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  • 2021/05/13

日本工学アカデミーが提唱、新たなものづくり論「ナラティブ」ってなんだ?

自然災害や新型コロナウイルスの世界的パンデミックなど、これまで経験したことのない不確実で不透明な時代を迎え、製造業を「どうデザインするか」が問われ始めている。そんな中、新たなものづくりの方法論として「ナラティブなものづくり」を提唱するのが日本工学アカデミーだ。日本工学アカデミー 未来の製造業プロジェクトのリーダーで、日立製作所 研究開発グループで技師長を務める佐々木 直哉 氏が解説した。

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従来のものづくりと「ナラティブなものづくり」との違いとは
(Photo/Getty Images)
※本記事は、2021年3月に開催されたIVI主催のオンラインイベント「IVI公開シンポジウム2021-Spring-」の内容を再構成したものです。

製造業の在り方に示唆を与える「ナラティブ」という手法

 佐々木氏は「ナラティブなものづくり」を紹介するにあたり、「使い手の意識の奥に潜む幸せや喜びなどの価値への想いを明らかにし、作り手の価値観や想いとぶつけあい、両者が製品やサービスの価値を最大化・多様化する"柔らかな場"の構築を提案したい」と意気込みを語る。

 そもそも「ナラティブ」とは「物語」「語り」「語ること」を意味する言葉だ。ただ、「ストーリー」のように出来上がった物語を語るのではなく、一人ひとりが主体的に自由に語るというニュアンスを持つ。

 なぜ、ナラティブが未来の製造業の在り方に関係するのか。たとえば現在、インダストリー4.0の流れで「CPS(サイバーフィジカルシステム)」が重要なキーワードになっている。

 しかし佐々木氏によると、それは無機質的なイメージが強く、非合理的なものが抜け落ち、使い手の多様な価値観や思想の抽出がない。大切なことは、設計者の気づきやユーザーの無形の価値観や思想との調和を図り、新たな価値創造に向けた積極的な取り組みだ。

「そのため私たちのプロジェクトでは、デジタル技術によって抽出・統合された多くの価値や想いを使い手と作り手のノリシロとして機能させ、人間同士が合意を形成する重要な概念として"デジタルな魂"を提案しています」(佐々木氏)

 昔なら「モノに魂を入れる」「モノに魂が宿る」と表現されたが、これをデジタル技術で「デジタルの魂」という形で製品に導入することで、価値の高いモノを作っていく、と捉えると良いだろう。そして、ナラティブなアプローチで得られたデジタルの魂を、ものづくりで具現化することを「ナラティブなものづくり」と呼んで検討を進めてきた。

 佐々木氏らが目指すのは、サイバーとフィジカルの世界が積集合で結びつき、使い手と作り手の間にナラティブという物語を入れることだ。このナラティブとは「人の想いやコンテクストと対話するプロセス」である。

「離散的だったサイバーフィジカルシステムを、将来的に一体化するイメージを考えています。その際にデジタルな魂を製品やサービスに入れ、モノに宿す技術を作っていくことが大事になります」(佐々木氏)

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人間中心のナラティブなモノづくり。サイバーとフィジカルの世界が積集合で結びつき、使い手と作り手の間にナラティブという物語を入れる

ナラティブなものづくりと、従来のものづくりの違い

 「デジタルな魂」は自動車を例にすると分かりやすいという。1960年代、自動車はハードウェアと電子制御が中心だった。それが1990年代になるとハードウェアとソフトウェアに移り、最近ではAIが中心になっている。さらに2050年までには、バランスが絶妙であったり、永久に使われ続けて成長したり、人や環境に優しかったりと、ハードのみに依存しない「デジタルな魂」が製品に入ってくる。

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自動車を例にしたデジタルな魂を創生するナラティブなものづくり

 ナラティブなものづくりと従来のものづくりでは、基本的な考え方が異なる。昔はスバル360やソニーの電子ペーパーなどのように「作り手の想いドリブン」で設計・製造者の熱い想いを特定ユーザーにぶつけ、一方的に価値を与えるものだった。しかし昨今は、愛着の湧くクルマや直して住み続ける家など「使い手の想いドリブン」になっている。

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ナラティブなものづくりと、従来のものづくりの考え方の違い

「複雑で不確定な社会になると、作り手は事前にニーズや価値を捉えてモノを作ることが難しくなります。一方、使い手のニーズも枯渇・飽和し、価値がコモディティ化していきます。未来のものづくりには、作り手の深い発想と使い手の物語を掛け合わせ、デジタルな魂を埋め込む絶妙なものづくりが必要なのです」(佐々木氏)

【次ページ】ナラティブなエコシステムはユーザー起点

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