• 会員限定
  • 2021/06/25 掲載

SB C&S 溝口泰雄社長に聞くIT流通DX、サブスク台頭による「課金の複雑化」に挑むワケ

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
クラウドに代表されるサブスクリプションサービス(サブスク)の台頭によって、IT流通の世界も様変わりを果たした。ソフトウェアベンダー直販も増え、SIerなどの参入などにより、その競争も激化している。こうした中で10期連続の増益を果たしつつ、「これまで参入できなかった市場に切り込むチャンスも同時に生まれている」と意気込むのが、ソフトバンクグループでIT流通を手がける、SB C&S代表取締役社長 兼 CEOの溝口泰雄氏だ。同社の事業戦略と今後のビジョンについて話を聞いた。

聞き手:ビジネス+IT、松尾 慎司

聞き手:ビジネス+IT、松尾 慎司

画像
SB C&S
代表取締役社長 兼 CEO
溝口泰雄氏

クラウド進展で激化するIT流通の競争

 SB C&Sは、ソフトバンクグループの原点であるIT流通事業を手がける企業です。その中で、「Value Added Distributor(付加価値提供型ディストリビューター)」として、「流通を通じた新たな価値の創出」と、そのための「プラットフォーム」としての役割が事業の柱であることは40年前の創業以来、一貫して変わりません。

画像
SB C&Sが掲げる「Value Added Distributor」

 一方で、事業環境に目を向けると、ソフトウェア流通のDXとも言える、パッケージからサブスクリプションモデルへの急速なシフトが起きており、それとともに、SB C&Sのビジネスモデルは大きく変わってきました。

 私がこの会社に参画した2000年代を振り返れば、ソフトウェアも含めた商品を物理的に顧客に届けることがSB C&Sのミッションでした。

 創業以来、家電量販店やメーカー、物流を巻き込んだ、販売から売掛金の回収までの一気通貫のプラットフォームを整備し、他社に付け入る隙を与えないことでパッケージソフトウェアの売上では全体のシェアの大半を握っていました。

 しかし、その後のクラウドサービスの台頭は周知の通りです。この流れを当事者として目の当たりにし、危機意識もかなり早くから抱いていました。

 2000年代中ごろに付き合いのある全ソフトウェアメーカーと一緒に、ASPサービスを開始したのも、まさにそのためです。残念ながらこの時は結果を伴わなかったものの、この取り組みは非常に大きな学びになりました。

 その学びを生かして整備したプラットフォームが、クラウドサービスの契約管理を行うプラットフォーム「ClouDX(クラウディーエックス)」、ソフトウェア評価サイトの「ITreview(アイティレビュー)」です。

画像
リカーリングビジネスを支える「ClouDX」

 クラウドサービスの販売には月次の継続的な請求や契約ごとのライセンス証書の発送など、多大な手間が伴います。それらの煩雑な作業を、受発注からサービス開通、契約情報、課金、請求までの機能を備えたClouDXにより一気通貫で肩代わりできるようになり、パートナー企業のクラウド販売の支援が可能になったわけです。

 これらの「変化を好機に転じる」というグループ文化による攻めの取り組みを長らく続けることで、SB C&Sの売上高は5,000億円を超え、6期連続の増収、10期連続の増益を続けています。

経営者の意識改革とキラーアプリの育成も寄与

 もっとも、買い切り型のパッケージ販売との違いから、クラウドサービスの販売では売り上げの一時的な落ち込みが避けられません。そのため、クラウドサービスの販売に力を入れたがらないパートナー企業の経営者もかつては少なくありませんでした。

 そうした中、SB C&Sはこうした経営者への意識改革に早くから動いてきました。リカーリングモデル(サブスクを含んだ繰り返しビジネスのこと)にはもちろん、数多くのメリットがあるわけです。

 たとえば、売り上げを安定させられ、顧客と長期的なつながりを持てるようになり、そこで得られたデータを基に、各種施策を打ちやすくなります。

 それらの経営での意義を訴えるとともに、Microsoft 365などのクラウドサービスの専門チームを結成し、継続的にセミナーを開催することで、ユーザーに“欲しい”と思わせるキラーアプリの育成も並行して行ってきました。

 そのためのノウハウを蓄えるべく、自社でのクラウド利用も加速させてきました。今では年間で数千億円規模のビジネスを行うSB C&Sの基幹システムの多くもすでにクラウド上に移行済みです。提案する以上、自社で手本を示すべきでしょう。

 流通の収益モデルを拡大するため、自社ブランドのモバイルアクセサリー「SoftBank Selection」はじめ、自社でのサービス開発、通信や保守サービスと組み合わせての提案など、販売時にどう付加価値を高めるかにも知恵を絞ってきました。

 SB C&Sの好業績は、これらの複合的な取り組みがうまくかみ合った結果です。ClouDXが対応するメーカー数も増えており、ASP(Application Service Provider)で苦労を重ねてからの15年を振り返ると、何とも感慨深いですね。

【次ページ】進化するIT流通の中でどう「チャンスを創造」するのか

関連タグ

関連コンテンツ

オンライン

Cloud Security Day 2024

企業の経済活動の中心がWeb上へと移行しクラウド化が加速している中で、今やクラウド活用は企業の成長に欠かせない「インフラ」になっています。その一方で、急増するサイバー攻撃によりクラウド環境のセキュリティ対策の必要性がますます高まっています。 事業成長の拡大を図る中で、クラウドセキュリティ対策は多くの企業にとって避けては通れないどころか”最重要優先項目”となってきています。 そこで、本イベントでは、AWSに精通したメンバーによる「事業の成長に繋げるためのこれからのAWS セキュリティ」をテーマに語ります。 異なった企業規模・業種・事業フェーズにおいて、それぞれどのような優先順位・組織体制でセキュリティ強化に対応していったのか、AWSをどのように活用したのか、直面した壁や課題をどう乗り越えていったのかなど実際の事例をもとに赤裸々にお伝えいたします。 企業のミライに繋がるこれからのセキュリティを築いていくためのエキスパートたちのベストプラクティスを大公開! セキュリティ管理者、サービス・プロダクト開発を担当している方、IPOを目指している企業の方、AWSの構築や運用の担当している方などにお役に立てる情報が満載です。 ぜひこの機会にご参加ください!

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます