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  • 2021/06/29

誤解だらけの特許・意匠・商標権、「カップヌードル」や「きのこの山」はどう活用?

連載:デザイン経営の「正体」

デザイン経営を取り入れる第一歩、それはユーザー視点に立つことだ。そこで新たな景色が見えてくる。その“発見”に対して、企業はどう対応していくべきか。競争力強化のカギを握るのは「知財戦略」である。だが、知財の中でも「特許」「意匠」「商標」についてはそれぞれ誤解も多いのが現状だ。今後、企業が考えるべき知財戦略を、「カップヌードル」や「きのこの山」などの身近な商品を例に出しながら、特許庁 CDO(チーフ・デザイン・オフィサー)補佐官 西垣 淳子氏に解説してもらった。

聞き手・構成:編集部 松尾慎司、本橋実紗、執筆:吉田育代、企画協力:福本勲、鍋野敬一郎

聞き手・構成:編集部 松尾慎司、本橋実紗、執筆:吉田育代、企画協力:福本勲、鍋野敬一郎

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特許庁
CDO補佐官(デザイン経営プロジェクト)
西垣 淳子氏


デザイン経営で自社の強みを把握した次は「知財戦略」

 ユーザー視点に立つというデザイン経営を行うと、課題も明らかになれば、自分たちの強みも見えてくる。そこで次に行うことは、再確認した自社の強みを生かす知的財産(以下、知財)戦略を構想することだと西垣氏は語る。

「企業競争力強化のカギを握るのは知財戦略です。たとえば、自分たちの価値をブランドとして確立するということであれば、『商標権』の取得は必要だと思います。企業名、商品サービスのロゴなどを通じて、自分たちの提供する価値とともに製品・サービスをしっかり市場に打ち出すことが重要ですが、そうして培ったブランド力を毀損しないためにも、他社による類似品による市場競争を防ぐため、商標権でしっかり守ることが求められます」(西垣氏)

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そもそも「知的財産権」とは何か? 知的財産権の種類と概要

 産業財産権の中でも最も聞いたことがある人が多いであろう「特許権」については、次のように捉えるべきだという。

「自分たちの強みの中に他社にない技術力があるのなら、それは『特許権』にすることを考えるかと思いますが、同時にその技術力をどういう方向に活用していくかといった事業戦略とあわせて特許の取得や活用を考える必要があると思います」(西垣氏)

 方向性に合わせた戦略の例として、西垣氏は次のように説明する。

「自分たちの技術の活用範囲を広げていくことで、自分たちの事業を伸ばしていきたいのであれば、特許を取得しつつも、当該特許のライセンスをオープンにして、一気に市場を広げていくことが望まれると思います。一方、自社の技術力が、製造プロセスなどノウハウに依存しているのであれば、特許化を考えるよりも、徹底的に秘匿して、他社に追随されないような体制をとることが重要です。また、特許取得した技術をベースとした隣接市場に事業を広げていきたいのであれば、自社の特許はさっさとオープンにしてしまい、プラットフォーム化することで、隣接分野で優位に立つといった考え方もあります。その際、プラットフォームの信頼性を守るには、商標権によるブランド保持も重要です」(西垣氏)

 知財戦略とは、デザイン思考を元に自分たちの強みや狙うべき市場を分析したあと、次のアクションとして行う経営戦略ということだ。

美しくなければ取れない?「意匠権」の誤解

 しかし現時点では、知財の取り扱いは企業によって大きく異なる。ある企業では、部門を設けて専任担当者が組織を横串にしながら管理する一方で、ある企業では該当する知財に関わる部門が個別に動くといった具合だ。また、企業によっては“特許こそ知財”と考えるなど、知財の認識の差は大きい。

 中でも、今も企業が誤解している知財として「意匠権」がある。2019年、意匠法の改正が行われ、保護対象の拡充、関連意匠制度の拡充、意匠権の存続期間変更が実現した。特に、保護対象の拡充では、クラウドに保存された画像デザイン、壁や地面に投影される画、建築物の外観・内装のデザインなどといった物品(可搬であることを意味する)性のないデザインにも広く意匠登録が認められることになった。

意匠法改正の主要ポイント2点
  ポイント 概要
1 保護対象の拡充 保護対象は「物品」に限られていたが、新たに「画像」「建築物」「内装」のデザインが登録可能に。
2 関連意匠制度の拡充 関連意匠の出願可能時期が、「本意匠の意匠公報発行前まで(本意匠の出願から8カ月程度)」から「本意匠の出願日から10年経過する日前まで」に大幅延長。

また、これまでは関連意匠にのみ類似する意匠は登録できなかったが、関連意匠にのみ類似する関連意匠の登録も可能に。


 しかし、「まだ旧法のイメージが強いのか、登録申請数はそれほど増えていない」と西垣氏は残念がる。なぜなら、諸外国ではWebデザインなどにも意匠法、意匠権がどんどん広がっていく中で、日本も変わらなければという課題感があったからだ。

 デザイン経営宣言を出すこととなった懇談会にはブランディングを強化しているマツダもメンバーとして参加していた。彼らの新たなブランド価値を意匠法の中でどう保護できるのか。マツダの姿はある意味、確固たるブランド力を持つアップルなどにも重なり、ブランド価値でグローバルに戦おうとする日本企業に対して意匠法は何ができるのか、という自問への答えが意匠法改正だったのだ。関連意匠の制度を改正したのは、企業による統一的なブランド価値の保護という意識もあった。「企業が考えている以上に意匠登録は使える」と同氏は訴える。

「有名なデザイナーが作った美しいものだけが意匠権を持てる、技術なら特許を取ると思われがちですが、何か技術的な特徴が外観に表れていれば意匠登録で守ることができます。申請の拒絶に『美しくないから』などという理由はないのです」(西垣氏)

 また、同氏は中小企業こそ意匠権を活用してほしいと強調する。

「意匠権が中小企業にとって扱いやすいと言えるのは、形の話だけでよく、どうやるとそれが作れるかといった隠したい技術的な情報は、出願のときに何も書かなくていいうえに公開もされないからです。ただし、注意しなければいけないのは、特許と一緒で新規性がないと認められないため、秘密にしている間に申請しなければなりません。自分たちの強みを考えて最初に意匠登録すると決断したのなら、市場に出ていくよりも先に意匠権取得を考えることになります」(西垣氏)

【次ページ】あの製品も?「意匠権」と「特許権」の組み合わせで成功した例

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