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- 2018/05/02 掲載
売り上げに「直結しない」オウンドメディア、それでも取り組むべきワケ
デジタルによって、マーケティングの手法が増えてきた
副島啓一氏(以下、副島氏):デジタル化によりマーケティングの手法は増えてきたと感じます。
デジタルの利点は一言で表現すれば「リアルタイムかつ定量的にセンシング(計測・数値化)ができる」という点です。ユーザーの行動や趣味嗜好が、リアルタイムで手にとるようにわかるようになりました。またスマ-トフォンの台頭で「場所」や「時間」を問わず、接点を持つことも可能な時代です。
もちろん、対象となるユーザー像の推定、悩みの理解、それに対してどのように解決を提示するか、という考え方の流れは変わっていません。ただ、クラウド化の流れで便利なツールが増えてきています。各ツールのテクノロジーを理解し、対象ユーザーの状況に応じた手法の選別ができるマーケターを有する企業が、より成果を上げていくと思います。
──「モノが売れない」時代になったと言われます。企業にとっての差別化要因が変わってきているということでしょうか?
副島氏:特にソーシャルメディアの流行以降、より情報の伝播コストは下がり、情報を個人でも入手しやすくなりました。情報自体の価値は下がってきたように思えます。 ですので、一方通行で企業から情報を提供したからといって、簡単に差別化できる時代ではなくなった。
差別化要因を「ビジネス上の参入障壁」と同義と捉えるならば、「ユーザーとの双方向の関係性・体験」を積み上げていくことが、大きな価値を持つようになってきたと感じています。
実際、我々もツールの提供だけでなく、ユーザー向けのイベントやセミナー開催を通じて「共に学ぶ・一緒に創る」といった点を重視し、評価をいただいています。デジタルと非デジタルの間を行き来し、個々の顧客と対話しながら関係性を作ることで、自社のビジネスの種となる「潜在的なニーズ」をくみ取っていくこともできるのではないでしょうか。
──ガートナーの調査によれば、2017年にはマーケティング部門のテクノロジー投資額が、IT部門のテクノロジー投資を上回ったそうです。CMO(Chief Marketing Officer)を設置する企業も増えていると聞きますが、米国に比べ、日本ではまだそれほど定着していないようにも見えます。
副島氏:日本企業の中にも、グローバルに展開する企業は、マーケティングの精緻化、予算の使い方が欧米の考え方に近いのではないでしょうか。欧米は「国土が広い」「地続きで移動距離が長い」などの理由から、営業がすぐに顧客のところに駆けつけることが難しい。
そこで、非対面でモノやサービスを売るために、精緻にユーザーをセグメントして明確にメッセージを届ける「マーケティング」が必要。私見ですが、だからこそ仕組みや体制なども洗練されているのでしょう。
一方、日本は国土が狭く、いざとなれば直接行って話をすることができます。「とにかく来い」と(笑)。ですから、日本ではいわゆるマーケティングよりも、営業部隊やテレアポ部隊が中心になってきたという経緯があるのでは。
コンテンツは「攻め」にも「守り」にも活用可能
副島氏:役割が大きくなってきたのは、ユーザーのリテラシーや情報感度が上がってきたからではないでしょうか。
多くの企業サイトやサービスサイトでは、企業側の「言いたいこと」がメインとなっているケースが散見されます。しかし、Webサイトへの来訪ユーザーにとって「売り言葉」の羅列では意味がない。ユーザー自身にとって「課題解決となるのかどうか」の情報を欲している可能性が高いはずです。
ですから、Webサイトの役割は「潜在的なユーザーにとって役に立つ情報を提供しつつ、適切なタイミングで自社の強みを伝えること」が重要だと我々は考えています。
単なる商品紹介ではない、ユーザーのための課題解決コンテンツは「攻め(新規獲得)」にも「守り(既存顧客との接点構築)」にも有効です。
──情報を発信しても反応がない、あるいは、反響は得るがなかなか売り上げにつながらないという企業の声もあります。
月岡克博氏(以下、月岡氏):我々がコンテンツマーケティングというメッセージを打ち出したのは2015年頃からで、コンテンツマーケティングそのものが注目されはじめたのは2014年頃からだと思います。もっとも、ずいぶん前から公開している取締役のブログは今になってみればコンテンツマーケそのものですが。
その頃から、クライアント企業の関心も「このキーワードは検索順位が何位になるか?」ということから「この記事でどのくらい流入が増えるか?」「MA(マーケティングオートメーション)ツールと連携したいが、どうしたらよいか?」と変わってきたと思います。
ユーザーがWeb上の情報を取捨選択するリテラシーはどんどん上がっています。確実に自社の見込み顧客にリーチするためには、ペルソナを定め、どのユーザーに、いつ、どんな情報を届けるかを設計する必要があります。ユーザーに必要なときに、必要な情報が届けられないブランドやサービスは、今後ユーザーの離反を招きかねません。
月岡氏:検索流入から即購入ということでなく、ユーザーとの関係性強化に軸足を置くよう考え方を変えていく必要があります。購入というコンバージョンに向け、少しずつステップアップしてもらう機能が、BtoBビジネスだけでなく、BtoC領域でも重要性を増してきていますね。
また、ユーザーの役に立つコンテンツをサイトに掲載していくと、長期的に「●●分野に詳しいサイトだ」とサイト全体の評価を高めてくれます。いずれにせよ、コンテンツマーケティングは、すぐにコンバージョンを獲得するための施策ではないと意識を変える必要があるでしょう。
──コンテンツマーケティングに向いている業種というのはありますか?
月岡氏:(購買決定まで時間がかかる不動産や金融系など)何かユーザーの明確なる課題や問題解決に関わる商品などは、向いている領域と言えるでしょう。
自社の商品を必要とするユーザーが、商品名ではなく、その課題について検索したり情報収集したりするときに、自社サイトに応えられるコンテンツがあるかを考えやすいからですね。
さらにいうと、サイト来訪後の「使い勝手」を考えることも大事です。「探しやすい」「見つけやすい」「ニッチな検索条件に対応している」など、課題をもって来訪したユーザーにきちんと課題解決をしてもらえるかを突き詰めていきます。
そうした活動が巡り巡って、ユーザーに選ばれるブランドや商品につながっていくのだと思っています。
【次ページ】購買へ、ユーザーの「心の階段を上げる」には
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