- 会員限定
- 2019/11/22 掲載
10年後、「AIとの議論」が人事の仕事になる
人事の課題は、データの活用不足
「SPARK IGNITION #031 ~HRテクノロジーを活用した企業の未来~」に、カオナビ 代表取締役社長CEO・柳橋 仁機氏、ミツカリ 代表取締役社長・表 孝憲氏、HERP 代表取締役 CEO・庄田 一郎氏の3名がゲストパネリストとして参加した。ゲストパネリストの3名はいずれも元人事担当者で、人事業務に課題意識を持って起業した点で共通している。“人事の役割の変化と現状の課題”というテーマから、トークセッションは始まった。最初に回答したのは、顔写真が並ぶクラウド人材管理システム『カオナビ』を提供する、カオナビの柳橋氏だ。
適性検査サービス『ミツカリ』を提供するミツカリの表氏は、個に合わせる必要性、データに基づく意思決定の必要性について触れた。
「以前はテストの点が高い人が良くて、低い人が悪いという考え方でした。しかし働き方が多様化することで、『A社で活躍できない人がB社では活躍する』といったことが起こるようになってきています。人事の領域では、この時代の流れに仕組みが追いついていません。個に合わせるだけでなく、データに基づいていないことが課題です」(表氏)
人口、産業構造、働き方の変化など時代の変化によって生まれた課題を語った、柳橋氏と表氏。一方、独自に提唱する社員主導型の採用方式「スクラム採用」の導入・推進をサポートする採用プラットフォーム『HERP ATS』を提供するHERPの庄田氏は、人事の業務そのものの課題に切り込んだ。
「今の採用活動は、事務作業のようなオペレーショナルなものが多いと感じています。こうした業務に付加価値があるかというと、そうではない。採用担当者は、個人として企業価値向上にどう寄与するか、会社の認知度を上げるために何ができるかを考えていかなくてはなりません」(庄田氏)
ファシリテーターの鈴木氏も、日本的な画一的な人事のやり方に苦言を呈する。
「他国の企業を見る中で、日本企業の“稼ぐ力”の弱さを感じています。これから急速に時代が変わる中で、画一的な人事のやり方では今後さらに日本企業の立場は厳しくなってくるでしょう。『今いる人材を生かし切れているか』『本当に必要な人材を雇えているのか』『自身の役割を果たしていない従業員とどう関係を築くか』など、人事はまだ向き合いきれていないように思います。これからHRテックを活用することで、人事は本当の価値を発揮できるのではないでしょうか」(鈴木氏)
個に合わせた管理をするためには、社員に関するさまざまな情報をデータ化して持っておく必要がある。また、人事が本質的な業務にフォーカスするためにも、データを一元管理し事務作業を効率化する必要がある。いずれの課題も”データの活用不足”がボトルネックとなっている。
ここからは人事のデータ活用の必要性についてより深掘りしていく。
基本情報をデータ管理することが、はじめの一歩
「テクノロジーがどんなに発展しても、情報がデータ化されないとテクノロジーを利用できません。履歴書や評価結果など、どの会社にも当たり前にある情報をきちんとデータ管理するところからです」(柳橋氏)人事が扱う情報は、履歴書や資格情報、社内における職務経験などさまざまだ。これらを人事が活用するためにも、基本的な情報をデータ化することがはじめの一歩だとカオナビの柳橋氏は語る。
そのときによく議論になるのは『どのデータを管理すべきか』という問いだ。この問いに対して、パネリストたちはどのような見解を持っているのか。ミツカリの表氏が回答した。
「他者とのつながりが強い今の世の中では、個人のデータだけでなく、グループや上司との関係性まで見ることになるため、必要なデータは膨大かつ複雑です。データは”The more, the better.”の世界です。たった1人の意見よりは、多くの人の意見があった方がいい。とにかく今は、データを統一されたルールでどんどんためていく、という気持ちで良いでしょう」(表氏)
将来的には管理するデータの内容が科学されるかもしれないが、今はまだその段階にはなく、データをきちんと管理することにフォーカスすべきというのが、柳橋氏と表氏の共通見解だ。
【次ページ】AIに反対意見をぶつけられるのが、人間の能力
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR