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  • 2021/07/27 掲載

「2021年版 エネルギー白書」要点まとめ、2050年カーボンニュートラルへの道筋は?

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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資源エネルギー庁は2021年6月、エネルギー政策基本法に基づく年次報告である「2021年版 エネルギー白書」を公開しました。本白書の発行は今年で18回目となります。本稿では300ページ超に及ぶ「2021年版 エネルギー白書」の中から、「第1部 エネルギーをめぐる状況と主な対策」の中の、「第2章 2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と取組」の内容をもとに、2050年カーボンニュートラルに向けた取組と課題について考察します。

執筆:東芝 福本 勲

執筆:東芝 福本 勲

東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス 代表
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRM、インダストリアルIoTなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。また、企業のデジタル化(DX)の支援/推進を行うコアコンセプト・テクノロジーなどのアドバイザーをつとめている。

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これからの日本のエネルギーを考える上で何が大切か。「エネルギー白書」から探る
(Photo/Getty Images)

エネルギーを巡る情勢の変化

 菅内閣総理大臣は2020年10月の臨時国会の所信表明演説において、日本が2050年までにカーボンニュートラル(ある人為的活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量になること)を目指すことを宣言しました。

 また、菅総理は2021年4月の地球温暖化対策推進本部および米国主催の気候変動サミットにおいて、2030年の温室効果ガス排出量を2013年度比46%に削減することを目指し、さらに50%に向けて挑戦を続けていくことを表明しました。

 それ以前の日本の温室効果ガス削減目標は、2030年度に2013年度比で26%削減するというものであり、これを「国が決定する貢献」(Nationally Determined Contribution: NDC)として2015年7月および2020年3月に国連に提出しています。

 また、今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現し、2050年までに温室効果ガスを80%削減することを「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」として2019年6月に国連に提出しています。

 菅総理の宣言は、これまでの温室効果ガス削減目標を大幅に引き上げるとともに、カーボンニュートラルの達成時期を大きく前倒しするものと言えます。


脱炭素化の潮流の加速

 パリ協定は、2015年12月に開催された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、2020年以降の温室効果ガス排出削減などのための新たな国際枠組みとして採択されました。各国は、温室効果ガス削減に向けたNDCを定め、またNDCとは別に、長期的な温室効果ガス低排出型の発展すべきための戦略(長期戦略)を作成し、通報するよう努力すべきとされています。

 各国は国家レベルの約束であるNDCや長期戦略に基づき、温室効果ガスの削減に向けたさまざまな取組を実施していますが、民間でも金融業やIT産業を筆頭に脱炭素化に向けた取組が加速しています。

 たとえば、金融機関や投資家が投融資を行う際には、収益性や回収可能性などさまざまな観点を考慮・評価して判断を行っていますが、その評価軸の1つとして、気候変動・脱炭素化への対応が重視され始めています。具体的な動きとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資などを通じた環境分野への資金供給量の増大と、投資戦略多角化を通じた投融資先への関与の積極化が挙げられます。

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地域別のESG資産保有残高
(出典:2021年版エネルギー白書(資源エネルギー庁)第121-1-1)

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投資戦略別のESG投資額
(出典:2021年版エネルギー白書(資源エネルギー庁)第121-1-3)

民間企業の脱炭素化の動き

 金融機関や投資家が脱炭素化に向けた取組を進め、エンゲージメントを通じて、企業に対して気候変動リスクへの対応などを求める中、IT企業が先導し、製造業なども追随する形で企業の脱炭素化の取組が近年加速しています。

 中でも日本企業は脱炭素化に積極的に取り組んでおり、気候変動関連の情報開示を行う枠組みであるTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の賛同機関数は日本が世界で第1位、脱炭素化に向けた中長期の目標設定を行うSBT(Science Based Target)の認定企業数は米国に次ぐ第2位(アジアでは首位)、事業活動に必要な電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指すRE100(Renewable Energy 100)の参加企業数も米国に次ぐ第2位(アジアでは首位)となっています。

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TCFD、SBT、RE100の賛同機関数(国別)
(出典:2021年版エネルギー白書(資源エネルギー庁)第121-1-6)

 自社が排出する温室効果ガスの削減や自社で使用するエネルギーに係る温室効果ガスの削減だけではなく、サプライチェーン全体での脱炭素化を図る企業も増加しています。

 たとえばアップルは、2030年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げ、サプライヤーに対して省エネルギー化や再生可能エネルギーの利用を求めています。このようにサプライチェーンの脱炭素化を目指す企業との取引関係を継続するためには、日本企業も脱炭素化を進めなければならないといった状況が今後増えていくことが想定されます。

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脱炭素化をサプライヤーに求めている企業の例
(出典:2021年版エネルギー白書(資源エネルギー庁)第121-1-7)

【次ページ】海外における脱炭素化の動向

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