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  • 2019/07/22

「民泊新法」施行から1年余り、届け出件数8倍も地方に普及しないワケ

一般住宅に有料で旅行者を宿泊させる民泊が2018年6月の民泊新法(住宅宿泊事業法)施行で解禁されて1年余り。届け出件数は1年間で約8倍に増えたものの、大半が首都圏と関西に集中し、地方の多くは届け出が伸び悩んだままだ。空き家や古民家を活用した施設が地方への普及策として考えられるが、民泊新法の営業日数制限や地方自治体の上乗せ規制が開業の足かせになっている。福知山公立大地域経営学部の中尾誠二教授(社会経済農学)は「訪日外国人観光客が増えている地方は限定され、家主不在型の民泊需要は伸びていない。当面は大きな変化がないのではないか」とみている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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民泊新法の活用ではなく、簡易宿所での営業を目指すことにした福井県小浜市のゲストハウス。福井県は全国の都道府県で民泊新法の届け出が最も少ない
(写真:筆者撮影)

小浜市の民泊施設、「簡易宿所」へ転換を計画

 若狭湾を望む旧市街に千本格子の茶屋や切妻作りの商家が連なる。狭い通りを挟んだ街並みはまるで江戸時代にタイムスリップしたよう。国の重要伝統的建造物群保存地区・小浜西組を抱える福井県小浜市。その一角の小浜鹿島地区に民泊業態のゲストハウス「小浜弐拾壱時」がある。

 古民家を2018年に改装した施設で、地元で地域活性化事業を手掛けるベンチャー企業「ニュー」の佐久間一己社長が開設した。畳敷きの宿泊室と共用のリビング、キッチンなどを備え、若狭湾に面したビーチまで歩いて2分で行ける。

 小浜市は若狭地方の中心都市だが、2018年に人口3万人を割り、人口減少と高齢化に苦しんでいる。JR京都駅から電車を乗り継いで約2時間の立地を生かし、観光で地域に貢献しようとした小浜市初のゲストハウスで、外国人バックパッカーを主なターゲットにしている。

 佐久間さんは民泊新法の届け出で営業を続ける計画だったが、民泊新法で定められた営業日数上限は180日。民泊の宿泊料金はホテルなどと比べて格安だけに、生計を立てられるだけの収入を得るのが難しい。管理業務を不動産取引の実績を持ち、国土交通省に登録した業者に委託しなければならない点も障害になった。

 このため、消防設備などの投資を追加で行い、営業日数に制限がない簡易宿所に転換する方針。佐久間さんは「民泊新法は営業したくても現実的に難しいことが多い」と不満を感じている。


福井8件、秋田12件、伸び悩む地方の届け出

 観光庁によると、民泊新法に基づく届け出は6月14日現在で全国1万7551件に上る。施行当初の2210件から毎月増加を続け、当初の約8倍に達した。数字だけを見れば違法民泊を排除し、健全な民泊業者を育てようとする政府の思惑通りに進んでいるようにも見える。

 しかし、届け出を地域別にみると、5735件を東京23区が占め、大阪市2652件、札幌市2045件と続く。この3地域だけで全体の6割近くに当たり、施設が都市部に集中している格好だ。

 これに対し、地方は届け出が伸び悩んでいる。都道府県別で最も少ない福井県はわずか8件。秋田県が12件、山形県14件、鳥取、佐賀の両県がそれぞれ18件で続く。福井県のように営業区域や日数を条例で上乗せ規制していない自治体もあるのに、一向に伸びる気配が見えない。

主な自治体の民泊新法届け出件数(6月14日現在)
自治体届け出件数廃止件数届け出住宅数
東京23区5,7353265,409
大阪市2,6522092,443
札幌市2,0451901,855
福岡県95463891
沖縄県85949810
京都市58214568
北海道48523462
千葉県3564352
岐阜県1042102
山形県14014
秋田県12210
福井県808
(出典:国土交通省民泊制度ポータルサイトから筆者作成)

 民泊新法の営業日数制限で収益を上げにくいことが一因だが、自治体がトラブルを警戒して民泊推進にブレーキをかけていることも影響しているとみられる。福井県観光振興課は「福井県は民宿の稼働率が低いだけに、民泊が入り込む余地がないのではないか」と冷めた見方を示した。

 秋田県観光振興課は「現在は宿泊施設の稼働率が上がるよう力を入れている段階。民泊の優先順位は低く、宿泊施設の稼働率が大きく上昇してから考えたい」と当面、民泊振興に力を入れない考えを明らかにした。

 岐阜県は飛騨地方に年間50万人を超す訪日外国人観光客が訪れるなど、地方のインバウンド観光先進地に挙げられる。民泊新法の届け出も104件を数え、地方の中では多い方だ。それでも、岐阜県観光企画課は「県の観光PRは進めるが、民泊を特段、推進することはない」と消極的な反応しか示さない。

【次ページ】インバウンドの波を生かす方法は?

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