コピーライティングと普段の仕事の共通点
私、衣田がコピーライターになったきっかけは、コピーライティングには、それまで会社員としてやってきた仕事に共通している部分がたくさんあると感じたからなんですね。
コピーライターになる前は、普通の会社員だったんですが、私には脳性麻痺の子供がおり、妻1人の介護で会社員を続けることに限界を感じ、家でできる仕事はないかと、いろいろ探している中で、偶然コピーライターという仕事があることを見つけたんです。
そして、神田昌典さんの『禁断のセールスコピーライティング』(フォレスト出版)という本に出会い、その中に書いてあった次の言葉に衝撃を受け、第二の人生をかけてみようと思ったんです。
「ここで私が伝えているのは…。単なるハウツーではなく、焼け野原に立っても、翌日から、紙とペンだけで、立ち上がる力だ」
コピーライティングのスキルがあれば、商品やサービスに関係なく、まったくのゼロからでも、頭の中にあるアイデアを形にし、それを売れるようにできるのかもしれない。そうであれば、今後何をするにしても、このスキルだけは絶対身につけておくべきだと思ったんです。
そして、コピーライティングを学び始めて少し経つと、それまで会社で書いてきた文章、たとえば、社内での起案書(稟議書)や社外への説明会資料などにも、このスキルが使えることに気づきました。
セールスメッセージの目的は、「買ってもらうこと」であり、それはそのまま「人を動かす」ということです。もう少し言うと「人を動かす」というのは「人の心を動かす」ということだと思うのです。
そして、会社で社内外向けに書いてきた文章というのも、結局は、「人を動かす」という意味ではまったく同じで、「
人を動かす原理原則」は実はこういうふうになっていたのかということが、すごく腑に落ちたんです。それで、これなら自分もコピーライターとしてやっていけるんじゃないかと思い、プロのコピーライターを志したわけです。
会社を辞める前にコピーライティングを学んでいたので、コピーライティングを会社員としての実際の仕事で使ってみるという場面もたくさんありました。
一例を挙げると、「言いたいことは1つに絞る」、「読み手は一生懸命読まない」、「行動して欲しいことははっきり書く」などです。おいおいと詳しいことはお話ししていきますが、これらをちょっと意識して使うだけで、「衣田さんの資料はわかりやすい」と言われることが増えました。
一番効果があったなと思ったのは、
「何を、どういう順番で書くか?」という原理原則ですね。それまでにも、同じことを書いていても、書く順番が違うだけで、説得力が変わってくるというのは、感覚的になんとなくわかってはいました。しかし、それがどういう原理原則になっているのかまでは、わからなかったんです。
5W1Hなど、「どういう要素が必要か」ということや、プレゼンのフレームワークなど、いろいろ情報がありましたが、どういう順番に並べると説得力があるかということについては、「
PASONAの法則」が一番だと感じましたね。
PASONAの法則とは?
この「PASONAの法則」というのは、私、神田がマーケティング・コンサルタントとして活動し始めた頃、クライアントのセールスメッセージを添削していたところ、商品は同じなのに、突然、何倍も売れ始めることがたびたびあって、その
売れる文章に共通した要素と、その並べ方の順番をまとめたものです。
「PASONAの法則」は、具体的に次の要素を、右図の順番で並べるのが基本です。この「PASONA」という6つの要素を、この順番で並べることによって、読み手の反応がよくなり、購買につながる確率が飛躍的に上がるのです。
具体的には、どう活用したらいいのか? ビジネスパーソンにオーダースーツを売るという例で見てみましょう。
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