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  • 2019/05/28 掲載

トヨタ、小田急電鉄、JapanTaxiが“本気”の「MaaS」、三者三様のアプローチ

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我々の日常生活を大きく変える可能性を持つ「MaaS(Mobility as a Service)」。さまざまな乗り物とサービスがつながり、人の移動の最適化が図られる。現在、交通事業者を中心に多くの企業がMaaS提供体制の構築に取り組んでいる。その最先端を走るトヨタ自動車、小田急電鉄、JapanTaxiの3社が、共通の課題や今後の普及に向けたポイントなどを徹底議論した。

執筆:フリーライター 岡崎勝己

執筆:フリーライター 岡崎勝己

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MaaSについてトヨタ自動車、小田急電鉄、JapanTaxiのキーマンが熱い討論を交わした

都市構造を変えるほどのインパクトを持つMaaS

 人の社会は、移動技術の発達とともに発展を遂げてきた。船や馬、鉄道、自動車、飛行機といった新たな移動手段の登場で人の行動半径は増し、それが社会と産業に新たな革新をもたらしてきた。

 そして今、ITの進化を背景に、従来の移動の在り方を大きく変える移動技術が胎動を始めている。それが、目的地までの移動手段をサービスとしてとらえ、多様なサービスを組み合わせてワンストップで提供する「MaaS(Mobility as a Service)」だ。

 MaaSでは、複数の交通手段を乗り継いで移動する際の利便性を高めたり、都市部での交通渋滞や環境問題、地方での交通弱者対策などの問題解決にも役立つと期待されている。

 最先端のカスタマーエクスペリエンス(CX:顧客体験)を学び、体験できるカンファレンス「CX DIVE」で行われた「新しい移動体験、変わるCX」と題したセッションでは、小田急電鉄 経営戦略部 モビリティ戦略プロジェクトチームの西村 潤也氏と、JapanTaxi 取締役 執行役員 CTO 岩田 和宏氏、トヨタ自動車 未来プロジェクト室 室長代理 兼 イノベーショングループ長の天野 成章氏が登壇。今後のMaaSの在り方について熱く語った。

 セッションのモデレータを務めるMaaS Tech Japan 代表取締役の日高 洋祐氏は、「すでに我々はタクシーやバス、鉄道や自転車など、多様な移動手段を利用しています。それらのMaaSによる一体利用が可能になれば、人の移動行動が劇的に変わるとは確実です。そのインパクトは都市の在り方の見直しを迫るほどです」と説明する(図1)。

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MaaSにより交通手段の一体的な利用が可能になる。交通手段の利用にあたっての制約条件を考えずに良くなるという

小田急電鉄が考える、新たな公共交通実現への3つの鍵

 こうした変化を好機と捉え、すでに少なからぬ企業が苦労しつつもMaaSへの対応に取り組んでいる。その中にあって、「当社の強みは安心・快適という価値を持つ鉄道インフラにあります。これとITを掛け合わせることで、“会いたい時に、会いたい人に、不自由なく会いに行ける”街の創出に取り組んでいます」と語るのは、小田急電鉄の西村氏だ。

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小田急電鉄
経営戦略部 モビリティ戦略プロジェクトチーム
西村 潤也氏

 小田急電鉄ではMaaSの実証実験を2018年9月に神奈川県で実施した。自動運転バスや電動車いすの予約やルート検索、飲食店なども可能なアプリによる、新たな移動機会の創出や生活サービスとの連携などに取り組んでいる。

 交通事業者の先行きには、少子高齢化による利用者減が暗い影を落とす。また、同様の理由で高齢者の生活支援も社会課題になっている。小田急電鉄の実証実験ではそれらの課題を織り込み、同社が提示する新たな公共交通モデルの実現を目標に掲げている。

 「新たな公共交通では、移動手段の拡充と選択を支援するアプリとデータ、加えて持続的な運営を可能にするビジネスモデルの3つが鍵を握ることを確認できました」と、西村氏は実証実験の成果を説明する。

配車依頼アプリがユーザーに指示される理由

 対して、JapanTaxiの岩田氏は「MaaSによる他事業者との連携により、タクシーの利便性は格段の向上が見込めます」とタクシー業界の観点から指摘した。そのために同社が開発し、すでに700万ダウンロードを突破したタクシー配車アプリが「Japan Taxi」である。

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JapanTaxi
取締役 執行役員 CTO
岩田 和宏氏

 Japan Taxiは、アプリ1つでタクシーの手配や予約から、タクシー料金の支払いまでを行う機能を搭載している。特にGoogle Mapなどの地図サービスやスマートスピーカーとの連携により、タクシーを呼ぶ手間を削減できることや、決算や経費精算へのシステム対応により事務作業の手間を軽減できることなどがユーザーに支持されているという。

 「日本交通では6年前、配車依頼の7割を電話が占めていましたが、今では逆にアプリが7割を占めるまでになっています」と岩田氏は打ち明ける。

 そして、自動車メーカーの“雄”であるトヨタ自動車も、早くからMaaSに注目し、クルマを作って販売するだけのビジネスモデルから転換を図っている。

【次ページ】トヨタ自動車の秘策とは? 「100年に一度の危機」を乗り越えるために

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