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米国ラスベガスで開催された電子機器の見本市「CES 2020」に、ソニーは電気自動車「VISION-S」(ビジョン エス)を出展、コンセプトカーながら公道走行を前提に設計された完成度で注目を集めた。ソニーのモビリティへの挑戦と、安心安全の先に見据えるエンターテインメントとの両立とはどういうものか。ソニーが考える「モビリティのイノベーション」についてAIロボティクスビジネスグループ部門長の川西 泉 氏に話を聞いた。
新たな車内エンタテインメントを具現化した「VISION-S」
あらためて、ソニーがCES 2020で発表したVISION-Sについて、振り返っておこう。
VISION-Sとはソニーがモビリティにおける安心や安全、快適さ、エンタテインメントなどを追求するプロジェクトにおいて開発されたスマートカーの試作品だ。
今回、ソニーが出展した試作車(コンセプトカー)は、ベンツやBMWなどの製造を担うマグナ・シュタイアと連携して開発された。通常、コンセプトカーは「展示目的」で製造されるため、あくまで外装を中心に作り込まれ、実走できるような機能を備えていないケースも多い。
しかし、VISION-Sはコンセプトカーでありながら走行可能であるだけでなく、細部まで作り込まれており、クルマとしてのスペックシートを同時に公開している。これだけの完成度ながら、「少人数で、20カ月程度で設計した」というから驚きだ。
VISION-Sの特徴は大きく2つ、センサー技術とエンタメ機能だ。
ソニーではもともと、2014年に自動車向けセンサーへ参入。2018年には、自動運転向け画像センサーの開発パートナーとして、トヨタや日産、ヒュンダイ、KIA、部品メーカーであるデンソーやボッシュ、モービルアイ(Mobileye)、エヌビディア(NVIDIA)などとの連携強化を発表している。
今回の発表に至るまで、2014年の自動車向けセンサー参入から5~6年の蓄積がある。この間、ソニー初の車載専用CMOSイメージセンサーである「IMX390」や、当時は“業界最多”となる有効画素数540万の「IMX490」などを開発してきた。その特徴は、「自動運転」を前提にイメージセンサーの開発に取り組んできている点である。
VISION-Sにも、車内外の人や物体を検知・認識し、高度な運転支援を実現するために、車載向けCMOSイメージセンサーや、物体との距離を測定するToF(Time of Flight)センサーなど、合計33個のセンサーが配置されているという。
エンターテインメント機能については、各シートに内蔵されたスピーカーで没入感のある立体的な音場を実現する音楽体験を提供したり、フロントシート前方の大型スクリーンで、さまざまなエンタテインメントコンテンツを楽しめるようにしたりしている。
つまり、VISION-Sとは、「センサーとエンタメ」領域における最先端テクノロジーを組み合わせることで、安心・安全に加え、新たな感動をもたらす車内エンタテインメントの実現をめざす取り組みだということができる。
なぜソニーはモビリティの領域に注力しているのか
VISION-Sの開発を担当した、同社 AIロボティクスビジネスグループ部門長の川西 泉 氏は、今回の出展について「クルマの進化に対してソニーがどういう貢献ができるかというところからスタートした」と述べる。
公道走行を前提に設計されたVISION-Sは、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)における「レベル2+(部分運転自動化)の実用レベルを想定している。
VISION-Sや関連サービスの市販化の予定については、「まだまだ実験段階であるため未定」ということだが、実用化に向けた「公道での走行実験」を「ここ1年位で実現する目標で開発を進めている」と川西氏は述べた。
ビジネスの面では、センサーの塊であるVISION-Sから取得できるデータをいかにビジネスに生かすかがポイントとなる。
この点について川西氏は、特にCMOSセンサーは重要な役割を担うとした上で「得られたデータを、安心・安全のためにフィードバックすることに注力したい」と話した。
一方、「ADASの自動運転のレベルでいうレベル5の『完全運転自動化』まではまだまだ(長い道のりだ)」とも語り、自動運転領域のサービスを提供する点に慎重な姿勢を示した。
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