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  • 2019/03/07 掲載

キリン R&D本部長 小林憲明氏がR&D強化のために「外へ出よ!」と尻を叩くワケ

日本が誇るフェロー・CTOに学ぶ

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フェロー、最高技術責任者(CTO)の高い業績の背景には、独自の考え方や思考・行動の原則がある。そして、これらのノウハウには、企業の創造力やイノベーション力を高めるパワーや日本を元気にするヒントがある──。フェロー、CTOに自らのノウハウを語っていただく本連載。今回は、キリン 取締役常務執行役員 R&D本部長を務める小林 憲明氏に話を聞いた。小林氏はキリンの研究所で工場の生産性を向上させる包装装置などの開発を手がけ、現在はR&D本部長としてR&D戦略全般および品質保証を統括している。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

photo
キリン
取締役常務執行役員 R&D本部長
小林 憲明氏
※2019年3月時点

研究者だからこそ「製品化までの意識」を持ってほしい

(アクト・コンサルティング 野間 彰氏)──キリンはキリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンが展開する総合飲料事業の推進のためにグループを横断して、各社の事業管理や専門サービスの提供を行っています。

 そうしたキリングループにあって、小林さんは工場の生産管理や工程管理の技術者として経験を積み、工場長、さらに海外や企画なども経て、現在はキリンのR&D本部長の立場にあります。その間、包装工程の合理化に向けた装置開発なども研究所で手がけてこられたわけですが、特に研究開発の分野で成果を上げるために心がけていることはありますか。


小林 憲明氏(以下、小林氏):キリンのR&D本部を率いるようになってからは、「新製品の種を生み出すだけでなく、製品化して世に送り出すまでの意識を持つことが大切だ」と研究者には常々話しています。

 というのも、キリングループは「健康」を社会課題の重点課題の1つと捉え、免疫の根幹を強くするプラズマ乳酸菌などの素材開発や、認知機能の改善に向けたホップの機能性の研究などを行っていますが、そこでの研究結果のうち、商品化にまで至るのはごく一部に過ぎないからです。

 それは事業会社の状況もあり仕方のないことですが、一方で、研究者として悔しいことに変わりはありません。ならば、社内ベンチャー制度などを活用して、ぜひ自分で商品化まで手がけてほしいわけです。無論、素材の安定した量産には開発とは別の難しさがあるなど苦労は山ほどあります。ただ、それが理解できなければ良い素材を開発できず、そこでの経験は後に必ず生きるはずです。

 加えて、技術者にとって商品化の喜びは何とも言い難いものがあります。たとえば、当社では一昨年に47都道府県ごとの味の違いや香りが楽しめる「47都道府県の一番搾り」プロジェクトで成果を上げましたが、実はこれが大変で、若手技術者が試行錯誤を重ねて何とか実現にこぎつけました。その際の、新製品がお店に並んだ時の彼らの笑顔を私は忘れることができません。

 メーカーとして商品をお客様に提案できる立場にあるのなら、私としてはぜひ同じ喜びを多くの研究者に味わってほしいのです。

画像
種を生み出すだけでなく、製品化までの意識を持つことが大切だという

R&Dの「R」を強化するには社外とのパイプ作りが大事

──商品化の苦労を乗り越えるために何がポイントになるでしょう。

小林氏:新商品開発には、社内外との多様な協力が不可欠です。品質維持のための生産や品質保証、素材の魅力を引き出すためのマーケティング、近年ではさまざまな場面で、ITの支援も必要となっています。それらを得る上で何より大切なのは、商品の魅力を社内だけでなく社外でも訴え、協力を仰げる賛同者とのパイプをできる限り広げることです。

 もちろん、研究だけに集中したい研究者もいます。R&Dは文字通り、「Research」と 「Development」の双方で成り立つわけですから、研究に秀でた人材も無論、大切です。

 一方で、当社として、商品化の大切さを研究者に意識してほしいということは述べたとおりです。

 少子高齢化により事業環境が大きな転換点を迎え、今後、ビールをはじめとする酒類や清涼飲料の市場規模の縮小は避けられません。当社は事業ポートフォリオの見直しを迫られており、そこで鍵を握るのが、新たな事業や商品のベースとなるR&Dの「R」です。

 これまで当社では基礎研究を担う「基盤技術研究所」が、商品化のための研究を行う4つの研究所とは別に存在し、長期的な視点でグループに貢献する研究を行ってきました。ただし、そこでの特許などで十分な利益を上げていくことは、今後は難しくなっていくでしょう。

 そこで、今後も基礎研究を続けていくためにも、“確実に得点を取れる”ような、いわば商品化を視野に入れた研究の重要性が増しているのです。

──研究開発の方針転換は一大改革とも言えますが、そうした意識は研究者にどれほど浸透しているのでしょう。

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アクト・コンサルティング
取締役 経営コンサルタント
野間 彰氏

小林氏:理解はしつつも戸惑っている段階です。もっとも、当社の事業の柱が今後もビールや清涼飲料であることに変わりはありません。そうした中で、研究者の得意、不得意も踏まえつつ、成果を上げられる体制を整えられればと考えています。

【次ページ】デカフェ技術の導入で数億円、「実際に投資すれば、あとは進めるしかありませんから(笑)」

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