• 2022/06/09 掲載

LGBTI施策の世界標準「LGBTI企業行動基準」とは? 企業が失敗しないための基本5カ条(2/3)

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国連LGBTI企業行動基準の狙い

 国連LGBTI企業行動基準は、近年特に重要性が高まっている「ビジネスと人権」に関する国連そして企業の取り組みの大きな流れの一環として位置づけられるものであって、LGBTI当事者のみに適用される特殊な基準として策定されたものではありません。

 国連LGBTI企業行動基準策定の直接のきっかけは、2016年、ゼイド・ラアド・アル・フセイン国連人権高等弁務官(当時)がダボスで行われた世界経済フォーラムで、著名企業のリーダーや活動家に呼びかけたことに始まります。

 ゼイド国連人権高等弁務官はLGBTIの人々への差別について、「企業がダイバーシティ&インクルージョンの内部ポリシーを制定することはもとより重要であるが、企業内施策にとどまらず、差別を解消するためにとり得る、またとらなくてはいけない、実践的な施策について話し合うべき時期にきている」と企業のリーダーたちそして活動家に訴えました。

 国連LGBTI企業行動基準は、このダボス会議でのグローバルビジネスリーダーたちの話し合いを重要なきっかけに、OHCHRが欧州、アフリカ、アジア、そして米国で、多くの企業と地域を代表するコミュニティー団体と重ねてきた対話を踏まえて、生まれたものです。

 また、国連LGBTI企業行動基準は以下のとおり、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」そして「グローバル・コンパクト」に立脚するものです。国連の人権にかかわる宣言などには、特に21世紀になってからは、ビジネスや企業が果たすべき重要かつクリティカルな役割が必ず念頭に置かれています。

  • 1948年12月:未曾有の戦禍の経験が、初めて人権保障の目標や基準を国際的にうたった世界人権宣言に結実。

  • 2000年7月:サステイナビリティイニシアチブとして4分野(人権、労働、環境、不販防止)10原則をうたった「国連グローバル・コンパクト」が発足。

  • 2011年3月:国連人権理事会が「ビジネスと人権に関する指導原則」を承認。

  • 2017年9月:以上の流れの中で、国連LGBTI企業行動基準「LGBTIの人々に対する差別への取組みー企業のための行動基準」が策定。

判断が難しい局面、他社はどうした? イケアなど対応事例

 国連LGBTI企業行動基準の大変重要な特徴は、企業による差別の解消に向けた取り組みが画餅に帰さないよう、実践的かつ現実的な施策を示すことを意識して策定されていることです。

 たとえば、事業を展開する国の法律が性的指向や性自認の自由を認めていなかったり、ましてや違法としている場合に、企業は難しい判断を迫られることになります。国連LGBTI企業行動基準は企業がそのような現実に直面することを踏まえ、単なる理想論を掲げるにとどまらず、そのような局面においても企業にできることがあることを示すために参考となる対応事例を示しています。

 このような対応事例は、国連LGBTI企業行動基準の補足資料や、OHCHRと連携する世界経済フォーラムの「LGBTI平等のためのグローバル・パートナーシップ(Partnership for Global LGBTI Equality、以下「PGLE」)」のウェブサイトで参照することができます。

 このような対応事例として、たとえば以下のような事例が国連LGBTI企業行動基準の補足資料に紹介されています。

・イケアの事例
 2013年、スウェーデンの家具メーカー、イケアグループはロシアの反ゲイ・プロパガンダ法を踏まえ、ロシアのオンライン雑誌から同性カップルとその赤ちゃんに関する記事を削除しました。

 このような措置をとったことについて、イケアグループは顧客や人権擁護団体、LGBTIアクティビスト、その他の関係者から批判を浴び、その結果同社はLGBT+インクルージョンに対するそのアプローチを見直すきっかけになりました。
・ペイパルやドイツ銀行の事例
 2016年、米国のノースカロライナ州がLGBTI当事者や同性カップルに与えていた保護や権利を撤回する法令を制定したことを受け、ペイパルやドイツ銀行は同州での事業展開計画を取りやめました。その結果、同州の雇用の機会が減り経済的打撃を受けたため、同州は当該法令の大半を撤回しました。

 PGLEのウェブサイトには多くの対応事例、ベストプラクティスが紹介されています。「1.人権を尊重する」、「2.差別をなくす」、「3.支援を提供する」、「5.社会で行動を起こす」という各行動基準について、2022年3月現在、複数の企業のD&IポリシーやLGBTIの人権保護に関するポリシーやCEOメッセージ例を参照することができます。

 ビジネスと人権に関する企業の取り組みが一層進展している近時において、国連LGBTI企業行動基準に賛同している先進的な企業などの取り組みは、掲載されている以外にもさらに進展しているものと予想されます。

【次ページ】世界で賛同企業が広がる一方、日本の賛同企業は5社のみ

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