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  • 2022/06/09

LGBTI施策の世界標準「LGBTI企業行動基準」とは? 企業が失敗しないための基本5カ条

ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が浸透しつつある今、その重要性・必要性は理解しつつも、どのように行動に反映したらよいか分からない企業も多いでしょう。実は、その指針として役立つ資料を2017年9月に国連が発表しています。「LGBTIの人々に対する差別への取組み 企業のための行動基準」(以下、国連LGBTI企業行動基準)は、現在360社以上の企業が賛同する国際的な指針です。本稿では、その概要や策定経緯、特徴、そして普及にあたっての取り組みを概観し、「国連LGBTI企業行動基準」の成果と課題を考察します。

LGBTとアライのための法律家ネットワーク 藤田直介、大島葉子

LGBTとアライのための法律家ネットワーク 藤田直介、大島葉子

藤田直介
LGBTとアライのための法律家ネットワーク(LLAN)共同代表及び共同創設者。早稲田大学法学部卒、米国ミシガン大学ロースクール法学修士。1987年弁護士登録(39期)。ゴールドマン・サックス証券株式会社法務部部長時代(2009年3月-2019年12月)部下のカミングアウトを受けたのをきっかけにLLANの活動を開始。現在年金積立金管理運用独立行政法人法務室長。2017年6月本団体の活動に関連して英フィナンシャル・タイムズ企業の法務部門に関する「最も革新的な法務責任者」部門を受賞。『法律家が教えるLGBTフレンドリーな職場づくりガイド』(2019年12月)編著。

大島葉子
LGBTとアライのための法律家ネットワーク理事。一橋大学法学部卒、東京大学大学院法学政治学研究科修士、米国ハーバードロースクール法学修士。1999年弁護士登録(51期)。国内法律事務所を経て米国ニューヨークにて米系法律事務所、東京と米国コネチカット州にてGEグループ会社勤務後、現在日本マイクロソフト株式会社執行役員政策渉外・法務本部長。

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国連LGBTI企業行動基準とは?
(Photo/Getty Images)


LGBTI当事者を取り巻く現実

 残念ながら、世界ではLGBTI(注1)への差別や不当な扱いがまだまだあるのが現実です。日本を除くG7では同性カップルの婚姻の自由(イタリアでは婚姻に準ずる法的保障)が認められるなど、確実に変化は起きていますが、2021年時点においても国連加盟国の69カ国では同性間の関係はいまだに刑罰対象であるという現実があります。

注1:レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、インターセックスの頭文字。「LGBTQ」や「LGBT+」などとも表現されるが、本稿では以降で紹介する「企業行動基準」に起用された表現「LGBTI」で統一する。

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G7諸国における、同性パートナーの関係に対する法的保障の有無

 また、LGBTI当事者に対するいじめや被害もあとをたちません。大阪市による2019年の調査では、自殺未遂を経験したLGBTI当事者は、当事者でない層と比較して、LGB(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル)が約6倍、T(トランスジェンダー)が約10倍という深刻な結果が出ています。


国連LGBTI企業行動基準とは? 概要を解説

 2017年9月、国際連合人権高等弁務官事務所(以下、OHCHR)が公表した「LGBTIの人々に対する差別への取組み 企業のための行動基準」(以下、国連LGBTI企業行動基準)は、そのような現実を変えるための企業の責任そして企業への期待を前提に、企業が職場そしてコミュニティー全体で差別に取り組むために実施できるまたは実施が期待される措置を5つの行動基準として定め、世界に発信しています。

 5つの行動基準は国連広報センターの概要資料がわかりやすくまとめていますので、詳細はそちらに譲りたいと思いますが、その概要は以下のとおりです。

どんな時でも
1.「人権を尊重する」

 LGBTI当事者の人権が尊重されるよう、企業は必要となる方針・規程を制定し、モニタリング・調査を行い、人権が尊重されていない実態があればその是正に取り組むよう努めるべきことについて定めます。

職場で
2.「差別をなくす」

 企業は、社員の採用、雇用条件、就業環境、福利厚生、プライバシー、ハラスメントへの対応について、性的指向、性自認、性表現、性的特徴による差別的取り扱いを行わないよう取り組むべきことについて定めます。

3.「支援を提供する」
 LGBTI当事者が安心して就業できる真にインクルーシブな職場環境・業務環境はいまだ実現していません。企業は、社員が尊厳をもって、またスティグマを抱えることなく業務に従事することができるよう、差別の解消を超えて、安心して就業することのできるインクルーシブな職場を実現するための支援を行うべきことについて定めます。

マーケットで
4.「他の人権侵害を防止する」

 企業は、取引先・顧客を、LGBTI当事者であることを理由として、差別しないよう努め、また、取引先などのビジネスパートナーがそのような差別的な取り扱いを行わないよう努める必要があることについて定めます。国連企業LGBTI行動基準は、企業がビジネスパートナーによる人権侵害への対応を怠ることにより、企業自身の信用が毀損(きそん)される可能性についても言及します。

コミュニティーで
5.「社会で行動を起こす」

 企業が事業を行う国において適切な法令・制度が整備されておらず、LGBTI当事者に対する人権侵害がある場合においても、地域社会・団体と緊密に協議・連携することによって、企業として行うことができる取り組みがあることを国連LGBTI企業行動基準は指摘しています。

【次ページ】国連LGBTI企業行動基準の狙い

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