- 2023/03/28 掲載
リーガルテックとは何か? コロナで激変した法律×テクノロジーの市場動向や企業リスト
リーガルテックとは何か?
リーガルテックとは、法律が関わる業務の利便性向上を目的としたITサービスの総称だ。リーガルテックは、法律(Legal)と技術(Technology)を合成した造語である。中には、弁護士や司法書士など、法律に関わる士業固有のサービスというイメージがある人もいるかもしれない。しかし、実際は一般企業でもリーガルテックを利用する場面はいくつもある。たとえば、契約や特許出願などは、一般企業でも必要となる法務関連の業務だ。法務関連業務全般で、リーガルテックによる効率化が見込める。
・日本でリーガルテックが注目される背景
日本でリーガルテックが注目されるようになった背景には、2020年から続くコロナ禍の影響がある。なぜなら、コロナ禍により、法務関連の業務も含めてオンラインで完結できるようにする必要に迫られたからだ。「オンラインで法務関連の業務を完結するにはリーガルテックが必要」ということで注目を集めるようになったのである。
また、少子高齢化の影響で労働人口が減少し、業務の抜本的な効率化に迫られていることも、日本でリーガルテックが注目されている要因の1つだ。
・リーガルテックの最新動向(海外・日本)
イギリスや訴訟大国のアメリカは、リーガルテックの先進国だ。リーガルテック先進国では、業務効率化によるコスト削減よりも、専門性が高い問題をいかに解決するか、業務をいかに効率的に進めていくかといった目的でリーガルテックを活用している。
一方、日本では、弁護士法によって非弁行為が禁じられているため、イギリスやアメリカほどリーガルテックが普及していない。2022年現在、日本におけるリーガルテックは、電子署名や契約書の作成、契約締結や契約書類の管理、紛争解決のサービスが多く見られる。
・日本におけるリーガルテックの市場規模
リーガルテック市場全体を示すものではないが、矢野経済研究所が公表している「電子契約サービス市場に関する調査を実施(2022年)」によると、2021年の電子契約サービス市場規模は約140億円で、前年比38.6%増と順調に伸びている。この伸びは、コロナ禍により業務のオンライン化が急速に進んだためだ。
2022年以降もデジタル化・DX化の流れに乗って市場規模は大きくなり、2025年には約395億円と2021年に比べて約2.8倍も伸びると予測されている。ただし、直近2~3年のリーガルテックは、2025年の崖問題もあり、伸び悩む可能性もある。
なぜなら、DX化推進にはさまざまな問題を乗り越える必要があり、企業がやらなければならないことが多いからだ。問題を解決して企業のDX化が進んだ後は、またリーガルテック市場も大きくなることが期待される。
リーガルテックのカオスマップ
リーガルテックのサービスカテゴリは、多岐にわたる。そこで、リーガルテックのカオスマップを紹介する。上記で示したカオスマップでは、契約法務を「案件受付管理」「契約書作成・レビュー」「電子契約」「締結済み契約管理・CLM」「翻訳」「リサーチ」の6つのプロセスに分類している。
「案件受付管理」「契約書作成・レビュー」「電子契約」企業一覧
「案件受付管理」「契約書作成・レビュー」「電子契約」「締結済み契約管理・CLM」「翻訳」「リサーチ」「紛争・訴訟のサポート」「法律事務所のサポート」についてサービス内容およびサービスを紹介する。・案件受付管理
案件受付管理は、起案者である事業部と法務担当者において、「どのような法務案件があるか」の受付や対応状況を管理するためのサービスだ。事業部と法務部間を円滑に取り持つためのものである。
GVA TECH | GVA manage |
トムソン・ロイター | HighQ |
マイクロソフト | SharePoint |
サイボウズ | kintone |
・契約書作成・レビュー
契約書作成・出願・登録申請など、法律の関わる文書の作成には、さまざまな法的チェックが必要だ。紙ベースの文書を1つひとつチェックするには手間がかかり、なおかつ人的ミスも起こりかねない。こういった繁雑な文書作成にも、リーガルテックは役立つ。
文書作成のリーガルテックとしては、法的なチェックポイントを通知して文書作成をサポートするサービスや、テンプレートから法的文書を自動生成するサービスなどがある。たとえば、文書作成サービスとAIレビューサービスとを併用すれば、精度の高い法的文書作成も対応できるだろう。
また、契約書を作成する際は、専門的な知識を持つ法務担当者のリーガルチェックが必要だ。人間がチェックするため、どうしても時間がかり、人件費もかかってしまう。契約書のリーガルチェック問題を解決するツールが、AIレビューサービスだ。
AIレビューサービスは、AIで自動的に契約書のリーガルチェックを行うことができ、簡単な契約書ならAIレビューを通せば済むため、大幅な業務効率化が期待できる。法務担当者は、AIレビューサービスで難しい部分のチェックのみを行えばよい。そのため、人的コストだけでなく時間の節約にもなるだろう。
GVA TECH | GVA assist |
LegalOn Technologies | LegalForce |
リセ | LeCheck |
GVA TECH | GVA NDAチェック |
LawFlow | LawFlow |
FRAIM | Lawgue |
ビスタクルーズ | Emilee Law Suite |
エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ | インテリジェント契約チェッカー |
KIYAC | KIYAC |
メリットパートナーズ法律事務所 | CollaboTips |
・電子契約
電子契約は、電子署名やタイムスタンプなどのITで、法的な有効性を担保する仕組みだ。なお、契約の受付や電子契約は、すべてオンラインで完結するが、相手も同じサービスを利用する必要がある。
弁護士ドットコム | クラウドサイン |
GMOインターネットグループ | GMOサイン |
DocuSign | DocuSign |
freeeサイン | Freee SIGN |
マネーフォワード | マネーフォワードクラウド契約 |
インフォマート | BtoBプラットフォーム 契約書 |
Adobe | Acrobat Sign |
Dropbox | Dropbox Sign |
NXワンビシアーカイブズ | WAN-Sign |
xID | e-sign |
TREASURY | Great Sign |
ペーパーロジック | paperlogic電子契約 |
大興電子通信 | DD-CONNECT |
クロスベイター | DX-Sign |
jinjer | jinjerサイン |
ベクター | みんなの電子署名 |
マルジュ | FAST SIGN |
TeraDox | 契約大臣 |
ハイホー | クラウドスタンプ |
シヤチハタ | Shachihata Cloud |
サインタイム | サインタイム |
リーテックス | リーテックスデジタル契約 |
ハイホー | イースタンプ |
いえらぶGROUP | いえらぶサイン |
weee | weee |
日鉄日立システムエンジニアリング | DocYou |
クラウドコントラクト | CloudContract |
「締結済み契約管理・CLM」「翻訳」「リサーチ」「紛争・訴訟のサポート」「法律事務所のサポート」企業一覧
・締結済み契約管理・CLM締結した契約書を格納したり、期限管理や契約締結の前後に発生するプロセス全体を管理するために使うサービス。CLM(Contract Lifecycle Management)ともいう。契約文書は、すべて電子化されるため、案件もオンライン上での管理が可能となる。案件の進捗状況も一元管理でき、情報共有ができて担当者間の連絡や進捗のフォローもしやすくなる。
ContractS | ContractS CLM |
MNTSQ | MNTSQ |
インフォコム | MyQuick |
Hubble | Hubble |
Sansan | Contract One |
LegalOn Technologies | LegalForceキャビネ |
LIRIS | LIRIS CLM |
弁護士ドットコム | クラウドサインAI |
SAP SE | SAP Ariba Contracts |
日鉄ソリューションズ | CONTRACTHUB@absonne |
CIJ | Ofigo契約書管理Facil |
住友電工情報システム | 楽々DocumentPlus |
コスモルート | Legaledge |
SRI | BUNTANリーガル |
日立ソリューションズ | 活文 |
プロレド・パートナーズ | Pro-sign |
コンストラクション・イーシー・ドットコム | CECTRUST-Light |
・リサーチ
各種リサーチサービスは、電子化された法律の専門書や過去の判例から、必要情報を素早く参照できる検索ポータル的なサービスだ。法律の専門書や過去の判例を紙ベースで利用するには、膨大な保管場所と探す手間がかかる。これらの文書が電子化されていれば、文書の保管場所を節約できるとともに、欲しい情報にもすぐアクセスできるだろう。
訴訟において、法的に有効とされる証拠を探すフォレンジック作業をサポートするツールもリサーチ業務の一つだ。データから電子的な証拠を見つけるサービスのことは、デジタル・フォレンジックという。
ウエストロー・ジャパン | Westlaw Japan |
Legal Technology | LEGAL LIBRARY |
第一法規 | D1-Law.com |
LIC | 判例秘書INTERNET |
サピエンス | LION BOLT |
TKC | TKCローライブラリー |
弁護士ドットコム | 弁護士ドットコムライブラリー |
弁護士ドットコム | BUSINESS LAWYERS LIBRARY |
・翻訳
リサーチする資料は日本語文書とは限らない。必要に応じて翻訳サービスを利用するケースもあるだろう。
DeepL SE | DeepL |
ロゼッタ | T-4OO |
みらい翻訳 | みらい翻訳 |
Xtra | Qlingo |
リセ | LeTRANSLATE |
・紛争・訴訟のサポート
紛争や訴訟の解決も、非常にコストのかかる業務だ。リーガルテックには、完全オンラインで弁護士など法律の専門家が相談に乗るとともに仲介を行うサービスもある。相談内容や地域などの条件を設定して検索できる弁護士紹介サービスも、紛争や訴訟のサポートサービスの一種だ。弁護士紹介サービスでは、複数の弁護士に相見積もりを取ることもできる。
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー | Smart Judgement |
弁護士ドットコム | 弁護士ドットコム |
・法律事務所のサポート
一般企業向けではないが、サービスカテゴリの一つとして、法律事務所における法律事務や事件処理に必要な機能を提供するリーガルテックサービスもある。スケジュール・案件・裁判などの管理やタスク管理など、含まれる機能はサービスによりさまざまだ。
ロイオズ | loioz(ロイオズ) |
リーガルテック導入のメリット
一般企業がリーガルテックを導入することで得られる主なメリットは、以下の3点だ。- 契約など法務関連業務の効率化
- 人為的なミスの防止
- 情報収集のスピードアップ
各メリットを順番に解説する。
・契約など法務関連業務の効率化
電子契約サービスでオンライン契約が可能になれば、紙でのやり取りがなくなり、契約自体をスピーディに完結できる。印刷や郵送にかかる費用も削減でき、時間的にもコスト的にも大幅な効率化が可能だ。紙の書類を探す時間や、保管場所も不要になる。
また、AIによる書類チェックや契約書の自動生成機能は、担当者間のバラつきをなくし、同一品質を保った書類を作成できる。経験の浅い担当者も、リーガルテックサービスさえ使いこなせれば、ベテランと同等の業務が可能だ。
・人為的なミスの防止
契約書作成やリーガルチェックなど、法務関連業務をすべて人間が行うと、どうしてもミスが発生する余地ができてしまう。文書の自動作成やAIレビューなど、自動化できる部分は可能なかぎり自動化することで、人為的なミスを防止できる。法務担当者は、自動化できないより高度な業務に集中できるため、業務の大幅な効率化が期待できるだろう。
案件管理で進捗管理ができれば、進捗状況の確認やフォローも、より迅速にでき、遅れの見落としも減少する。文書管理のバージョン管理があれば、ミスで上書きしてしまったファイルを元に戻すことも容易だ。
・情報収集のスピードアップ
膨大な専門書や紙の資料から判例などのリサーチを行うと、どうしても時間がかかる。同じ資料を複数の人が使うこともできず、利用頻度の高い資料は待ち行列ができることもあるだろう。
しかし、デジタル化された専門書や判例からオンラインでリサーチできれば、検索してすぐに欲しい情報が手に入る。必要な部分だけ資料をコピーしてまとめることも簡単だ。結果として、情報収集のスピードは大幅にアップする。
リーガルテック導入の注意点
リーガルテック導入時の注意点は、サービス内容が非弁行為に当たる可能性がある点だ。弁護士法第72条では、非弁護士における法律事務の取り扱いなどの禁止が定められており、弁護士が作成するべき書類をAIが作成した場合、内容によっては違法性が問われる可能性がある。弁護士法第72条現状のリーガルテックサービスは、非弁行為に当たる可能性はほとんどない。ただ、今後AI技術が発展して問題が出ていないかなど、ニュースをチェックして最新動向を確認したい。なお、産業競争力強化法により、グレーゾーン解消制度が設立され、リーガルテックサービスの事業者が現弁護士法第72条に違反していないかどうかを確認するケースがある。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。(出典:e-Gov)
法務省のサイトに回答が掲載されているが、「既存サービス は適法」という方針が出されいる。
また、電子契約を導入する場合、取引先企業にも同じサービスを使用してもらう必要があるため、理解を求めなくてはならない点も注意しよう。
リーガルテックの導入は今後進む見込み
インボイス制度や「2025年の崖」などの対応もあり、すぐにリーガルテックへの対応は難しい企業も多いだろう。しかし、今後の流れとしてリーガルテックの導入は進んでいくと見られる。取引先の企業がリーガルテックサービスを導入すると、自社も利用せざるを得ない。リーガルテックサービスの導入を検討する場合は、自社の課題を洗い出し、必要な業務から順番に進めていく必要があるだろう。
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