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  • 2022/01/28

トヨタは2月も減産…半導体不足いつまで続く?なぜ米国は国産化の動きが鈍いのか

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

新型コロナで引き起こされた供給網の混乱を契機に、全世界で長引く半導体不足。日本ではトヨタが2月の生産計画で減産を発表するなど、依然として各国の基幹産業を圧迫している。こうした状況を受け、日本を含めた主要国は「半導体主権」を旗印とした自国生産へとかじを切った。特に、米国では台湾半導体製造大手のTSMC(台湾積体電路製造)や韓国のサムスン電子の誘致に成功している。しかし、米国内では半導体生産大国だった頃の開発力や市場シェアを回復するまでの道は容易ではないと指摘されている。半導体産業の再興に何が障害となっているのか。

在米ジャーナリスト 岩田 太郎

在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

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トヨタは1月に続き、2月の生産計画でも半導体不足を理由に減産することを発表。自動車をはじめとした基幹産業への影響はいまだ大きい
(写真:KURITA KAKU/GAMMA/アフロ)


半導体国産化が加速、主要国の動きは?

 「国際戦略物資」となった半導体の自国内生産を目指す米国による動きは、欧州連合(EU)や日本、さらには中国における半導体の自給自足という目標設定や実行と密接に関連している。その世界的な背景から見ていこう。

 まず、EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は、「半導体製造の自主権を握ることが、域内の包括的デジタル戦略の鍵を握る」と訴え、2022年中に半導体の自給に向けた欧州半導体法を成立させると意気込む。「半導体の設計から製造能力に至るまでバリューチェーン全体での欧州のシェアが縮小してきた」との反省に立ち、自給を強固なものにすべく「製造をはじめとする半導体エコシステムの構築を目指す」法制化に乗り出す。

 具体的には、ベルギー・フランス・ドイツなどの研究機関による半導体研究をベースに包括的な生産戦略を構築。「メガファブ(大規模工場)」の立ち上げと域内サプライチェーンのサポートを組み合わせながら、域内国協力・提携を強化させる内容だとされる。ただし、戦略資金調達のレベルや生産スケジュールなどに関する詳細は未定だ。

 一方、往年の半導体大国であった日本は、熊本県菊陽町に台湾のTSMCがソニーグループと共同で月産4.5万枚の22~28nm汎用のロジック半導体を製造する工場を誘致する。主要産地である台湾の有事想定も含め、「経済安全保障の点から半導体のサプライチェーンの確保が重要」との観点に立ち、日本政府が建設資金の約半額に相当する4000億円の補助金を拠出する。

 日本の動きは、最先端半導体の開発から製造・サプライチェーンまでを包括的に強化するEUの計画と比較すれば、大いに見劣りする。だが、壮大で野心的なプロジェクトが成功するとは限らない。

 1月10日付の米『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙では、中国政府が過去3年間に14nm未満の製品を量産、さらに7nmの超微細工程までを手掛けるスタートアップ6社の国産化計画に、少なくとも23億ドル(約2663億円)の補助金を投じたが、商業生産はことごとく失敗に終わったと報じた。主な理由は技術熟練度の低さや、最先端製品により莫大な投資が必要であることを理解していなかったことだとされる。

 さらに、市場分析や市場予測を手掛ける米IDC(International Data Corporation)のマリオ・モラレス副社長は1月19日に米経済専門局CNBCの番組で、「中国は国内半導体産業に数十億ドル単位で投資を行っているが、最先端の台湾と韓国からはおそらく3、4世代遅れている。中国が追いつくためにはあと10年以上が必要であり、最新鋭のソフトウェアと製造機器を入手しなくてはならない。それに加えて、利益を出すために十分な量の最先端製品を買ってくれる欧米の顧客も必要であり、道のりは長い」との見立てを披露した。

米国も6兆円法案の上院通過など順調に進展

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米国は往時の半導体生産大国を復活できるのか
(Photo/Getty Images)
 では、注目される米国の半導体自給に向けた計画は、どのような内容なのだろうか。米半導体業界で35年以上の実務経験を持つマーク・グラナハン氏は2021年11月24日付の米テックサイト『VentureBeat』に寄稿し、「30年前には米国が世界の半導体の40%を生産していたが、今では12%にすぎない」と指摘。また、経営コンサルティング企業のA.T.カーニーによれば、過去10年間で米国の世界における半導体製造能力のシェアは73%失われた。

 こうした中、パンデミックのような予期せぬイベントによる物流の混乱で、米国内で供給不足が発生するのは必然であったともいえる。そのため米バイデン政権は、2021年1月の発足後からほんの1カ月後の2月24日、「連邦政府による370億ドル(約4兆2632億円)の投資を行い、半導体の供給不足に対応するための道を開く」との大統領令を発出した。これにより、半導体の自給が米「産業政策」の中心に据えられたのである。

 バイデン政権の新方針は、超党派の支持を得るだけでなく、米半導体業界や米自動車業界などからの広範なサポートを得るに至った。2021年6月には、大統領令の内容を拡充・発展させる形で、520億ドル(約5兆9918億円)の連邦資金を産業計画、国内半導体生産の経済的インセンティブ、および一般的な新興技術研究に投資する「米国イノベーション・競争法(USICA)」が米上院を通過した。

 国家計画の大枠である同法案の一部として、別途立案された「米国半導体再興法(CHIPS for America Act)」では、今なお大幅な不足が続く自動車向け製品を含めた半導体の米国内生産を促進する。国内供給網の強化を謳い、自動車メーカーや部品サプライヤーにとって特に重要な「成熟ノード(mature node)」半導体の生産促進に、前述の連邦補助金520億ドルのうち20億ドル(約2305億円)を充てる。また、EUの欧州半導体法と同様に、研究開発にも補助金が支給される。

 翻って、半導体の米国内生産の具体的な進展としては、2020年5月にトランプ前政権からの誘致を受け、TSMCがアリゾナ州に月産2万枚の準最新鋭5nmの工場を建設することを決定。さらに政権交代後の2021年11月には、サムスン電子がテキサス州に170億ドル(約1兆9000億円)を投じて工場を建設、最新鋭3nmの次世代品半導体を生産することを発表した。2022年前半の着工と、2024年後半の操業開始を見込んでいる。

 こうした中、米インテルは1月21日、200億ドル(約2兆3000億円)を投じ、米中西部オハイオ州に5nm、7nm、10nm半導体の新工場を建設し、2025年に自社製品の製造と受託生産を稼働させると発表した。将来的には3nmの最新鋭半導体の生産も視野に入れており、具体性のある米半導体国産化の動きとして大いに注目を浴びている。

【次ページ】工場を誘致できても国産化にはほど遠い裏事情

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