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- 2019/09/24 掲載
アマゾンや丸紅が進出、いまグローバル企業がエストニアに注目するワケ
新連載:エストニア進出虎の巻
アマゾン、丸紅がエストニアへ進出
エストニアの市場規模は小さい。人口は約132万人で、日本の1/100、青森県の人口よりやや多く、沖縄県の人口よりやや少ない程度の市場規模だ。通常だったら、「おいおい、それでは進出の検討にすら値しないよ」と言われてしまうのが関の山だろう。事実、この国にはスターバックスもバーガーキングもない(マクドナルドは辛うじてある)。それほど世界的に見ても小さい市場ということなのだ。ところが、2019年に入ってグローバル企業の進出が相次いでいる。アマゾンは8月にエストニア法人登記したことを発表。具体的なプランはベールに隠されたままだが、データセンターの設立やバルト三国でのeコマース事業の展開が噂されている。
また、日本からは大手総合商社の丸紅が事業所を設置し、駐在員を派遣。スタートアップへの事業投資やスマートシティ領域のナレッジ蓄積を目的としており、すでにエネルギー×ブロックチェーン領域の現地企業・WePowerに融資を決めている。また、2019年9月にはリクルートが、自走宅配ロボットのStarship Technologiesに出資を決めるなど、日本企業が活発だ。
実は、同国に進出する企業の共通点として、エストニア国内市場そのものにはフォーカスしていない点が挙げられる(日本食料理店などの例外はある)。現地の企業に話を聞いても、エストニア市場はあくまでもテストマーケットで、むしろ創業期からヨーロッパ展開を前提にしたプランを描いていることが多い。ここで、事例を現地から眺めている中で気づいた6つの進出パターンについて、ご紹介していきたい。
エストニア進出の6パターン
(1)EU市場への展開拠点としてエストニアの人口は小さい。一方でエストニアはEU加盟国。3.2億の人口を誇るユーロ圏への玄関口としての期待が高まってきている。加えて、2019年には日EU経済連携協定(EPA)が発行され、ヨーロッパと日本の経済交流はより一層活発になることが予想されている。
(2)Gov-TechのR&Dの拠点として
エストニアでは2000年代初頭からすでに電子政府に向けた取り組みを進めており、その行政手続きの99%が電子化されている。また、民間企業に開放された電子政府基盤・X-Roadを有しており、個人の同意のもとで民間企業が政府のデータベースに安全・かつ暗号化された形でアクセスすることが可能となっている。このように、電子政府関連事業の新規開発・実証実験を行う拠点として、注目する企業が少なくない。
(3)スタートアップ投資の拠点として
すでに4社のユニコーン企業を生み出しているエストニアには、北欧、そしてバルト三国全体をカバーするスタートアップ投資の拠点として注目が集まっている。上述した丸紅を始めとして、孫泰蔵氏率いるミスルトウや楽天などが現地企業にすでに出資をしている。
(4)ブロックチェーン開発の拠点として
ブロックチェーン・暗号通貨関連の規制がシンプルかつ明確な同国では、すでに700社を超えるブロックチェーン関連企業が設立されており、その中に占める日本企業も少なくない。ウォレット及び取引所を運営する事業者に対しては、2019年には新法規制が発表され、規制が強化されることが決まった。これはマネーロンダリングを排除し、適切な事業者を保護するためのものだ。今後はより実態のあるブロックチェーン企業の活躍の幅が広がることが期待されている。
(5)IT開発の拠点として
Skypeを生んだ同国は、高度なITスキルを持っている人材が多い。人材の絶対量はインドや中国に比べたら圧倒的に少ないが、アジャイルで精度の高いプロダクトを開発することに定評がある。IT企業が多い同国ではエンジニアは慢性的に不足しており、獲得競争が起きている側面も否めないが、高品質を求める企業が同国のエンジニアに発注するパターンが見受けられる。
(6)新規事業の立ち上げ拠点として
同国のエコシステムでは、スタートアップの育成制度も整備されている。コワーキングスペースでは日夜イベントが繰り広げられており、アクセラレータープログラムも充実。そんな刺激的な環境を求めて、海外の起業家たちがエストニアに拠点を移して事業を立ち上げるケースが最近増えてきている。
筆者がエストニアに拠点を設けてきた1年半の中で見受けられたケースは上記のパターンだが、一方でエストニアに進出するグローバル企業が増えたのは最近の話だ。まだまだユースケースは十分とはいえず、これからも違ったパターンでのビジネス展開が予想されている。
【次ページ】エストニア進出のメリットとデメリット
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