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  • 2019/12/04 掲載

「フォルダブル」スマホ/PC市場展望 アップル、サムスンら群雄割拠、次の勝者は?

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画面を折りたためる“フォルダブルスマホ”が注目を集めている。現状はかなり高価なためすぐに普及することはなさそうだが、インパクトは非常に大きく世間の関心を集めている。今後、フォルダブルスマホはどう普及していくのだろうか? ディスプレイサプライチェーンを対象とする調査・コンサルティング会社であるDSCC(Display Supply Chain Consultants) KoreaのアナリストであるCalvin Lee氏が、今後のフォルダブル市場の展望を語った。
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高い技術力が詰まった「フォルダブル」スマホ、メーカー各社の動きは?
(Photo/Getty Images)


折りたためるスマホの衝撃、停滞する業界にとってはチャンス

 2019年のスマートフォン(スマホ)市場の大きな話題といえば、ディスプレイを直接折りたためる「フォルダブル」型スマホの登場だろう。多くのメーカーが新機種を発表する携帯電話の総合見本市イベント「MWC19」(2019年2月開催)では、サムスンが「Samsung Galaxy Fold」を、ファーウェイが「HUAWEI Mate X」を発表して大きな注目を集めた。

 まだスマホの中ではかなり高価な製品であるため、今すぐ爆発的に普及するということはなさそうだが、インパクトは非常に大きく、多くの消費者が関心を示している。



 Calvin氏は「より大きなディスプレイがポータビリティを持つことは、鈍化したスマートフォン市場、ひいてはIT業界において新しい需要の創出に役立つものだ。業界にとっては非常に大きなチャンスになるだろう」と説明する。

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DSCC Korea ディレクター、アナリスト
Calvin Lee氏

 一方で「フォルダブルデバイスが普及するには、まだ多くの課題が残っているのも事実だ」と同氏は指摘する。

 フォルダブルを可能にする鍵は「ディスプレイ」にある。折れ曲がる「フォルダブルディスプレイ」では、タッチセンサーやアナライザー、光学用透明粘着フィルム(OCA)、カバーフィルムまたはガラスといったディスプレイ素材部品をいかに薄くするかが焦点となる。また、ディスプレイを折りたたむための「ヒンジ」部分にも高い技術力が求められる。

ディスプレイの主流はOLEDへ、フォルダブルスマホの構成部品は?

 近年のスマホでは、液晶ディスプレイに代わり「有機ELディスプレイ(OLED)」を採用するのが主流となりつつある。OLEDは従来の液晶ディスプレイよりも柔軟(Flexible)なため「フォルダブルスマホ」が実現できるわけだが、一方で剥離やこぶなどがあると表面の致命的な欠陥につながってしまう。そのため現在はOLED向けの素材部品にも多くの改善が求められている。ここからはOLEDを構成している素材部品の現状を紹介していこう。

●円偏光フィルター(Circular polarizer)
 フォルダブルディスプレイの課題は何十万回もの折りたたみに耐えられる、薄い偏光板(ポラライザー)材料を見いだすことだ。現在のフォルダブルスマホは、日東電工製のポラライザーが広く使われている。

 Samsung Galaxy Foldは30マイクロメートル(μm)、HUAWEI Mate Xや「Royole FlexPai」は50μmの厚さである。Samsung Galaxy Foldの方が20μm薄いのはより高い柔軟性を志向しているためだ。一方のHUAWEI Mate Xは、外に折り曲げるタイプの製品であるため、厚みのあるアクリルレイヤーを採用し耐久性を確保している。

●タッチセンサー
 タッチセンサー技術では、サムスンディスプレイ(サムスン子会社)が開発したタッチ一体型OLED「Y-OCTA」が各メーカーの指標となっている。Y-OCTAは、タッチ機能を内蔵することでディスプレイの軽量化と薄型化が図れる。そのほかにも、CSOTの「DOT(Direct on Touch)」、BOEの「FMLOC(Functional Multi Layer on Cell)」、LGDの「TOE(Touch on Encapsulation)」などがある。

 Calvin氏は「Y-OCTAでは、チタンパネルの電極を使って低い抵抗性を担保としている。Y-OCTA技術を開発するには、四層のマスク素材を追加する必要があるため、2億~2億5,000万ドルほど投資しなければならない」とサムスンディスプレイの優位性を説明する。

●Colorless Polyimide(CPI)
 Colorless Polyimide(CPI)とは、カバーウィンドウ用材料である「透明ポリイミドフィルム」を指す。プラスチックのような柔軟性や耐久性を備えるとともに、ガラスのような光透過性や耐熱性を持つ性能フィルムとしてOLEDに採用されている。

 「ハードコーティングされたCPIを用いることで、ポリエステルの一種である『PETフィルム』よりも高い硬度性が実現できる」(Calvin氏)

●ハードコーティング
 より高い硬度を実現するには部品を厚くする方が良いが、OLEDで1ミリメートル(mm)の折りたたみ半径を実現するには全体の厚さを最小限に抑えながら、より薄くする必要がある。また、弛みがなく十分に伸長すること、透過率や曇り具合、指紋防止、触り心地などの要件も満たす必要がある。

 Calvin氏によると、多くのスマホが20万回以上の耐久試験をパスして出荷されているという。20万回というのは、1日200回、3年間使った場合に相当する。

●Ultra-Thin Glass(超薄型グラス)
 フォルダブルディスプレイ用カバーウィンドウに適した素材としては、「Ultra-thin Glass(超薄型ガラス:UTG)」も注目されている。「Schott AS 87 eco」「NEG G-Leaf」「Asahi Ultra Thin Glass」「Corning Willow Glass」など、主要なディスプレイガラスメーカーが極薄ガラス製品を開発または開発中である。カバーフィルムとカバーガラスについて、Calvin氏は「それぞれ一長一短があるが、形状や特徴に応じて使い分けられている」と説明する。

【次ページ】レノボやマイクロソフト、アップルなどの動向

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