- 2025/06/07 掲載
日本人の「静かな退職」が止まらない…半数もの人が心を閉ざす衝撃の実態
1966年生まれ。一橋大学大学院修士、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。野村総合研究所、ワトソンワイアットにて、組織開発、人材開発に関するコンサルティングに一貫して従事。2007年ジェイフィール設立に参画。組織感情、つながり力、コネクティング・リーダーなど、日本企業再生に向けた新たなコンセプトを次々に提示し、「感情とつながりを再生し、良い感情の連鎖を起こす」ための組織づくり、人づくり支援している。2010年より現職。2013年より東京理科大学大学院イノベーション研究科教授、2018年より武蔵野大学経営学部特任教授を兼務。2008年に出版した『不機嫌な職場』(共著、講談社)は28万部のベストセラーとなり、職場に焦点を当てた組織変革への動きをつくり出した。その他、『職場は感情で変わる』(講談社)、『人が「つながる」マネジメント』(中経出版)、『ワクワクする職場をつくる。』(共著、実業之日本社)など著書多数。
仕事や職場、会社のことを子どもにイキイキと語れるか?
「仕事が面白い、職場が楽しい、会社が好きだ」1つでもいいので、子どもたちの前で堂々と語れますか。
私が研修や講演をする際に、必ず最初に聞いてきたことです。
エンゲージメントという言葉が広まっていますが、約束、契約、婚約などを意味する言葉です。そこには強いつながりを感じ、自らそこに拘束される、参画するというニュアンスがあります。
つまり、冒頭の問いは、「仕事や職場、会社との間に強いつながりを実感し、主体的に参画していますか」ということを聞いています。そのときに「子どもの前で」と言っているのは1つの象徴です。嘘やごまかしなく、「心からそう思っていますか」ということを問いかけています。
実際に手を挙げてもらうと、ほとんどの職場、会社で手を上げる人は1割から2割程度です。しかも、その中には気持ちよく手を上げる人もいますが、多くの人たちは迷いながら手を上げます。やはり子どもたちの前でイキイキと語る自分がイメージできない人が多いようです。
職場との「つながり」を実感している日本人の割合は…
今では想像がつかないかもしれませんが、バブル期の1989年、世界の企業の時価総額ランキングで上位50社中32社が日本企業でした。IMD(国際経営開発研究所)が調査している「世界競争力年鑑」でも、1992年までは日本の競争力は世界1位でした。ところが2024年で時価総額ランキング50社に入るのはトヨタ自動車1社のみ。世界競争力年鑑でも、67カ国中38位になっています。
バブル期は異常であったとはいえ、当時の日本企業は、活力のある人たちと、一体感のある組織によって支えられてきました。ところが、バブルが崩壊した後、人も組織も活力を失っていきます。
米ギャラップ社が140以上の国で継続的に実施している「グローバル職場環境調査2024」が今の日本を象徴していると話題になりました。従業員の仕事や職場に対する積極性、熱意に関わる12の質問への回答をもとに「積極的にエンゲージメントしている(actively engaged)」とされた日本人の割合はなんとわずかに6%。これは世界平均の23%を大きく下回り、世界最低水準です。さらに「エンゲージしていない(disengaged)」が70.3%、「積極的にエンゲージしていない(actively disengaged)」が23.7%となっています。
私たちジェイフィールでも、2024年5月に「人・組織・コミュニティに関わるアンケート調査」を行っています(下図)。その中でも、仕事、職場、会社へのエンゲージメントを測定しています。「そう思う」「ややそう思う」と肯定的に回答した人の割合で見ていくと、「仕事が面白い、充実している」が39.4%、「職場が楽しい、良い職場だと思う」が49.5%、「会社が好きだ、良い会社だと思う」が48.2%と、4、5割の社員は肯定的に受け止めていることがわかります。
しかし、「そう思う」と明確に肯定した人だけの割合を見ていくと、「仕事が面白い、充実している」が8.6%、「職場が楽しい、良い職場だと思う」が11.1%、「会社が好きだ、良い会社だと思う」が9.5%と1割程度にとどまってしまいます。逆に明確に「そう思わない」と強く否定した人は、すべての質問で約2割です。
明確に仕事や職場、会社にエンゲージメント、すなわち「つながり」を実感している人が1割、明確に実感していないと思っている人が2割。「やや」と回答しながら、つながっているとも、つながっていないとも言い切れない人が7割。そう理解すると、先ほどのギャラップ社の調査と一致しているように見えます。 【次ページ】負の感情の連鎖が生じる職場、何が起きているのか?
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