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  • 2022/12/06 掲載

RX(ロボティクス・トランスフォーメーション)時代のロボット戦略、今まで通りはもう無意味?メーカーに必要な「意識改革」とは

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業務最適化のサイクルを回し、そのために組織や業務の改革を行って新しい価値へとつなげることがデジタル・トランスフォーメーション(DX)の核心だ。ロボットを活用するDXを「ロボティクス・トランスフォーメーション(RX)」という。ハードウェアの塊であるロボットの世界においてもソフトウェアやサービス、ビジネスモデルの比重が増しつつある時代、RXを進めていくにはまずはロボットメーカーも意識を変える必要がある。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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RXを進めるには、メーカーの意識改革も重要だ
(Photo/Getty Images)

ソフトウェアが主役の時代

 先日、ある企業のロボットのプレスリリース文を読んでいて違和感を覚えた。「なんだろう、どこに原因があるのだろう」と思って読み直すと、あることに気がついた。ソフトウェアやデータ処理の話が、ほとんど書かれていなかった。

 ロボットのスペックの話はわかる。だが、そのロボットが取得するデータをどう処理するのか、そのデータを使ったビジネスの話がまったく触れられていなかった。今時、これは珍しい。たとえ自社でそこまでやり切らなくても、何かしらは触れられていることが多いからだ。

 ロボットはハードウェアである。それは間違いない。だが現在のロボットは、ハードウェアだけではない。単体のハードウェアだけでは、少なくともビジネスでは成功しづらい。

 ハードウェアを動かすためのソフトウェアはもちろん必要だ。だが今のロボットは、単にそのハードウェアが動くことだけがすべてではない。

 ロボットがあまり身近ではないという人であっても、スマートフォンのサービスを思い浮かべてもらえるとわかるのではないだろうか。いまのハードウェアは、それだけで動作するのではなく、ほぼ常に通信を行い、クラウド側と連携しながら動作するものになっている。それがもう自然だと言ってもいい。無線ネットワーク経由のソフトウェアアップデート、いわゆるOTA(Over The Air)も当然のものとして受け入れられている。

 スマートフォンだけではない。クルマもOTAでソフトウェアをアップデートし、機能が向上する時代だ。わざわざ販売代理店に行く必要はない。自宅のWi-Fiにつなげておけば、勝手にアップデートされるのだ。テスラが有名だが、OTAでのソフトウェアアップデートは他のメーカーからも提供されている。

 アップデートと同時に、メーカー側も動作ログを取得している。ユーザーの使い方の把握はもちろん、メンテナンスにも用いられる。さらにユーザーが常に身に着けているデバイスであるスマートフォン上のアプリも提供することで、各メーカーはユーザーとの接触機会を増やし、ブランド定着と継続利用を促している。もう、そういう時代だ。

メーカー側もRXが必要に?

 要するに、いわゆる「ソフトウェア・ファースト」の時代が来ているのだが、ロボットは先進的な機械でありながら保守的な業界が使っていることが多いせいか、まだまだハードウェア偏重である。無論、ロボットはハードウェアであり、しっかりしたハードウェアでないと求められる機能は発揮できない。特にこれまでの産業用ロボットの世界はそれが第一だったので、当然ではある。

 また、以前は工場内の機械を外部ネットワークにつなぐなどは本当に論外で、話にもならなかった。だが今は、工場内の機器の連続的な稼働状況や人の作業状況を把握して分析する技術であるIoTのように、構内ネットワークやオンプレミスのサーバはもちろん、外部のリソースも使って現場改善のサイクルを回す=DX(デジタルトランスフォーメーション)が推奨される時代になっている。変種変量で変化を続ける現場での情報の一元化、効率的な生産やリアルタイム受注生産、エネルギーの最適化、保守点検サービスなどなどが求められている。「機械は入れれば、あとは顧客にお任せ」という商売もまだあるが、それは頭打ちになりつつある。

 画像処理に代表されるAIや、ロボットも例外ではない。ロボットを動かした結果、得られるデータをQCD向上のためにどう使うか。ロボットと人をどう組み合わせて使うと最適なのか。実際の稼働データに基づいた改善の支援を行うところに稼ぐタネがある。単にハードウェアの機能だけで差別化するのではなく、動かした結果、あるいは動かす前であってもシミュレーションで工程を事前検証して考えられる範囲での最適解を顧客に提示することで、顧客に求められる、いや「求められ続ける」ようにする。継続収益、長期的収益を目指す、いわゆるリカーリングビジネスである。

 そこで稼げないのはもったいない。ハードウェアの良さはもちろん大事だが、トータルでの「使い勝手のよさ」は単にハードウェアだけで実現できるわけではない。自動化技術に取り組む分野も従来よりも広がりつつある。自動化機器に不慣れなユーザーを対象にするなら、なおさら導入モデルや継続利用のための新しいビジネスモデルも重要になってくる。

 ロボットによる事業やビジネスモデルの変革を「RX(ロボティクス・トランスフォーメーション)」というが、RXが求められているのは顧客だけではない。ロボットメーカー側もRXしないといけないのだ。でないとこれからは生き残りが難しくなると思う。時代が先へ進んでいるのに同じことをやり続けるのは後ろへ下がっているのと同じだ。

【次ページ】ロボットは新サービス実現のための「ツール」に

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