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- 2019/02/04 掲載
IoTスタートアップ11社の取り組みからわかる「IoTで何ができるのか」
ドリコス:生体センサーでオーダーメイドなサプリメント
オーダーメイドで調合した栄養素を粉末で提供するサプリメントサーバー「healthServer」を販売している企業。創業者の竹康宏氏は慶応義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学科スマート・デバイスシステム専修。半導体チップの三次元集積のための高速無線通信インタフェース、電力伝送システムの研究に従事しながらも、2足の草鞋で起業を目指してビジネスコンテストにも応募。ベンチャービジネスの将来性をジャッジするテレビ番組でホリエモンこと堀江貴文氏に「healthServer」のアイデアが高く評価されたことをきっかけに、竹氏は「healthServer」の開発に取り組むこととなる。
「healthServer」は本体側面部分に生体センサーを搭載している。そのセンサーに両手の親指でタッチすると自律神経の状態を測定して身体負荷や消費されている栄養素を計算する。その後、ユーザー個々にオーダーメイドした栄養素を含んだ粉末サプリメントが「healthServer」から出てくる。粉末サプリメントは水に溶かして飲んだりサラダや料理にかけたりして摂取できる。
2017年3月にダイドードリンコ、 資生堂などから総額約1.2億円、2018年4月には三菱UFJキャピタル、環境エネルギー投資、加賀電子から総額2.3億円の資金調達を実施している。
http://dricos.co.jp/
ノバルス:機器をIoT化させる乾電池
IoT導入支援企業。自社商品として乾電池型IoT製品「MaBeee」「見守り乾電池」などがある。創業者の岡部顕宏氏は精密機器メーカーのセイコーインスツルにもともと勤務し、プライベートでさまざまな企業の人が垣根を超えて集まり交流するサークル活動「ヤミ研」の運営に携わっていた。岡部氏は「ヤミ研」で活動する中で「MaBeee」の着想を得て、「ヤミ研」のメンバーから助言をもらいながらアイデアをプラッシュアップしていくことになる。そして、電子基板とソフトのプロトタイプを完成させ、乾電池型IoT製品というアイデアが固まった段階で起業を決意する。
同社のIoT製品「MaBeee」は乾電池の形状をしており、乾電池を使用する機器になら何にでも装着できる。たとえば「MaBeee」をミニ四駆に装着するとスマホアプリでミニ四駆のオンオフだけでなく速さも制御することが可能となる。
また、「見守り乾電池」も乾電池の形状をしている製品で、使用する機器に装着するとその器具が「見守り機器」になる。たとえば1人暮らしの高齢者のテレビリモコン、ガスコンロなどの機器に「見守り乾電池」を装着すると、機器の利用回数を家族がモニタリングして安否確認に利用できる。また「MaBeee」「見守り乾電池」などの自社商品開発で蓄積したIoTのノウハウを活かし、日用品から工場の機械まで、IoT化を支援する事業も行っている。
http://novars.main.jp/
AbiliSense:音声認識で異常時に警告
異常事態を検出して警告する音声認識エンジンを提供している企業。AbiliSenseの音声認識システムの働きは次のようなプロセスを経る。マイクロホンで音声を拾い、その音声を音声認識エンジンに伝達する。すると音声認識エンジンが音声をリアルタイムで分析。音声が異常事態によるものかどうかを判定 創業者のErez Lugashi氏はグローバル企業で情報セキュリティ担当として勤務してきた。AbiliSense起業のきっかけとなったのは、2014年のイスラエルとパレスチナの間で戦争が起きた際に空襲サイレンが鳴り響いたことだ。その経験から、異常事態、危険が起きた際に警告する事業の構想を得る。 しユーザーに通達する。
スマートホーム実現の一翼を担う技術としてその音声認識システムには注目が集まっている。
https://www.abilisense.com/
BONX:話すだけで相手とつながる耳かけ式デバイス
耳かけ式のウェアラブル・コミュニケーションツール「BONX Grip」を開発・販売している企業。BONX創業者の宮坂貴大氏が「BONX Grip」の構想を思いついたのはボストン・コンサルティング勤務時代だ。GoPro創業者ニック・ウッドマンの、自身がサーファーであるために海で使用できる防水・耐衝撃性の小型カメラを発案した、という創業ストーリーに触発された。スノーボード愛好家の宮坂氏は、雪山でもスノーボード仲間と簡単にコミュニケーションできるツールにきっとニーズがあるだろうと考えたのだ。
「BONX Grip」はスピーカー+マイクロホンを内蔵しているイヤホンとスマホアプリで構成される。イヤホンはBluethoothでスマホと自動接続。インターネット通信を活用するので通話距離は無制限だ。最大10人まで同時通話が可能である。
機械学習を活用した発話検知技術により話すだけで通話を開始できる。さらにユーザーの声以外のノイズは拾わないので快適なコミュニケーションが可能だ。電波が悪い場所での使用も想定しており、一度接続が途切れても自動で再接続する仕様となっている。
これまでに国内最大手補聴器メーカーのリオンなどから総額4.5億円の資金調達を実施している。米国での販売にも注力しているとのこと。
https://bonx.co/
Locix Inc.:視覚センサーで物流の課題を解決
IoT用の超省電力の無線視覚センサーを開発している企業。創業者のVikram Pavate氏は省電力のマイクロLEDのベンチャー企業で事業開発責任者を務めたのちに同社を創業した。なお共同創業者にはカリフォルニア大学バークレー校のセンサー技術研究の権威であるVivek Subramanian教授とElad Alon准教授を迎えている。
Locixの無線視覚センサーの利用用途としては、オペレーションセンターから別拠点の配送センターの様子のモニタリング、入出庫車両情報をリアルタイムで把握・管理、倉庫内の器具の位置確認、空きスペースの有効活用などが挙げられる。
同社の無線視覚センサーは3つの技術的強みを持つ。1つが「Locixビジュアル・センサー」。従来の無線通信と比較して低電力で画像データの通信ができる。2つ目が「局地測位システム」で、この測位システムを使用すれば複雑な構造の屋内環境でも正確に人や物の位置を特定できる。3つ目がLocixクラウドだ。機械学習とオープンAPIを組み合わせて視覚・空間データを分析、物流上の課題を可視化してリアルタイムに対処できる。
なおLocixの無線視覚センサーは安川情報システムとプロロジスらが共同開発した入出庫車両情報をリアルタイムに把握・管理できる「スマートバースシステム」にも活用されている。
https://www.locix.com/
MODE,Inc:センサーデータを簡単に収集できるプラットフォーム
センサーのデータを簡単に収集・活用できるIoTプラットフォームを提供する企業。創業者の上田学氏は、Google Maps日本版の開発リーダーを務めたのち、Twitterの日英チームを主導した経験のあるエンジニアだ。その後、スマートフォンからスプリンクラーを操作できるアプリ「スマートスプリンクラー」の会社を立ち上げようと考えた。しかし、計画は頓挫。その後、上田氏はホームセキュリティシステム開発に取り組むことになった。
その過程で、IoTに取り組みたい企業は多数存在するが、センサーとクラウドをつなぐ作業が高いハードルとなっている事実を知る。そこで、センサーデータを簡単に収集して活用できるIoTプラットフォームを提供するMODEを創業した。
MODEはあらゆるセンサーのデータを取得してクラウド上のデータベースに保存し、時系列で分析できる機能まで提供しているIoTプラットフォームだ。
製造工場において製造機械に取り付けたセンサーからMODEのIoTプラットフォームにデータを送信することで、リモートかつリアルタイムで製造工場の状態が確認できる。またデータを継続的に収集し、将来起きうる故障を事前に予測できるよう学習していく。
同社はブルーボトルコーヒーやFitbitに投資したことで有名な米VC、True Venturesなどから560万ドルの資金調達を実施している。
https://www.tinkermode.jp/
【次ページ】小売やスマートホームなどさらに5社を紹介
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