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  • 2018/07/05 掲載

「決済」を理解する13のトピックス 米国の実態やモバイルサービス、最新動向など

連載:シリコンバレー発 米テックレポート

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進化し続ける決済手段(ペイメント)に、政府も民間企業も多く注目をしている。中でもキャッシュレス決済は、Fintechの中でも最も重要なトレンドであるといえる。その進展の中心にいるのは主にIT企業たちだ。アメリカのシアトルで始められたAmazon Goのレジなしショップは、大きなインパクトと影響を与えた。本レポートでは、VISA、マスターカード、アメックス、そしてPaypalを生んだ、キャッシュレス大国アメリカの最新決済事情を13のトピックスで理解する。

ITテック/知財リサーチャー 山田 世智

ITテック/知財リサーチャー 山田 世智

早稲田大学法学部卒。富士通株式会社に入社し、テクノロジーソリューション分野における知的財産マネジメント・契約業務に従事。特許出願動向調査に関連して、変化が速い最新テクノロジートレンドの調査も担当。現在は世界的なイノベーションの発信地の一つであるアメリカ、シリコンバレーにある富士通グループの研究所、Fujitsu Laboratories of America, Inc.に赴任。次の世界的イノベーションの種やその誕生プロセスを捉えて、将来の機会に変えるべく日々活動中。これまでのレポーティング業務による、半導体からAI、クラウド、3Dプリンタ、サイバーセキュリティ、量子コンピュータなど幅広いテクノロジートレンドの動向把握と、特許視点での調査分析が強み。表面のトレンドやメッセージの裏にある、「本質を捉える」ことをつねに重視する。

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キャッシュレス大国・アメリカの決済事情を、在米リサーチャーの筆者が説明する
(©absent84 - Fotolia)

生活者目線で見る、アメリカの決済環境

 ここではまず、筆者のアメリカでの生活体験から来るペイメント方式の環境を紹介する。

(1)公共料金

 公共料金、行政サービスや、交通法規違反などでペナルティを支払う場合、メールでチェックを送る方法や、オンラインでの決済も用意されるようになってきた。

 自動車のプレートナンバーの更新の際も費用が数万円ほどかかるが、運輸局のサイトからオンラインで決済可能になっている。

 ガスや水道、電気料金も、かつては毎月チェックをメールで郵送する決済が常用されていた。しかし今では、銀行引き落としに対応したり、不動産業者がサービスで決済代行した上でまとめて請求額をオンライン決済させたりするようになり、便利になってきた。

 インターネットやスマートフォン回線については、クレジット、デビットカード支払いのほかに、旅行者向けとして使い切りの1か月分のプリペイドも用意されていて便利だ。

 なお、サンフランシスコのカルトレインやヴァートなどの鉄道やバスなどの乗り物は「CLIPPER」と呼ばれるスマートカードが用いられている。電子マネーをチケット売り場でチャージして運賃の支払いに用いる。

(2)ガソリンスタンド・無人マシーン・ATM

 ガソリンスタンドやベンディングマシーン(自動販売機)などでは、クレジットカード、デビットカードしか受け付けない種類のものがある。

 それもアメリカで発行したクレジットカードでなければ受け付けない場合もある。支払いの暗証番号代わりに、登録されている住所のZIPコード(郵便番号)を聞いてくるのだ。もし現地のクレジットカードがなければ、店舗のほうに現金で払うという代替策が必要になる。

 そして、ATM。これは銀行に備え付けてあるが、銀行は日本のようにどこにでもあるわけではない。ダウンタウンや郊外まで車で行く必要があり、結構な手間だ。

 銀行以外にもダウンタウン、ショッピングモール、駐車場、レストラン、図書館などに設置されているので、何かのついでに下ろすこともできる。ただし手数料が3ドルかかることもあり、日本よりもかなり高い。それを嫌がって、現金は自分の取り扱い銀行のATMのみで(手数料無料で)下ろす人も多い。

(3)ショッピング

 普段のショッピングはどうだろう。ネットスーパーはカード決済が基本だが、スーパーマーケット内では現金、クレジット、デビットカードをほとんどのレジで使うことができる。

 ネットスーパーも人気だが、まだまだスーパーに足を運ぶ人は多く、レジはよく行列ができる。また、クレジットカード専用の高速レジを置いていたりもする。買い物の際、クレジットカードだとサインを要求され、デビットカードだと暗証番号を要求される。

 どちらもひと手間ではあるが、現金だともっと手間がかかる。アメリカ通貨は日本の現金のように払いやすくないためだ。

 単位は1セントまであるが、支払うためのアメリカの貨幣は、1セント、5セント、25セント、1ドル札、5ドル札、10ドル札、20ドル札に分かれている。額を聞いてからとっさに数えて渡すことも、渡された側がとっさに確認することも難しいのだ。

 数字を打ち込み、カードでデジタルに決済を済ませるのが迅速かつ安全だ。

(4)レストラン

 レストランやパブではどうか。こちらもスーパー同様、現金、クレジット、デビットカードが幅広く使えることが多い。

 しかし、たまに「現金オンリー」のお店もある。アジア系や日本系ラーメン屋でもたまに見かける。その場合、店内に置かれたATMで下ろして決済するようなこともある。不思議な光景だ。当然だが、手数料分、高くかかる。

 加えて、レストランなどの場合は飲食代に加えチップの計算と支払いも必要だ。2人くらいなら個別に決済させてくれることもあるが、3人以上だと時間がかかってしまう。

 誰かが代表してカードなどでチップも計算して全額を払い、それぞれの仲間に個別に請求することになる。ここで個人送金アプリが非常に役立つ(後述する)。ただ実感として、ローカルの人ほど、レストランは現金で払っている人が多いように思う。現金に慣れているのだろう。

(5)その他

 観光ツアーやホテルのルームサービスなどで奉仕を受けた場合もチップが必要だが、これも現金で支払うほかない。アプリで送金する時代がいずれ来るだろうか。ほぼ一度しかやり取りがない相手なのでおそらくそれは来ないように考える。

 また自動車や不動産の売買などの大きな買い物では、セキュリティ上、大きすぎる金額はクレジットカードで決済できず止められる場合がある。チェックに金額を書いて相手方に振り出すのが通常だ。

 このように、用途や金額によってさまざまなペイメントが行われていて非常に複雑だ。中でもクレジットカードが好んで使われるのは、クレジットスコアがついて、社会的な特典を得やすくなる利点が大きい。

 また、支払いの請求を先送りにしてリボ払いで吸収することもできる。一方でデビットカードは、クレジットカードを持てない層、若年層に人気のペイメント手段といえる。

 しかし、口座からの直接引き出しであるため、不正取引防止用のセキュリティが強く、普段より離れた地域で大きな買い物をすれば、取引をストップする場合もある。

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