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  • 2021/06/25 掲載

Cookie規制でどうなる?CDPの基本とターゲティング広告高度化のゆくえ

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行動履歴をもとにアプローチする行動ターゲティング広告を高度に実現するツールとして、「DMP(Data Management Platform)」そして「CDP(Customer Data Platform)」が知られる。本記事では、Cookie規制によって注目を集めるCDPについて、その役割やDMPとの違い、代表的な製品などを解説する。取材協力は、『マーケティングのデジタル化 5つの本質』(共著)著者であり、インティメート・マージャー代表取締役社長 簗島亮次氏。

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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CDPがなぜ今重要なのか
(Photo/Getty Images)



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CDP(Customer Data Platform)とは?

 CDP(Customer Data Platform)は、生活者のWebサイト訪問などによってもたらされる閲覧履歴データや、ネット上に蓄積された多種多様なビッグデータを収集、蓄積した上で、分析を行い、行動ターゲティング広告などを実施するためのプラットフォームの1つである。実在する個人に紐付け可能な、メールアドレスや会員IDといったデータをKeyとし、営業アプローチの方法を選択、実施したり、分析するために用いられる。

 CDPでは「ID、メールアドレス、住所などの基本情報」「自社・他社サイト内の行動データ」「スマホアプリのログデータ」「位置情報データ」「webや店舗での購買履歴」などを関係する複数のデータベースやツールから収集し、マージする。

パブリックDMP、プライベートDMPとCDPの違いは?

 CDPは同じく行動ターゲティング広告のプラットフォームである「DMP(Data Management Platform)」と混同しやすい概念である。前回のDMP解説記事でも説明したが、パブリックDMP、プライベートDMP、CDPは非常に似通っており、厳密に区別することは難しい。その上で、あえてその違いを解説する。

 これらのツールは、ターゲットとなる生活者に対する複数の属性情報をマージし、ターゲットの趣味嗜好や行動を絞り込むことを目的とするデータベースを備えている。

 データベースには、必ずKeyとなるデータが存在するが、パブリックDMP、プライベートDMP、CDPでは、それぞれKeyとなる情報が異なっている。

パブリックDMP
3rd Party Data(第三者から提供された生活者に対するデータ)をKeyとしてデータベースが構成される。

プライベートDMP
1st Party Data(広告を出稿する側である企業やECサイト、Webサイトオーナーらが、自ら収集した生活者に対するデータ)をKeyに、データベースが構成される。

CDP
直接個人に紐づくデータ(メールアドレスや会員IDなど)をKeyに、1st Party Data、3rd Party Dataがマージされてデータベースが構成される。

「DMPが広告・マーケティング施策のためのデータマネジメントツールで、多くの場合、自社外の一般消費者データを提供するツールであるのに対し、CDPは自社の顧客データを起点として、より広範な企業活動を支援する」
トレジャーデータ マーケティングディレクター 堀内健后氏
出典:『流通情報』「デジタル化はカスタマー・ジャーニーをどう変えたのか」

 堀内氏の説明に倣うと、パブリックDMP、プライベートDMPは、より効果的な広告を生活者に対して届けることを目的にしている一方で、CDPは、自社の顧客に対し、顧客の行動や属性、趣味嗜好に合わせ、より響く営業アプローチを選択し実施することを可能とする。

CDPが求められる背景「Cookie規制」とは

 CDPが求められる背景には、Cookieに関する規制動向がある。

 従来、行動ターゲティング広告やDMPの運用に際しては、Cookieの存在が欠かせなかった。

 Cookieとは、特定のWebサイトを訪問した際に、生活者のPCやスマートフォンなどに対し、保存される情報である。Cookieは、生活者が閲覧したWebサイト履歴、広告閲覧履歴、検索エンジンでの検索履歴などを保存し、DMPによって解析し、行動ターゲティング広告やリターゲティング広告(一度見た商品を、再び広告として配信する仕組み)の配信に利用されてきた。

 Cookieそのものは、個人情報ではないが、Cookieが収集した、生活者に対する多種多様な行動履歴をマージしていけば、理論上は限りなく個人を特定するレベルまで、絞り込みを行うことが可だ。ちなみに、Cookieのように個人を特定可能な情報を、PII(Personally Identifiable Information)と呼ぶ。

 こうしたCookieの利用に“待った”をかけたのが、EUが2018年5月から施行した「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」である。GDPRは、EU内における個人データ保護を規定する法律だ。生活者が、自分自身の個人データがどのように取り扱われているのかを知り、またコントロールできるようにすることに重きが置かれている。

 GDPRの対象はEUのため、日本国内で利活用される個人情報には影響を与えない。しかし、EU内で事業活動を営む日本企業は、GDPRを遵守しなければならない。

 GDPRでは、Cookieを含めたPIIを個人情報と同等に保護すべき対象としている。そして、CookieなどのPIIを行動ターゲティング広告などの利活用目的で使用する場合には、利用目的を明示し、かつ「暗黙的ではない同意」を得ることを求めている。「暗黙的ではない同意」とは、生活者に対し、明示的にCookieなどの利用許可を得ることであり、たとえば「本サイトの閲覧を続けた場合には、Cookieの受け入れに同意したものとみなす」といった表現は許されない。

 GDPRのCookie規制によって、3rd Party Cookie(第三者によって取得されたCookieであり、3rd Party Data における情報源のひとつ)の利用は、非常に困難になった。第三者提供を前提にPIIを収集する3rd Party Cookieは、取得時点でCookieの利用目的を明示し、かつ生活者から同意を得なければならないからだ。

 そのため、3rd Party Cookieを収集し、パブリックDMPを介して事業者に提供するというビジネスモデルも再考を求められた。

 そこで、3rd Party DataをKeyとするパブリックDMPではなく、1st Party DataをKeyとするプライベートDMP、直接個人に紐づくデータをKeyにするCDPに注目が集まってきたのだ。

 本記事執筆時点(2021年5月)において、日本国内ではCookieに対する規制はない。だが今後、Cookieに関する法的規制が実施される可能性は否定できない。そうなったとき、EU圏を中心にパブリックDMPの活用に黄信号が灯っていることを踏まえると、国内でもCDPへの注目がさらに高まるかもしれない。

【次ページ】CDPの活用事例、現在の市場規模は?

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