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  • 2020/06/02 掲載

アフターコロナ/ウィズコロナにおける第4次産業革命、今後の製造業DXのポイントは

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中のさまざまな活動に多大な影響を及ぼしています。ヒトの対面でのコミュニケーションを前提としたビジネスの弱さや、グローバル・サプライチェーンの分断による生産停止リスクなどが露呈されていますが、今回のようなパンデミックに対して十分な備えができていた企業はほとんど無いと思われます。終息の見通しはいまだ不透明ですが、今後「Withコロナ」や「Afterコロナ」を見据えた事業活動の見直し、転換をはかろうとする動きが加速していくでしょう。新型コロナは世界をデジタル化へと突き動かし、第4次産業革命、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みにも少なからず影響をもたらしていきます。

執筆:東芝 福本 勲

執筆:東芝 福本 勲

東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス 代表
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRM、インダストリアルIoTなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。また、企業のデジタル化(DX)の支援/推進を行うコアコンセプト・テクノロジーなどのアドバイザーをつとめている。

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新時代を生き抜くための製造業の「ニューノーマル」の形は
(Photo/Getty Images)


何より大事なのは従業員、東芝は出勤率を20%以下に

 新型コロナを機に、今、企業は働き方とオペレーションの再考を迫られています。この時、何より大事になるのは従業員でしょう。企業には今後、従業員が安全に業務を継続できる環境・働き方に変革することが求められます。オフィスや工場での「密」を避ける環境作りや、リモートワークやヒトが介在せずに対応可能にするための業務のデジタル化・自動化のさらなる推進など、それに応じた従業員の臨機応変な働き方のシフトなどに言及する場合もあるでしょう。

 筆者が勤務する東芝グループでは、在宅勤務によりスタッフ部門や営業部門の出勤率を20%以下に減らしていますが、2020年6月以降、国内の製造現場や保守・サービス・据え付けなどに携わる従業員を対象に週休3日制を導入する方針です。出社日の勤務時間を増やし総労働時間は変えずに休日を週1日増やすことで、従業員の出社頻度や出勤者の人数をできる限り減らし、感染拡大を防ぐことを狙っています。

 また、設計・生産技術などに携わる従業員を対象に、既存のフレックスタイム制からコアタイムを撤廃したコア無しフレックスタイム制の導入も検討しており、より柔軟な勤務体制により接触機会を減らす考えです。

 多くの企業では、在宅勤務に切り替えWeb会議やオンライン・コミュニケーションなどを利用した新たな働き方の模索が始まっており、デジタルを活用した「非接触で時空を超えた」ワークスタイルへのシフトが急速に進みつつあります。

 一方、これにより、バックエンドをサポートするクラウドサービスやネットワークのトラフィック・ボリュームの大幅な増加をもたらし、接続に支障が生じて生産性が下がっているといった話も聞きます。Afterコロナにおいても、こういったリモートワーク・分散ワークは常態化する可能性が高いと考えられます。

 そのためには、ネットワークのトラフィック・ボリューム以外にも、今回浮き彫りになった「ハンコを押すための出社」のようなアナログな業務まで含めたフルデジタル化、ホームワーク・オンライン会議時のセキュリティ確保、個人の行動追跡とプライバシーの両立などのさまざまな課題を解決していかなければなりません。

 また、従業員が新型コロナに感染した場合でも業務を継続できるような体制を構築しておく必要もあるでしょう。属人化している業務があれば複数の従業員で対応できるようにし、顧客向けの販売やサービス提供を止めることがないよう、同じ業務を担当するメンバーが集団感染するリスクを回避することも考えねばなりません。企業は自社の事業継続のためのインフラやそれをサポートするリソースを保有しているのかを確認しておく必要があるのではないでしょうか。

製造業はAfter / Withコロナに向けてDXにどう取り組むのか

 いまだに新型コロナの収束の出口が見えませんが、グローバル規模で感染リスクが長期化すると見られることから、社会的なデジタル化の動き、デジタルサービス利用のニーズは間違いなく高まるでしょう。

 このような状況の中で、グローバル製造業の取り組むべきDXのポイントは以下と考えます。
  • 製造現場情報のデジタル化、クラウド化が実現する工場間・サプライチェーン連携による「ものづくりのレジリエンス(弾力性)の向上」
  • ヘッドクォーターとグローバル拠点間や、製造装置メーカーと工場間での製造現場情報の共有による「リモートでの現場の見える化・コントロール」

 従来日本の製造業は自社の工場・製造データをクラウドに上げるのをちゅうちょする傾向があり、多くの仕組みはオンプレミスで構築されてきましたが、オンプレミス型の仕組みでは新型コロナの影響で刻々と状況が変化するサプライチェーンやエコシステムに柔軟に対応できないという課題が生じます。

 今後は、製造現場の情報をデジタル化し、クラウド上で各工場やサプライヤーの情報と連携させ、各工場の生産状況をタイムリーに把握して不足部品を融通したり、サプライチェーンを見直すことができるようにすることなどが必要となります。

 また、グローバル拠点への渡航が難しくなる中で、熟練技術者が現地に行かなくても生産品質を維持することや、現地の製造装置の点検・修理をリモートで行うことなどが課題になってきます。新興国ではPCよりスマートフォン・タブレットなどのモバイルデバイスの利用拡大が先行している国も多く存在します。そういったモバイルデバイスや、5GやAR/VRなどの新しいテクノロジーで、国内外の工場をリモートで見える化したりコントロールできるようにする仕組みなどの構築が今後求められるのでないでしょうか。

【次ページ】コロナ時代のニューノーマルを生き抜くには

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