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  • 2022/09/26 掲載

20年の歴史を誇るWindowsのバイブル、最新版がついに刊行

山市良のマイクロソフトEYE

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開発者や管理者、ITプロフェッショナルのためのWindowsのバイブルとして知られている「Inside Windows(現在のWindows Internals)」シリーズの最新版、『インサイドWindows 第7版 下』(日経BP)がついに刊行されました。日本語版の訳者である筆者より、第7版上を含め、本書の内容を少し紹介します。

執筆:フリーライター 山市 良

執筆:フリーライター 山市 良

IT 専門誌、Web 媒体を中心に執筆活動を行っているテクニカルライター。システムインテグレーター、IT 専門誌の編集者、地方の中堅企業のシステム管理者を経て、2008年にフリーランスに。雑誌やWebメディアに多数の記事を寄稿するほか、ITベンダー数社の技術文書 (ホワイトペーパー) の制作やユーザー事例取材なども行う。2008年10月よりMicrosoft MVP - Cloud and Datacenter Management(旧カテゴリ:Hyper-V)を毎年受賞。岩手県花巻市在住。
主な著書・訳書
『インサイドWindows 第7版 上』(訳書、日経BP社、2018年)
『Windows Sysinternals徹底解説 改定新版』(訳書、日経BP社、2017年)
『Windows Server 2016テクノロジ入門 完全版』(日経BP社、2016年)
『Windows Server 2012 R2テクノロジ入門』(日経BP社、2014年)
『Windows Server 2012テクノロジ入門』(日経BP社、2012年)
『Windows Server仮想化テクノロジ入門』(日経BP社、2011年)
『Windows Server 2008 R2テクノロジ入門』(日経BP社、2009年)
など


シリーズ20年の歴史でバイブルのような存在に

 Inside Windowsシリーズは、Windows NTの最初のバージョンであるWindows NT 3.1がリリースされる1年前に『Inside Windows NT』として第1版が刊行されました。 その後、新しい技術や機能が組み込まれるWindowsの新しいバージョンが出るたびに続版が書かれ続け、20年近くにわたって読み継がれてきました。表1に、第1版から最新の第7版までを一覧にしました。Windowsのアプリケーションやドライバーの開発者、システム管理者、およびITプロフェッショナルにとっては、バイブルのような存在だと思います。

画像
表1:Inside Windowsシリーズの歴史
(出典:著者作成)

 このシリーズの最新の第7版の前半(Part 1)は、Windows 10とWindows Server 2016を対象に2017年5月に刊行されました。OneCoreと呼ばれるWindows 10によるOS統合(PC、Phone、Xbox、Hololens、IoT)のタイミングは第7版を出す良い時機となりました。Windows 8/8.1とWindows Server 2012/2012 R2を対象とした版は作られなかったため、これらのOSをカバーするように多くの内容がアップデートされました。

 それから4年以上空け、ようやく、2021年10月(電子書籍版は9月)に後半(Part 2)が刊行され、ついに第7版として完結しました。Windows 11正式リリースの数日前のことです(そのためWindows 11の内容は含まれませんが、多くはWindows 11にも引き継がれています)。そして、その日本語訳がいよいよ2022年9月初めに刊行されました。

photo

・書名:インサイドWindows 第7版 下
・著者:Andrea Allievi、Alex Ionescu、Mark E. Russinovich、
 David A. Solomon、山内 和朗 訳
・定価:8,800円(税込)
・ページ数:960ページ
・出版社: 日経BP
・ISBN:978-4296080205
・発売日:2022年9月5日


 Inside Windowsシリーズの第3版以降は、ソースコードにアクセスできる“中の人”の視点(当時のDavid A. Solomon)と、外部の人によるリバースエンジニアリングの視点(当時のMark E. Russinovich、今は中の人、中は中でもMicrosoft Azureの最高技術責任者(CEO)という上の人)の両面から、Windowsの内部構造を解き明かしていくというスタイルで書かれてきました。それは第7版でも同様で、Part 1の主要な執筆者兼中の人であるPanel Yosifovichは、マイクロソフトの技術とツールを専門とする開発者であり、トレーナーでもあります。

 4年以上空いてしまった主な理由は、Part 2の執筆に専念できる中の人を見つける必要があったということですが、Part 2の主要な著者であるAndrea Allieviは、初めて真の中の人としてこのシリーズに加わりました。彼は、マイクロソフトのカーネルセキュリティコアチームのシニアコアOSエンジニアでもあります。

第7版の気になる内容は

 4年という間が空いたことで、Windowsの周辺環境は大きく変化しました。マイクロソフトはWindows 10ベース(Windows 10 Mobile)のPhoneデバイスから撤退する一方で、ARMベースのWindows 10(フルバージョン)をサポートするようになりました。

 2017年に発見され、2018年に公表されたサイドチャネルの脆弱性は、プロセッサの投機的実行機能をターゲットとしたもので、多くのシステムに影響するものでした。この種の脆弱性は、現在でも新たな亜種が発見され続けています。

 第6版の当時は登場したばかりだったHyper-Vは、その後、仮想化ベースのセキュリティ(Virtualization-Based Security、VBS)やハイパーバイザーによるコード整合性の強制(HyperVisor-Enforced Code Integrity、HVCI)、セキュアカーネル、仮想信頼モード(Virtual Secure Mode、VSM)などといったWindowsの高度なセキュリティ機能の基盤を提供するようになりました。そのため、Part 1の時に予定していたPart 2の章立てと内容は大きく変更され、これらの内容が広くカバーされ、そして詳細に解説されています。内容の完全性のため旧版からの内容も引き継ぎ、更新されていますが、一部は簡略化されています(x86アドレス空間やBIOSベースのシステムのブートプロセスなど)。

 表2に、第7版の章と第7版で加えられた新しい内容をキーワードで示します。また、第6版の章との対応付けも行いました。第6版のネットワーキングとクラッシュダンプの解析の章については第7版では削除されています(一部の内容は別の章に残されています)。第7版で簡素化された内容や削除された内容を知りたければ、第6版に当たってください。紙の書籍の入手はもう困難かもしれませんが、電子書籍版であれば購入可能です。

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表2:第7版の章立てと新たに追加されたトピック
(出典:筆者作成)

【次ページ】内部仕様は将来的に変更の場合もあるので注意

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