• 会員限定
  • 2022/12/23 掲載

「無人でガラガラ」も多数、それでも「メタバース時代はやってくる」と言える理由

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
いいね!でマイページに保存して見返すことができます。
メタバース(仮想空間)が注目を集める一方で、その実現には、さまざまな技術的・ビジネス的課題があり、その解決にはまだ時間がかかりそうだ。とはいえ、メタバース自体が将来的に大きな価値を持つことは間違いなく、いくつものパートに分かれながら、順に実現されていくだろう。「気がついてみると『メタバース的な概念とともに暮らす』のが当たり前の時代がやってきます」と指摘するのは、『メタバース×ビジネス革命』を上梓したITジャーナリストの西田 宗千佳氏だ。メタバースはどのような形で社会に受け入れられていくのか。スクウェア・エニックスの橋本真司氏や元gumiの國光宏尚氏への取材などに基づき、西田氏が解説する。
執筆:西田 宗千佳
画像
話題を集めるメタバース空間でも「普段はガラガラ」ということが少なくない
(Photo/Getty Images)

人のいないメタバース

photo
『メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略』
画像をクリックすると購入ページに移動します
 現在の世の中には、すでに多数の「メタバース」を冠するサービスがある。

 だが、このサービスたちすべてが人であふれているか、というとそうではない。むしろ、ある一つのイベントのために作られるメタバースの場合、そのイベント時のような特定のタイミングを除いて、あまり人がいないことも多い。確かめるのは簡単だ。いくつかのメタバースに実際に足を運んでみればいい。そこが実際の街と同じように、多数の人(アバター)であふれている姿を見ることは、あまりない。単にタイミングの問題であることも多いが、筆者には、特に自治体と組んで作った「バーチャル都市」には、あまり人の姿を見かけない……という印象が強い。

 冷静に考えてみればわかることだ。

 メタバースやVRなどの話をいったん忘れ、リアルで日常訪れる街や旅行を思い出していただきたい。行ったことのない場所を訪れるのは楽しいことだ。面白いイベントなどが開催されていればなおさらだ。しかし当然ながら、宣伝されているからといって、そこに全員が足を運ぶわけではない。

 現実の都市や観光地では毎日観光客の奪い合いをしている。その中に、メタバースが割り込んでいくのは簡単なことではない。家から移動しなくていい、という利点はあっても、IT機器が必要でサービスへの登録も必須、という制約がある。そのため現状なかなか、「遊びに行く場所としてメタバースを選ぶ」気分にはならない。さらには、そこでどれだけ滞在するのか、という話もある。場所間の移動を簡単にして快適にしていくと、その場で滞在する時間は短くなる。そうすると「にぎわい」の演出はさらに難しくなる。

メタバースに必ず付きまとうジレンマ

 サーバーの負荷を考えると「にぎわい」はマイナスだ。だが、現実のようなインパクトを求めるなら「にぎわい」は必要……というジレンマが、メタバースには必ず付きまとう。

 そう考えると、ある意味「一見さん」向けにメタバースを作ることの難しさが明確に見えてくる。少ない回数しか訪れない人たち向けに、3Dのデータとサーバ運用のコストを投下するだけのリターンがあるのか、という計算が必須になるのだ。

画像
人々が多く集まるとそれだけシステムへの負荷も高くなる
(Photo/Getty Images)

 そうしたデータを作ることも、メタバースを運用することも、それらはビジネスとしてお金を生むが、最終的に、観光・物販・広告などのビジネスにつながらなければ、短期的なもので終わる。巷で「メタバースは所詮流行り物にすぎない」という見方があるのはこのためだ。

 現状のメタバース系サービスでは、日々の利用者は「多くても数万人単位」だとされている。数としては小さなものではないが、高い収益性が求められ、開発にも運営にもコストがかかるネットワークサービスとしては、決して大きなものでもない。市場が期待しているのはさらに1桁、2桁多い数のはずだ。

どのくらい人が集まるのかわからない

まだビジネスの可能性がはっきりしない

 そんな疑念を抱かれているのは、何もスタートアップ企業だけではない。メタバース事業に世界で一番お金をかけ、世界で一番研究に力を入れているMeta自身が、そうした疑念に直面している状態だ。

FF14はなぜこれほどヒットしたのか?

 ただ、そんな不安があることは、現在メタバース上でビジネスを「本気で」やっている人々なら理解しているだろう。だからこそ、さまざまな企業がこぞってコミュニケーションの価値を上げたり、魅力的で使いやすいHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を用意したりと、いろいろな方向から開発をし、毎日使ってもらえるサービスを構築しようとしている。

 メタバースを謳うサービスが人集めに苦戦する中で、「メタバース的」要素を持ったサービスの中には、圧倒的なユーザー数を集め、毎日利用する人の多いものもある。ネットワークゲームだ。

 たとえば、スクウェア・エニックスが運営する大規模ネットワークRPGである「ファイナルファンタジーXIV」(以下FF14)は、全世界で累計プレイヤー数が2700万人を超え、世界最大級のネットワークゲームの1つになっている。毎日100万人以上がFF14の世界を訪れ、ゲーム自体やコミュニケーションを楽しんでいるという。

 では、ヒットするネットワークRPGはなぜここまで大きな存在になるのだろうか?

 2022年3月までスクウェア・エニックスに在籍し、2021年まではファイナルファンタジーシリーズのブランドマネージャーも担当していた橋本真司氏は、FF14がヒットした理由は「シンプルなこと」と話す。

【次ページ】ゲームが持つ吸引力からコミュニティを広げる
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます