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  • 2021/04/29

「毎日出社しなくなった」ドイツ人、日独の「テレワーク格差」は何を意味するのか?

日本では3度目の緊急事態宣言が発令されても、電車などでの通勤時の混在が続いている。一方、コロナ禍をきっかけに、テレワーク導入を一気に加速させたのがドイツだ。現在では、製造業でもテレワーク化の動きが見られるほか、テレワークの法制化をめぐる議論も活発化している。日本と同じように「原則出社」が当たり前だったドイツ人は、なぜテレワークに急激に舵を切ることができたのか。今後テレワークが当たり前になると、ドイツ人の働き方や産業はどう変化していくのか。一方、いまだにテレワーク導入が停滞する日本の未来はどう見通せばいいのか。日独のテレワーク格差が意味するところについて、ドイツ在住31年になるジャーナリストの熊谷徹氏に聞いた。

ジャーナリスト 熊谷 徹

ジャーナリスト 熊谷 徹

1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。著書に『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人』『ドイツ人はなぜ、毎日出社しなくても世界一成果を出せるのか』(SBクリエイティブ)など多数。『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研)で2007年度平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞受賞。

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コロナ禍で一気にテレワークが進んだドイツ
(Photo/Getty Images)

本記事は『ドイツ人はなぜ、毎日出社しなくても世界一成果を出せるのか』の内容を一部再構成したものです。


「テレワーク革命」が進行するドイツ

 日本生産性本部が実施した「働く人の意識調査」(2021年1月)によると、日本全国のテレワーク実施率は22%。前年7月、10月の調査以降、数字は横ばいとなっており、政府が目標とする7割には遠く及ばないのが実情である。一方ドイツでは、2020年の新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに「テレワーク革命」が進行。2020年末時点で、サラリーマンの約45%が何らかの形でテレワークを行っているという。熊谷氏はその理由を次のように解説する。

「第一の要因は、ドイツは日本と比べて新型コロナの新規感染者数・死亡数ともに非常に高かったため、政府や企業が国民の安全や健康を守ることを最優先にしたということ。そして、ドイツでは21世紀に入ってから景気が非常に良かったこともあり、コロナ禍以前から働き方を柔軟にしようとする動きがありました。一部の企業では労働組合との間でテレワークを許可する合意をすでに行っていたので、スムーズにテレワークに移行できたというわけです」(熊谷氏)

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ドイツ国内での在宅勤務での動向

 ドイツでテレワークが普及している背景としては、「個人の都合」や「ワークライフバランス」を重視するドイツ人の労働観も見逃せないポイントだろう。

「ドイツの企業社会では、一人ひとりの体調や家庭の都合はさまざまだから、それを尊重しなければならない、という原則が共有されています。日本と比較して労働時間が短く、有給休暇を完全に消化することができるのも、そういったコンセンサスがあるからです。ドイツの国立感染症研究機関であるロベルト・コッホ研究所では、60歳以上の人、心臓病や免疫疾患などの基礎疾患がある人を、新型コロナウイルスにより重症化したり死亡したりする危険が高いリスクグループと定義しています。その該当者に対して、多くの企業が100%テレワークを認めています」(熊谷氏)

製造業でも見られるテレワーク導入の動き

 現在の日独では「テレワーク格差」が拡大しつつあるが、コロナ禍以前にさかのぼれば、ドイツは他のEU諸国と比較して、テレワークはそれほど普及していなかった。2014年時点で、ドイツ企業で働く人のうち「通常、もしくは常に自宅で働いている」と答えた人はわずか7%前後。日本と同じように「仕事は会社で行うのが基本」という考え方が主流だったのである。その理由として挙げられるのは、ドイツが物づくり大国であり、製造業が経済を牽引してきたという事実である。この状況がコロナパンデミックで一変したということだ。

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コロナ前は「テレワーク小国」だったドイツ
(出典:『ドイツ人はなぜ、毎日出社しなくても世界一成果を出せるのか』)


「これだけ早くテレワーク化が進むとは思わなかったので、ドイツの経営者たちも驚いていました。ただ、実際に取り組んでみたら社員にも経営者にもメリットが多いことがわかりました。ドイツでも往復2時間以上かけて通勤する人は多かったので、社員にとっては通勤時間がゼロになったのが非常に大きいといえます。通勤時間がなくなれば、すぐに仕事を始められるため、生産性が上がります。また、家族と過ごす時間が増え、ワークライフバランスが改善されます。経営者側にも、業務に支障がなく生産性を維持できるなら、テレワークの方が合理的とする考え方が定着しつつあります。特にITのインフラが整っているIT業や金融サービス業では8~9割方テレワークが進んでいます」(熊谷氏)

日本では製造業などで「工場に人が来なければ稼働できない」ことを理由にテレワーク導入は困難とする見解が根強い。しかし、ここに来てドイツでは、テレワーク対応で遅れを取っている製造業界においてもデジタル化やリモート化を導入する動きが出てきたという。

「ドイツ政府と製造業界は2011年からインダストリー4.0という製造業をデジタル化するプロジェクトに取り組んでいます。これまで中小企業はデジタル化に積極的ではありませんでしたが、コロナパンデミック以降、インダストリー4.0への関心が急速に高まっています。もともとインダストリー4.0では、工場労働者が工場に出向かず、自宅からリモートで生産工程や製法を管理する究極的な姿を構想していました。これはまさに製造業のテレワーク化にほかなりません。今後は中小のメーカーでもロボットの導入や、作業のデジタル化・リモート化が広がっていくとみられています」(熊谷氏)

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コロナ禍以降、大半の企業がデジタル化のための投資を増やした
(出典:『ドイツ人はなぜ、毎日出社しなくても世界一成果を出せるのか』)


【次ページ】各国のテレワーク化が日本にもたらす影響とは

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