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- 2020/10/28 掲載
佐藤可士和氏に聞く「ロゴ」とは何か? デザインの「作り方」のポイント
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ロゴはコミュニケーションツールのシンプルな形
たとえば企業のロゴでいえば、その企業の理念やビジョンが凝縮したもの、商品のロゴであれば商品の特徴やコンセプトを凝縮したものとなります。共通して言えることは、ロゴは社会に伝えたい事の本質を、端的に凝縮してビジュアル化した情報であるということです。
ロゴは、社会の中の膨大な情報の中から瞬間的に多くの人に認識してもらう必要があります。つまり、ロゴ とはコミュニケーションツールの「いちばんシンプルな形」と言えるかもしれません。僕の場合、企業ブラン ディングの一環でロゴを作ることが多いですが、まさに社会の中で存在意義を示すもの、企業のアイデンティティーそのものを作ることになります。
耐久性のあるロゴデザインを作る
ロゴを作る上で一番大事なのは、「耐久性」です。1つは、時間の中の耐久性。たとえば企業のロゴであれば30年後に見ても古く見えないかということです。パッと見は今風でインパクトがあったのだけれど、1、2年で飽きてしまうようでは成立しません。僕が目指しているのは、そういう流行に左右されるものではなく、クライアントの本質を凝縮した耐久性のあるデザインを持ったロゴを作ることです。
もう1つは、イメージの耐久性。駅の看板になったり、ビルのサインになったり、商品のタグになったり、ス マートフォンで見たりしたときに、同じイメージが保てるかという意味での耐久性です。このイメージの耐久性はさまざまな媒体で多くの人の目に触れるロゴでは、特に気をつけなくてはなりません。
ロゴという課題解決の形
ロゴをデザインする作業というのはクライアントが抱えている問題を把握し、そこから課題を見つけ、課題に対してのソリューション(解決策)を出すというプロセスになります。つまり、ロゴを作るという行為を通してコミュニケーションのドクターになるとも言えます。そのためにクライアントの持つ問題に対してさまざまな角度から徹底的に、ヒアリングやディスカッションを繰り返し、課題の深掘りを行っていきます。ヒアリング、ディスカッションを徹底的に行うことでクライアント自身も問題の本質を理解し、課題解決のゴールを共有する事が重要です。
クライアントに完成したロゴを見せた時に「そうそう、正にこれが欲しかったんだ!」と言ってもらえるものを作れるのが理想ですね。「こんなロゴができたのですか」と驚かれるようなものは良くないです。これは、クライアントとコンセンサス(共通認識)がとれていないということになります。
以前、ある企業のトップの方から、「いま初めて見ているロゴなのだけれど、前からこれだったような気がして…なぜ、こうしていなかったのだろう」と言われたことがあります。その時は本当にうれしかったですね。それはそのブランドの本質がつかめているという証しです。だからものすごく自然に見えるのです。
企業に対して、奇をてらったり、逆張りみたいな提案をする必要はないと思います。あくまでもクライアントの意向、企業がやりたいこと、もしくは本来やるべきことをつかんで、それをビジュアル化するということがデザイナーの仕事です。
ロゴの制作工程と期間配分
仮にプロジェクトの開始からロゴの発表(企業ブランディングの依頼の場合)までの期間を1年とすると、コンセプトを固めるためのヒアリングやディスカッションに3 カ月くらいかけます。ロゴデザインのプロセスの中で、これにいちばん多くの時間を使います。次は、そのコンセプトをもとにデザインを進める期間で、1~2カ月くらいかけます。そして、プレゼンテーションをして、採用された案のブラッシュアップと細やかなディテールの調整をするのに1カ月くらいかけます。
そしてロゴが決まった後の残りの半年は商標登録の確認やWeb サイトの制作、その他、さまざまな制作物の印刷などの実制作にあてます。
【次ページ】ロゴのブラッシュアップや書体へのこだわり
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