• 2025/06/07 掲載

日本人の「静かな退職」が止まらない…半数もの人が心を閉ざす衝撃の実態

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
14
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
「仕事が面白い、職場が楽しい、会社が好きだ」と子どもの前で堂々と語れる人は、いったいどれだけいるだろうか。米ギャラップ社の調査によると、職場と「積極的にエンゲージメントしている」日本人はわずか6%で世界平均の23%を大きく下回り、世界最低水準だという。なぜここまで職場と「つながれなくなった」のか?『静かに分断する職場 なぜ、社員の心が離れていくのか』を上梓した、ジェイフィール代表取締役の高橋克徳氏が解説する。
執筆:ジェイフィール代表取締役 高橋 克徳

ジェイフィール代表取締役 高橋 克徳

1966年生まれ。一橋大学大学院修士、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。野村総合研究所、ワトソンワイアットにて、組織開発、人材開発に関するコンサルティングに一貫して従事。2007年ジェイフィール設立に参画。組織感情、つながり力、コネクティング・リーダーなど、日本企業再生に向けた新たなコンセプトを次々に提示し、「感情とつながりを再生し、良い感情の連鎖を起こす」ための組織づくり、人づくり支援している。2010年より現職。2013年より東京理科大学大学院イノベーション研究科教授、2018年より武蔵野大学経営学部特任教授を兼務。2008年に出版した『不機嫌な職場』(共著、講談社)は28万部のベストセラーとなり、職場に焦点を当てた組織変革への動きをつくり出した。その他、『職場は感情で変わる』(講談社)、『人が「つながる」マネジメント』(中経出版)、『ワクワクする職場をつくる。』(共著、実業之日本社)など著書多数。

photo
なぜ日本人のエンゲージメントはここまで低いのか?

仕事や職場、会社のことを子どもにイキイキと語れるか?

「仕事が面白い、職場が楽しい、会社が好きだ」
 1つでもいいので、子どもたちの前で堂々と語れますか。

 私が研修や講演をする際に、必ず最初に聞いてきたことです。

 エンゲージメントという言葉が広まっていますが、約束、契約、婚約などを意味する言葉です。そこには強いつながりを感じ、自らそこに拘束される、参画するというニュアンスがあります。

 つまり、冒頭の問いは、「仕事や職場、会社との間に強いつながりを実感し、主体的に参画していますか」ということを聞いています。そのときに「子どもの前で」と言っているのは1つの象徴です。嘘やごまかしなく、「心からそう思っていますか」ということを問いかけています。

 実際に手を挙げてもらうと、ほとんどの職場、会社で手を上げる人は1割から2割程度です。しかも、その中には気持ちよく手を上げる人もいますが、多くの人たちは迷いながら手を上げます。やはり子どもたちの前でイキイキと語る自分がイメージできない人が多いようです。

画像
仕事や職場、会社のことを子どもにイキイキと語る自分が想像できない人は多い
(Photo/Shutterstock.com)

職場との「つながり」を実感している日本人の割合は…

 今では想像がつかないかもしれませんが、バブル期の1989年、世界の企業の時価総額ランキングで上位50社中32社が日本企業でした。IMD(国際経営開発研究所)が調査している「世界競争力年鑑」でも、1992年までは日本の競争力は世界1位でした。

 ところが2024年で時価総額ランキング50社に入るのはトヨタ自動車1社のみ。世界競争力年鑑でも、67カ国中38位になっています。

 バブル期は異常であったとはいえ、当時の日本企業は、活力のある人たちと、一体感のある組織によって支えられてきました。ところが、バブルが崩壊した後、人も組織も活力を失っていきます。

 米ギャラップ社が140以上の国で継続的に実施している「グローバル職場環境調査2024」が今の日本を象徴していると話題になりました。従業員の仕事や職場に対する積極性、熱意に関わる12の質問への回答をもとに「積極的にエンゲージメントしている(actively engaged)」とされた日本人の割合はなんとわずかに6%。これは世界平均の23%を大きく下回り、世界最低水準です。さらに「エンゲージしていない(disengaged)」が70.3%、「積極的にエンゲージしていない(actively disengaged)」が23.7%となっています。

 私たちジェイフィールでも、2024年5月に「人・組織・コミュニティに関わるアンケート調査」を行っています(下図)。その中でも、仕事、職場、会社へのエンゲージメントを測定しています。「そう思う」「ややそう思う」と肯定的に回答した人の割合で見ていくと、「仕事が面白い、充実している」が39.4%、「職場が楽しい、良い職場だと思う」が49.5%、「会社が好きだ、良い会社だと思う」が48.2%と、4、5割の社員は肯定的に受け止めていることがわかります。

画像
エンゲージメントに関わる質問
(出典:ジェイフィール「人・組織・コミュニティに関わるアンケート調査」(2024年5月 N=315))

 しかし、「そう思う」と明確に肯定した人だけの割合を見ていくと、「仕事が面白い、充実している」が8.6%、「職場が楽しい、良い職場だと思う」が11.1%、「会社が好きだ、良い会社だと思う」が9.5%と1割程度にとどまってしまいます。逆に明確に「そう思わない」と強く否定した人は、すべての質問で約2割です。

 明確に仕事や職場、会社にエンゲージメント、すなわち「つながり」を実感している人が1割、明確に実感していないと思っている人が2割。「やや」と回答しながら、つながっているとも、つながっていないとも言い切れない人が7割。そう理解すると、先ほどのギャラップ社の調査と一致しているように見えます。 【次ページ】負の感情の連鎖が生じる職場、何が起きているのか?
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます