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  • 2019/10/11 掲載

憧れどこへ… “神戸ブランド”に暗雲。「転出超過数が最多」からどう脱却するのか

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政令指定都市で最多の転出超過、全市区町村で最大の人口減少に陥った神戸市が、「リノベーション神戸」と題した人口減少対策を始めた。神戸市を子育て世代が定住したいと考える都市に変えるための施策で、今回が第1弾。今後、第2、第3の施策を打ち出し、人口流出に歯止めをかけたい考えだ。だが、かつて関西の若い世代を魅了した「神戸ブランド」に陰りが見える中、東京一極集中を乗り越えるのは簡単でない。甲南大経済学部の足立泰美准教授(財政学)は「大阪市へ通勤する人が多数いることを踏まえ、神戸経済圏での自立を目指すだけでなく、関西圏全体を見据えた施策も盛り込む必要がある」と指摘する。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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神戸市の中心市街地三宮地区。人口減少対策として街のリノベーションが市内全域で始まった
(写真:筆者撮影)

公共空間魅力アップへ街灯を1.5倍に

 リノベーション神戸の第1弾は神戸の都市ブランドを向上させるため、公共空間の魅力アップにつながる施策を並べた。コンセプトは「明るいまち」、「駅前空間の刷新」、「やさしいまち」。第1弾の対策費約36億円を含む2019年度一般会計、企業会計補正予算が9月に市議会で成立したのを受け、事業が動き始めている。

「明るいまち」は三宮地区など繁華街以外の場所を夜間に明るくすることで、女性や子どもが安心して歩け、快適に暮らせる街に変える。このため、2020年度末までに駅周辺や通学路などを中心に街灯を現在の9万6000灯から約1.5倍に当たる14万4000灯に増設し、すべてLED化する。

「駅前空間の刷新」は2019年度中に西区の市営地下鉄伊川谷駅、須磨区のJR鷹取駅などで樹木や植栽を整備してライトアップするほか、北区の神戸電鉄北鈴蘭台駅、西区の市営地下鉄西神中央駅などで駅前駐輪場の整備を加速する。さらに、北神急行電鉄の市営化に伴い、北区の谷上駅でバスロータリーの改修に着手する。

「やさしいまち」では、2019年4月2日以降に子どもが生まれた世帯を対象に出生祝いとしてカタログギフトを贈るのに加え、ひきこもり支援室(仮称)の設置や犯罪被害者支援の充実を掲げている。

リノベーション神戸第1弾の主な事業
項目 概要 予算
まちなか街灯の大幅増設 9.6万灯→14.4万灯、LED化 19億1900万円
防犯カメラの大幅増設 2年間で約2000台設置に向けたネットワークシステム構築 2000万円
憩いの空間創出 ベンチ設置、樹木ライトアップなど 1億2400万円
駅前空間の街灯増設 市内各駅計5000灯 11億5600万円
谷上駅周辺の再整備 バスロータリー改修など 1億9000万円
こべっこウェルカムプレゼント事業 2019年4月2日以降に生まれた子どもの世帯へカタログギフト 1億2300万円
(出典:神戸市「令和元年度9月補正予算案の概要」)

 どの施策も派手さがない地道な取り組みだが、久元喜造神戸市長は「神戸市は阪神大震災があって街のリニューアルが進んでいないエリアを持つ。これで街の雰囲気をよくできるのでないか」と語った。

 神戸市企画課は「遅くとも年内には第2弾、年明けには第3弾の人口減少対策を打ち出す。内容はまだ決まっていないが、人口流出に歯止めをかけられる方策としたい」と力を込める。



「神戸ブランド」に陰り、日本人人口の減少は全国最大

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(出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告平成30年結果」)
 神戸市の人口は9月現在で152万3024人。東京23区と政令市の中で長く人口6位だったが、2015年の国勢調査で福岡市、2019年5月の推計人口で川崎市に抜かれ、8位に転落した。

 しかも、2018年10月の転出超過数は2331人で政令市最多。2019年1月の前年に比べた日本人人口の減少数6235人は、全国の市区町村で最大になっている。

 神戸市の人口は2000年代に入って死亡数が出生数を上回るようになったが、2011年までは転入が自然減を上回り、人口増加を続けていた。しかし、2011年の154万4970人をピークに減少に転じている。

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神戸市推計人口の推移
(出典:神戸市統計報告平成30年度)
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神戸市人口増減の推移
(出典:神戸市統計報告平成30年度)

 流出先は首都圏や大阪市のほか、兵庫県内だと西宮市など阪神間6市、子育て施策の充実で人口がV字回復した明石市など。20~30代の子育て層など若い世代の流出が目立つ。地区別にみると、三宮、元町など中心市街地を抱える中央区、隣接する兵庫区は若い世代の都心回帰で人口増加が続くが、北区や西区、須磨区など周辺部で転出超過が続いている。

 神戸市は古くからの港町で、明治時代以降は重工業が基幹産業となり、阪神工業地帯の中核として発展した。高度経済成長期には市街地後背部の山を削ってポートアイランドなど広大な埋め立て地を造成した。その都市開発手法は「株式会社神戸市」と呼ばれ、全国から視察が相次ぐなど地方自治体の注目を集めてきた。

 その一方で、山麓部を中心に高級住宅街が次々に生まれ、関西の若い世代から絶大な人気を集める時代が長く続いた。港町らしいおしゃれな雰囲気も都市としての神戸ブランドを高めた。しかし、そんな神戸ブランドにも陰りが見える。

【次ページ】神戸ブランドの陰り。その理由はどこにある?

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