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  • 2020/05/12 掲載

マイクロソフトの意味不明な日本語問題、「機械翻訳」が国際化対応の品質を下げている

山市良のマイクロソフトEYE

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マイクロソフトは自社の機械翻訳技術およびサービスを国際化対応に積極的に活用しているようです。以前から技術文書やサポート情報では利用されてきましたが、最近は自社の公式Webサイトやクラウドサービスの国際化対応にも利用されていることをうかがわせる事例が増えてきました。他の言語の翻訳品質については筆者は知りませんが、日本語の翻訳品質は公式なものに採用するレベルにはなっていないのが現状です。

執筆:フリーライター 山市 良

執筆:フリーライター 山市 良

IT 専門誌、Web 媒体を中心に執筆活動を行っているテクニカルライター。システムインテグレーター、IT 専門誌の編集者、地方の中堅企業のシステム管理者を経て、2008年にフリーランスに。雑誌やWebメディアに多数の記事を寄稿するほか、ITベンダー数社の技術文書 (ホワイトペーパー) の制作やユーザー事例取材なども行う。2008年10月よりMicrosoft MVP - Cloud and Datacenter Management(旧カテゴリ:Hyper-V)を毎年受賞。岩手県花巻市在住。
主な著書・訳書
『インサイドWindows 第7版 上』(訳書、日経BP社、2018年)
『Windows Sysinternals徹底解説 改定新版』(訳書、日経BP社、2017年)
『Windows Server 2016テクノロジ入門 完全版』(日経BP社、2016年)
『Windows Server 2012 R2テクノロジ入門』(日経BP社、2014年)
『Windows Server 2012テクノロジ入門』(日経BP社、2012年)
『Windows Server仮想化テクノロジ入門』(日経BP社、2011年)
『Windows Server 2008 R2テクノロジ入門』(日経BP社、2009年)
など

画像
画面1:Microsoft Edgeの正式版の最新バージョン/ビルドをダウンロードする画面。当初、日本語が意味不明だった(現在は「安定版81(現在)」に修正済み)

「安定版80(電流)」の「開発」80.0.361.xって?

 前回はChromiumベースの新しいMicrosoft Edgeについて取り上げました。自動配布が始まる前に導入したい、あるいは自動配布の対象でないものの興味があるという読者の中には、さっそく以下のいずれかのサイトにアクセスしたと思います。その際、何か違和感を抱かなかったでしょうか。

新しいMicrosoft Edgeをダウンロード https://www.microsoft.com/edge/  または https://www.microsoft.com/ja-jp/edge/
ビジネス向け新しいMicrosoft Edgeのダウンロード https://www.microsoft.com/edge/business/download  または https://www.microsoft.com/ja-jp/edge/business/download

 上記のサイト(/ja-jpでないほう)は新しいMicrosoft Edgeの一般提供が開始された時点から利用可能でしたが、当時、日本語サイトは用意されておらず、英語のページ(/en-us)に誘導されましたが、3月の後半にようやく日本語化されました。

 3月末にはデザインが少し変更(「チャンネル/ビルドを選択」「プラットフォームを選択」から「チャンネル/バージョンを選択」「ビルドを選択」「プラットフォームを選択」に変更)されたのですが、その際、二度見をしてしまうようなサプライズがありました。

 ビジネス向けのダウンロードサイトの「チャンネル/バージョンを選択」のドロップダウンリストを開くと、一番上に「安定版80(電流)」という選択肢があったのです。これは英語サイトの「Stable 80 (Current)」がこのように翻訳されていた結果でした。

 その次の「ビルドを選択」の初期値の「開発」は、英語サイトでは「BUILD」、つまり「ビルド」のことです。同じページ内に「チャンネル」と「チャネル」が混在しているのもとても気になりました(画面1)。この状態は5月初めまで続き、1か月以上たってようやく「安定版81(現在)」に修正されています。ただし、「ビルド」の一部は現在も「開発」のままですし、「チャンネル」と「チャ ネル」の混在もそもままです。

 一般向けサイトのほうは無視できるようなちょっとした問題ですが、「ダウンロード用Windows 10」や「ダウンロード用macOS」(「ダウンロードmacOS用」という表示もあります)。英語サイトでは「DOWNLOAD for Windows 10」と「DOWNLOAD for macOS」となっています。

 マイクロソフトは自社で機械翻訳技術およびサービスを持っており、そのフロントエンドはBing TranslatorやMicrosoft Translator APIとして公開されています。

 Bing Translatorで問題のページの英語を日本語に翻訳してみたところ、「Stable 80 (Current)」は「安定80(電流)」と訳されました。機械翻訳に完全に依存しているわけではなさそうですが、「Current」を「電流」と訳している点に一貫性を感じます(画面2)。

 少なくともこのサイトの日本語化に、正しい日本語を解する人が介在しているとは到底思えません。そして、ダウンロードサイトがこんな状態で、ここからダウンロードするソフトウェアの日本語版は大丈夫なのかと思いませんか。

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画面2:Bing TranslatorのWeb翻訳ツールでは「Stable 80 (Current)」は「安定80(電流)」と訳される

「5月の更新プログラム」は「Windows 10 May 2019 Update」のことだった

 同じような誤訳は、Windows 10の年に2回ある新しいバージョン/機能更新プログラムが出るたびに繰り返されています。たとえば、Windows 10のダウンロードサイトWindows 10のオンラインヘルプです。

 マイクロソフトはWindows 10 バージョン1803以降、次に示すように「リリース月 西暦 Update」という名称でWindows 10の新しいバージョン/機能更新プログラムを提供しています。新しいバージョンの名称はマーケティング上の意味合いが強く、Windows 10のバージョン情報(winverコマンドなど)に含まれるものではありませんが、公式のドキュメントではこれらの名称が使用されることがあります。

 しかし、リリース直後はWindows 10のバージョンを区別する固有名詞とは扱われず、「2018年4月の更新プログラム」のように訳されてしまうことがあります。Windowsには毎月品質更新プログラムがリリースされるので、この誤訳は年に2回の機能更新プログラムを毎月の品質更新プログラムの1つのように思わせてしまい重大です。

  • ・Windows 10 April 2018 Update(バージョン1803)
  • ・Windows 10 October 2018 Update(バージョン1809)
  • ・Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903)
  • ・Windows 10 November 2019 Update(バージョン1909)

 次の画面は、Windows 10のオンラインヘルプのトップページにある日本語および英語の現在の状態です(画面3)。日本語ヘルプの「最新の更新プログラムの新機能」にある「5月の更新プログラムなど、最新のWindows 10更新プログラムで追加されたこれらの新機能をご確認ください。」が何を意味しているか分かるでしょうか。

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画面3:「5月の更新プログラムなど...」の文章を正しく理解できる日本人はそうはいない

 オリジナルの英語ヘルプ(URLの/ja-jpを/en-usで置き換える)は「Check out these new features we added in recent Windows 10 updates, including the May Update.」です。

 「including the May Update」とは、「including the Windows 10 May 2019 Update」のことです。Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903」とWindows 10 November 2019 Update(バージョン1909)はOSのコア部分が共通であり、バージョン1909でいくつかの新機能が追加(有効化)されています。

 つまり、Windows 10バージョン1903/1909の新機能を確認してくださいと言っているのです。 2020年5月中には次のバージョン「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)」としてリリースされる予定です。2019年と2020年の2つの「May Update」の存在はさらなる混乱を引き起こしそうです。

【次ページ】機械翻訳は緊急度の高い情報発信には有益だが、実用レベルの品質とは言い難い

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