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  • 2022/09/27 掲載

「日本企業のDXは進捗している」、IPA謹製「自己診断結果分析レポート」の中身

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DX(デジタル変革)推進の成熟度がじわじわと高まっている。情報処理推進機構(IPA)は8月17日、経産省の「DX推進指標」を各企業が自己診断した結果から「DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート」を公開した。「成熟度レベル3」以上の先行企業の割合は、2年前の4倍に相当する2割弱に達した。IPA担当者が「DXは進捗している」と語るなど、DXは実現の段階に入ったという。同レポートが経営とITの視点からのDX推進の現状を解説する。

執筆:ITジャーナリスト 田中克己

執筆:ITジャーナリスト 田中克己

日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長、主任編集委員などを歴任し、2010年1月からフリーのIT産業ジャーナリストとして活動を始める。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)、2012年度から一般社団法人ITビジネス研究会代表理事を務めるなど、40年にわたりIT産業の動向をウォッチする。主な著書に「IT産業再生の針路」「IT産業崩壊の危機」(ともに日経BP社)がある。

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DX 推進指標 自己診断結果 分析レポートの中身とは?
(出典:IPA )

2021年は19年比4倍増の「先行企業」

 日本企業が取り組むDX(デジタル変革)の現状を把握するために作成された「DX推進指標自己診断結果分析レポート」。レポートの2021年版によると、全体に占める先行企業の割合は2019年の4.4%、2020年の8.5%、そして2021年に17.7%と増加している。

 調査は、経営視点19項目とIT視点16項目について、それぞれ現在値と目標値を回答したものから算定する。回答結果の平均指標が「全社戦略に基づく部門横断的に実践している」というレベル3以上の先行企業が2年前の4倍になったのだ。

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「DX推進指標」の構成
(出典:「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2021年版)」独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(2022年8月)表1-1)

 DXの取り組み段階を示す成熟度は、「未着手」(レベル0)から「デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことができる」(レベル5)の6段階からなるが、先行企業の増加は、産業構造の変革や新しいビジネスの創出への一歩踏み出したことを意味する。

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成熟度レベルの基本的な考え方
(出典:IPA DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート 2021年版 2022.8)

先行企業の特徴は何か?

 その先行企業に、いくつかの特徴がみられる。1つはレベル3未満の非先行企業に比べて、「経営視点の指標がIT視点の指標より高いこと」である。

 差が大きい指標が2つある。

 1つは「KPIに即した投資意思決定や予算配分の仕組みが構築できているか」という項目の「投資意思決定、予算配分」(先行企業3.55、非先行企業1.33、以降数字はレベルを示す)、「ITシステムができたかどうかではなく、ビジネスがうまくいったかどうかで評価する仕組みになっているか」の「IT投資の評価」(同3.62、1.44)といった、「投資や評価」に関する指標だ。

 もう1つは、「DX推進に必要な人材の育成・確保に向けた取り組みが行われているか」の「人材育成・確保」(同3.36、1.33)、「技術に精通した人材と業務に精通した人材が融合してDXに取り組む仕組みが整えられているか」の「人材の融合」(同3.37、1.35)など「人材」に関する指標である。

 また、先行企業は「既存事業がこれまでの競合とは異なる企業に侵食されるディスラプションが起こり、衰退していく」との認識の下、デジタルを武器に既存市場開拓を急速に推し進める破壊者に対する危機感を強めている。

 成熟度の指標でみると、「将来におけるディスラプションに対する危機感と、なぜビジョンの実現が必要かについて、社内外で共有できているか」の「危機感とビジョン実現の必要性の共有」(同3.87、1.91)が2番目に高い。

 ちなみに1番高いのは「経営トップのコミットメント」(ビジョンの実現に向けて、ビジネスモデルや業務プロセス、企業文化を変革するために、組織整備、人材・予算の配分、プロジェクト管理や人事評価の見直しなどの仕組みが経営のリーダーシップの下、明確化され、実践されているか?へ取り組んでいる指数)である。

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分析結果 先行企業の特徴
(出典:IPA DX推進指標 自己診断結果 分析レポート 2021年版概要版 2022.8)

「全企業」の平均をみてわかること

 全指標の平均値は、2020年の1.60から2021年に1.95と0.35ポイント向上している。また全企業で「現在値の平均が高い項目」が5つある。

(1)「DX推進に向け、データを活用した事業展開を支える基盤」の「プライバシー/データセキュリティ」(2.56)、(2)「危機感とビジョン実現の必要性の共有」(2.25)、(3)「DXを通じた顧客視点での価値創出に向け、ビジネスモデルや業務プロセス、企業文化の改革に対して、現場の抵抗を抑えつつ、経営者自らがリーダーシップを発揮して取り組んでいる」の「事業への落とし込み」(2.24)、(4)「人材確保」(2.24)、(5)「IT資産の分析・評価」(2.20)だ。


 「IT資産の分析・評価」の高さは、多くの企業がITシステムの全体像を把握し、データ活用へ進み始めたように解釈できるという。

 一方、全企業を平均して成熟度の低い指標は、「事業部門における人材」(1.56)、「技術を支える人材」(1.63)、「人材育成・確保」(1.69)などで、人材育成に課題が残ると思われる。

 半面、「IT視点指標」での「人材確保」の領域が(2.24)と高いのは、IT部門とその体制が整っているからだろうが、「能力などのプロファイルや目標の整備が追い付いていない」など人材戦略の課題も垣間見える。経営指標の「評価」(1.16)が低いのは、DXによる成果の評価に関する戦略の整備が十分ではない可能性があるという。

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分析結果 全体傾向(経営面)
(出典:IPA DX推進指標 自己診断結果 分析レポート 2021年版概要版 2022.8)
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分析結果 全体傾向(IT面)
(出典:IPA DX推進指標 自己診断結果 分析レポート 2021年版概要版 2022.8)

【次ページ】PoCから実装への過渡期に

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