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- 2023/02/17 掲載
空飛ぶクルマとは何か?「ヘリコプターとの違い」「機体の種類」をわかりやすく解説
空飛ぶクルマとは何か?
空飛ぶクルマとは、電気により自動で空を飛び、垂直離着陸が可能な飛行機とドローンの間に位置する新たなモビリティを指し、正式には「電動垂直離発着型無操縦者航空機(eVTOL:electric Vertical Take-Off and Landing)」と呼ばれる。空飛ぶクルマと呼ばれることが多いが、現在では、車道と空の双方を走行する機体というよりは空の移動を中心に据えた検討が進んでおり、「クルマ」ではなく航空機として分類されている。単に空飛ぶクルマと呼ばれるだけでなく、eVTOL、Flying car、UAM(Urban Air Mobility)などとも呼ばれることがある。
空飛ぶクルマの種類
形態としては、「翼が回転機(マルチコプター)のタイプ」「固定翼タイプ」に大きく分かれる。下図が空飛ぶクルマの機体の一例だ。日本において大阪万博に向けて定期運航が発表されたほか、欧州でパリ五輪に向けて整備が進むなど市場創出に向けた動きが活発化している。
ヘリコプターとの違いは?空飛ぶクルマのメリット
エンジンで動くヘリコプターとの比較では下記の点が特徴となる。(1) | 電動・部品数が少ない(機体コストと整備費用の低下) |
(2) | 騒音の軽減(社会受容性の向上) |
(3) | 自律飛行・遠隔操縦など自動で将来的にパイロットレスとなる(人件費・運用コストの低減) |
(4) | 垂直離着陸(陸のインフラに制約されず小スペースで乗り降りできる) |
空飛ぶクルマは、ヘリコプターと比べて経済性・静粛性・環境性が高く、新たな都市航空交通(Urban Air Mobility)として期待されている。今後、すでに市場が形成されているヘリコプターとともに、併用・補完する形で空飛ぶクルマが普及していくことが想定される。
空飛ぶクルマに期待されている役割
空飛ぶクルマについては、2018年8月より経済産業省・国土交通省が「空の移動革命に向けた官民協議会」を立ち上げ、産学官連携のもと議論が進められてきた。2025年の大阪・関西万博や、その後の都市部での“次世代空モビリティ(Advanced Air Mobility)”としての活用のみならず、過疎・山間部・離島などの地域の交通手段や災害時の物流・交通手段としての社会実装を目指している。現在、産官学で密接なコミュニケーションのもと、2023年を目標に機体の安全基準、操縦者の技能証明、運航の安全基準をはじめとする制度の整備が進められている。
直近、官民協議会が改訂した「空の移動革命に向けたロードマップ」によれば、2025年の大阪・関西万博を起点に空飛ぶクルマの実運用や商用運航を大きく展開していく方針が盛り込まれている。機体が高価であることから、すでに個人所有の航空機市場が形成されている米国を除き、個人所有ではなくサービス企業が所有する形で運航がなされることが想定されている。
そうした文脈の中で、空飛ぶクルマで想定されているユースケースとして、一例ではあるが下記などの方向性が議論されている。
(1)レジャー観光
交通手段が限られる観光地への移動や、観光地でのレジャーやエンタメを目的とした遊覧飛行など。観光の高付加価値化や、富裕層インバウンド観光客への提案などにつながることが期待される。
(2)空飛ぶタクシー
渋滞を回避した高層ビルの屋上同士を結ぶ移動、空港やターミナル駅からの二次交通など。また、都市間アクセスや、交通空白地帯などを結ぶ新しい移動手段。世界中で深刻な課題となっている渋滞への対策として期待される。同様に、本社と工場など複数拠点を持つ企業の拠点間移動に活用するなどのビジネス用途も期待される。
(3)医療・救急医療
交通状況に到着時間が左右されがちな救急車両と空飛ぶクルマを併用すれば、到着時間を大幅に短縮することが可能になる。それにより救急時・災害時などの人命救出が可能となる割合が向上する。機体・運用コストの負荷が大きいドクターヘリとの共用・補完が進むことが期待される。
(4)防災・災害対応
台風・地震などの災害の発生により生活道路が遮断された場合における、迅速な救助活動や物資輸送などに期待される。
(5)山間部・島嶼部における移動インフラ
既存の移動インフラが整っていない山間部・島嶼部における移動インフラとしての機能を果たす。
日本における空飛ぶクルマの進展においては大阪・関西万博が期待されることが大きい。すでに2025年の大阪・関西万博において、空飛ぶクルマの定期運航が発表されている。政府・大阪府・大阪市としても2025年をマイルストーンとして急速に整備が進められている。
なお、万博のコンセプトは未来社会の実験場としての「People's Living Lab」を掲げており、未来社会のショーケースとして空飛ぶクルマなどの先進技術を掲げている。場所と時期が決まっており、そこをマイルストーンに議論が活発化する土台は大きなドライバーとなっている。
欧州では2024年パリ五輪を目指した取り組みが進むが、それに伍する形で日本において議論が進んでいる。それとともに万博後の実ビジネスへの展開をいかに行っていくのかが鍵となる。
【次ページ】空飛ぶクルマ、米国・欧州の最新状況を解説
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