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  • 2018/06/13

HRテックとは何か? 人事・採用・人材育成はどう変わる? 注目の3分野16製品を解説

みずほ総合研究所の調査によれば、2065年の日本の労働力人口は2016年比で約4割も減少する見通しです。こうした中、労働力率の引き上げや業務効率化の推進で期待されているのが「データ」と「テクノロジー」の活用であり、HR(Human Resources)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた「HRテック(HR Tech)」と呼ばれるものです。本稿ではHRテックとは何かを基礎から解説します(初出:2018/02/27)。

ビズリーチ 古野 了大 編集:ビジネス+IT編集部

ビズリーチ 古野 了大 編集:ビジネス+IT編集部

古野了大 ビズリーチ HRMOS採用管理事業部 事業部長
神戸大学工学部卒業後、大手教育関連企業にて、新規事業開発やデジタル領域の教育サービス開発に携わる。2015年にビズリーチ入社。現在は、戦略人事クラウド「HRMOS(ハーモス)採用管理」の事業責任者、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」等のサービス開発責任者を務める。

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人材が経営に直結する時代になってきた
(©peshkov - Fotolia)

HRテックとは何か?

 HRテックとは、HR(Human Resource:人財)× テクノロジー(Technology)の造語です。採用やタレント・マネジメント、リーダー育成、評価、勤怠などの幅広い人事関連業務において、ビッグデータ解析や人工知能(AI)、クラウドなどの最先端テクノロジーを活用し、人事課題の最適解を導くソリューションやサービスのことを意味します。

 従来からHRMS(Human Resource Management System)などとも呼ばれる分野の製品は数多くありましたが、雇用の流動性が低い日本ではデータやテクノロジーを人事に活用する動きは決して多くはありませんでした。

 しかし、ここにきて盛り上がりを見せている金融分野のフィンテック(FinTech)、教育分野のエドテック(EdTech)などと同様の名称を利用すること、さらに労働力不足、働き方改革などの機運と相まって、改めて注目を集めています。


HRテックはこれまでと何が違うのか?

 HRテックの実現に向けて欠かせないのが、「データ」と「テクノロジー」の活用です。データ(事実)に基づいた客観的な基準をもとにPDCAサイクルを回し、組織としての判断精度を向上させることで、経験と勘だけに頼らない意思決定が求められます。

 今、人事領域における「データ」と「テクノロジー」の活用は、“HR テック”というキーワードとして注目されています。HRテックでは、採用やタレント・マネジメント、リーダー育成、評価、勤怠など幅広い領域で、ビッグデータ解析や人工知能(AI)、クラウドなど人事業務に最先端のテクノロジーを活用します。

 これまでも、大手ITベンダーが提供する人事管理システムは存在していました。たとえば、ERP(Enterprise Resource Planning)の代表的なITベンダーであるSAPとOracleはそれぞれSuccessFactors、Taleoや PeopleSoftという人事領域のITベンダーを買収し、人事・管理部門のIT活用を推進していたのです。こうした分野はHuman Resource Management System(HRMS)と呼ばれ、雇用の流動性が高い欧米では一般的な製品・サービスと考えられてきていました。

 一方、昨今、注目されるHRテックは、その背景にクラウド技術の普及が挙げられます。この技術の普及により、さまざまなHR分野のベンチャー企業の参入が相次いだだけでなく、初期投資のコストを抑えられるため、広く中小企業まで広がるきっかけとなりました。

HRテックを企業が活用するメリットとは?

 HRテックツールの導入によって期待されるのは、従来の日本で横行していた感覚による人材管理ではなく、定量的・具体的な データに基づいた人材戦略や組織の運営です。人工知能(AI)、機械学習などビッグデータを分析するテクノロジーの進化により、従来は難しかったデータの取得が可能になったり、膨大なデータを正しく分析できるようになったり、画像や動画といった非定型データを含めたさまざまなデータを分析対象とできるようになったのです。

 このような取り組みが求められる背景に、企業の競争優位の源泉が、資金や設備投資から、知識や知恵、またそれらを生み出す人材へとシフトしつつあることが挙げられます。

 従来の企業経営ではヒト・モノ・カネ(+情報)と言われてきました。そのため、資本力のある企業が優れた人材を有利に獲得できていましたが、VCなどの投資環境の整備に伴って、働く環境を徹底的に追及したスタートアップに大企業が敗北するケースも出てきています。また、デジタルの世界では天才的なプログラマー一人の力が社会を変えうるため、これからの企業経営では働く人一人ひとりの活躍を支え、その能力を発揮させることが重要になるのです。これまで当たり前のように行われてきた、人の経験や勘に頼った判断ではなく、データとテクノロジーを活用した戦略人事の実践を通して、従業員の活躍を支えることで、企業の業績や生産性の向上に寄与することができるのです。

HRテックの市場規模とその動向、国内でも約3倍に拡大

 国内外のHRテック市場はどのような盛り上がりを見せているのでしょうか。米調査会社のCB Insightsのまとめによると、海外では2016年時点で、約2,000億円の資金がHRテックのスタートアップ企業に投資されています。HRテックのベンチャー企業は、求人検索、採用管理、組織マネジメントなど、幅広い領域に渡っており、2017年は前年をさらに上回るであろうと予測しています。

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HRテックの取引数と取引金額(2011年第1Q~2015年第4Q)
(出典:CB Insights


 日本でも同様に盛り上がりを見せています。ミック経済研究所が2017年2月に発表した「HRTechクラウド市場の実態と展望2016年度版」によると、国内のHRテッククラウドの市場は黎明期から成長期に入ったとし、市場規模は2017年度で184億、2021年度には613億円になると予測されています。

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HRテッククラウド市場 4分野別市場規模・ウエイト推移図
(出典:ミック経済研究所)

 日本国内でも、「働き方改革」や「生産性革命」などを掲げ、労働生産性の向上と、多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を目指しています。終身雇用や年功序列に代表される日本的な雇用システムや、これまでの企業文化や風土に捉われず、柔軟な働き方を推進する企業が増えてきたこともHRテック市場が盛り上がっている理由として考えられます。

HRテック3分野で注目のサービス実例

 ではHRテック領域には具体的にどのようなサービスがあるのでしょうか。ここでは注目される国内外のHRテックサービスを「採用ツール/採用管理システム」「育成・配置・定着」「労務・給与管理」の大きく3つに分類し、ここ数年で注目されるHRテックの動きを中心にご紹介します。

1. 採用ツール/採用管理システム

 人材獲得競争を背景に、最新のHRテクノロジーを使ってどのように優秀な人材を採用するか、また採用した人材をどう定着させるかの議論は常に注目されおり、海外ではこの領域のスタートアップの投資も盛んです。

 たとえば、注目される海外の採用ツールのなかに、動画を活用した採用サービス「HireVue」があります 。

 採用面接をWeb上で録画・ライブ形式で行えるもので、PCやスマートフォンなどから面接を受けることができます。場所に捉われずに候補者とコミュニケーションがとれるだけでなく、履歴書などでは分からない候補者のふるまい、志向性を理解することができます。

 また、多くの採用ツールや採用手法が生まれるなかで、複雑化する採用プロセスを管理し、より効率的で戦略的な採用を支えるHRテックサービスとして注目されているのが、「Applicant Tracking System(採用管理システム)」です。

 これまでの採用活動では、履歴書や選考状況の管理、応募者の評価データ、メールのやりとりは紙やExcelに代表される表計算ソフトなど、複数のツールにまたがって管理されていました。それに対してATSは応募から採用に至るまでの情報を、システム上で一元管理できるのが特徴です。国内ではここ数年でクラウド型の新しい採用管理システムが登場しています。

 具体的には筆者の所属するビズリーチが手がける「HRMOS採用管理」のほか、「ジョブカン採用管理」「Talentio」「ジョブオプ採用管理」「SONAR」などがあります 。

 海外では、SNSを採用活動に活用する企業が増えるなか、2003年に設立された「Jobvite」がソーシャルリクルーティングや、リファーラル採用にも対応した採用管理システムとして注目されました。

 その後、「Greenhouse 」や「Lever」が登場。これらを使えば候補者の採用経路(求人広告、人材紹介、リファーラル、ソーシャルリクルーティングなど)をまとめて管理でき、パフォーマンスを分析することができます。

 そして、2017年には、グーグルが初の人材採用支援サービス「Google Hire」を公開し、Googleスプレッドシートやカレンダーと連携する管理システムを発表したことも話題になりました。

2. 人事・配置、育成・定着(エンゲージメントやモチベーション向上)

 従業員エンゲージメントとは、従業員と会社が互いに信頼し、貢献しあう良好な関係のことを言います。これが高ければ、働くことのやりがいが向上したり、離職率を防ぐといった効果につながります。そして、エンゲージメント向上のためのHRテックサービスも多くリリースされています。国内サービスでは、従業員のコンディション変化を発見するツール「Geppo(ゲッポウ)」などがそれにあたります。

 従業員が毎月数問の質問に回答することで、従業員や組織のコンディション変化の兆しを把握、課題の早期解決・適材適所の推進に活用できます。

 その他、リンクアンドモチベーションが提供する「モチベーションクラウド」などがあり、組織診断・目標設定・改善アクションの実行など組織力強化に向けた、企業の業績向上を実現します。

 海外でも、従業員エンゲージメントに関して、ベンチャー企業の参入が相次いでいます。「Culture Amp」は、匿名性のエンゲージメント調査、従業員満足度調査など、オンラインでの社内調査を提供するものです。

 産業・組織心理学者や統計学者により開発されたサーベイであり、効率的で科学的な組織文化作りに役立つツールになっています。2017年6月に約2000万ドルの資金調達をしたことでも話題となりました。

 また、「Reflektive」は、、リアルタイムに社員のエンゲージメントやフィードバックを実施、分析するパフォーマンスマネジメントに特化した管理ツールで、社員のパフォーマンスをリアルタイムに計測することが可能です。

 組織開発のプラットフォームである「GLINT」は、従業員が仕事のやりがいや不満などを入力し、エンゲージメントの状況を可視化するだけでなく、従業員のエンゲージメントを高める要素を特定し、企業のサポートするポイントを提案するサービスです。適切なタイミングで課題解決につなげ、生産性の高い組織作りの支援ができます。

 新しく雇用された社員が、本社から離れた場所にいても、スムーズに組織で活躍できるように、カスタマイズした研修教材やタスクリストの提供から、その実績の評価までをオンライン上で行えるサービスも広がっています。採用管理システムのベンダーとして急成長しているGreenhouseは、入社した人材をサポートするシステムとして新たに「Greenhouse Onboarding」の提供を開始しています。
3.労務・給与管理クラウド

 スタートアップ企業を含め、バックオフィス業務の自動化ニーズで急浮上しているのが、労務・給与管理のクラウドサービスです。国内では、中堅・中小企業向けクラウドサービス「人事労務 freee」や、「SmartHR」などが挙げられます。

 2015年にサービス提供を開始した「SmartHR」は、企業が行う社会保険・雇用保険手続きの自動化を目指すクラウド型の人事労務ソフトを提供です。従業員情報を入力するだけで必要書類を自動作成したり、総務省が提供するAPIと連携し、Web上から役所へ申請できる点が特徴です。

 海外で注目されるのは「Zenefits」です。Zenefitsは、中小企業に特化し、給与支払や勤怠管理、健康保険の管理などのクラウドサービスで、管理部門のオペレーション効率化・自動化をけん引しています。ピーク時には45億ドルの評価額で5億ドルを調達しており、シリコンバレーを代表するユニコーンといわれてきました。

HRテック導入の手順とポイント

 今注目される、HRテックサービスの多くはクラウド型で提供されているため、ITシステムの知識があまりなくても、初期設定から運用、API連携までを行うことが可能です。また、最新のデバイスへの対応やUI/UXに注力しているため、これまの業務ソフトウェアで感じていた使いづらさを解消しているため、IT部門の力を借りることなく業務部門主導で導入が行われることも少なくありません。

 採用管理サービスATSの場合、設定が完了すればその日から活用することができますが、分析ツールを使いこなすためには、過去の候補者データの移管や、各採用チャネルの経路情報のタグ付けなど、将来的な分析を見据えた一元化を進めていくことが重要となります。

アメリカのHRテック動向、世界最大規模のイベントで語られた未来

 盛り上がりを見せるHRテック市場ですが、今後の展望として、世界ではどのようなことが語られているのでしょうか。

 2017年10月10日から13日まで、米国のラスベガスで開催された、世界最大級のHRテックをテーマとしたイベント「HR Technology Conference 2017」では60以上のセミナーと300以上のブースが設置され、AI、チャットボット、SaaS、クラウド、ソーシャル、モバイル、アナリティクス、ビデオ、ゲーミフィケーションなどの最新のHR領域のトレンドが一堂に会しました。

 最終日は世界的に著名な人事コンサルタント、ジョシュ・バーシン(Josh Bersin)氏による「Digital HR : The New Architecture for Technology」というクロージング講演で、HRテックのこれからの進化に関して以下のようなことを語りました。

●注目を集める、採用領域のHRテック

 スタートアップ企業への投資家達から、とりわけ大きな注目を集めているのは採用、タレントアクイジション(タレント人材獲得)関連のスタートアップです。

 低い失業率に後押しされる形で、企業間の採用競争は激化しており、データによる採用力の強化と、よりよい従業員エクスペリエンスの提供が盛んになっています。

 たとえば、ビデオ面接などのテクノロジーは、表情の変化や声の調子といった候補者達が見せるほんの僅かな動き(Micro-Expression)もデータによって分析することを可能にし、彼らが自分たちの回答についてどの程度まで自信を持っているのかを検証し、採用企業側のトップ・パフォーマーと比較してどの程度の活躍が期待できるのか予測するといったアプローチを可能にしています。

●パフォーマンス・マネジメントがよりリアルタイムへ

 パフォーマンス・マネジメントも、大きな変革が起きつつあります。従来型の年次評価が「継続的なアセスメント」、つまり、よりリアルタイムなパフォーマンス・マネジメントに置き換えられつつあります。多くのベンダーが「継続的アセスメント」のためのツールを提供し始めており、企業にとって最適なものを選ぶことが大きなチャレンジとなっています。

●今後、HRテックは生産性のシステムへ

 従来のタレント・マネジメントから、ピープル・アナリティクスなど、データの多様化などを包含する、新たなHRテックのアーキテクチャーが必要になります。

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HRテックのアーキテクチャーは、2020年代には「生産性のシステム(SoP:System of Productivity)」になると予測されたという。
(写真:筆者撮影)

 1980年代がクライアントサーバー型の「記録のシステム(SoR:System of Record)」であったのに対して、2000年代のクラウド型の「エンゲージメントのシステム(SoE:System of Engagement)」、そして2020年代は「生産性のシステム(SoP:System of Productivity)」と予測しています。

HRテックが求められる背景としての「戦略人事」

 激化するグローバル競争やAI、ビッグデータといった技術革新、労働力人口の減少など現在、企業経営をとりまく環境は大きく、急速に変化しています。いかに重要な経営資源である人材を活躍させ、激化する人材獲得競争に打ち勝つべきかーー。これからの人事部門は経営が取り巻く環境の変化に適応し、戦略的な組織へと変革していく必要があります。

 こうした背景から、経営戦略を深く理解し、経営者のパートナーとして、事業計画を達成するために必要な打ち手を人と組織の側面から立案・実行する「戦略人事」が注目されています。戦略人事とは、1990年代からデイブ・ウルリッチ氏などによって提唱されてきた考え方です。

 オペレーションを中心とした従来の人事のあり方に対し、経営に関する目標と長期的ビジョンの実現を担う戦略パートナーとしての機能を有します。

 ウルリッチ氏は、戦略人事の機能として、事業戦略を十分理解し、人と組織の面から戦略を立案・実行するプロフェッショナルである「HRビジネスパートナー(HRBP)」や、採用や人材開発など人事の専門機能、そしてオペレーション部門などが相互に関連し支えあうことが重要であるとしています。

 また、戦略人事の各機能を統括するのが最高人事責任者(CHRO)です。日本ではまだなじみが薄いですが、CHROはCEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)と三位一体となりながら、採用と組織の面で経営者や部門責任者を支援します。経営戦略の具現化のために必要とされる人材戦略・人材マネジメントを担うことが理想であるといわれています。

今後の展望(まとめ)

 今後、HRテックの進化は、企業の組織や採用におけるあり方を大きく変えていくと考えられます。

 また、HRテックの広がりは、人事部門だけのツールではなく従業員一人ひとりが活用するツールとなり、リアルタイムに反映されたデータを洞察し、AIによる意思決定のサポートを通じて、新たな知見を活かした取り組みが注目されていくでしょう。

 テクノロジーによる業務の効率化の先には、企業が本質的に求める人材の戦略的な採用活動に加えて、人にしかできない役割――たとえば、従業員との対話や共感、関係性の改善など、イノベーションを創造するために必要なことに時間を割けるようになると予測されています。

 これからは、戦略人事として経営視点を持ち、「どのような組織ならば、企業戦略を実現できるのか?」といったことを経営者とともに考え、推進していくことがさらに重要となるでしょう。

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