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  • 2006/04/11 掲載

IT活用が決め手となる全社ブランド価値向上活動のマネジメント (3/3)

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ITの活用なくして
BI活動は成り立たない

 BI活動を実際的に成立させるためには、高度なIT活用が必須となる。IT活用とBI活動の不可分性も、これまで述べてきた二つの側面によって説明することができる。
 まず情報流通を円滑化することに、ITツールはその威力を発揮する。BI活動はグローバルに複数の部署、異なる階層、多くの職域にまたがって同時並行的に進められなければ、その期待効果は限定的になってしまう。また情報共有がなされていなければ、共通目標に向けて効果的に作業を進めることは困難である。できれば、BI活動に関わるメンバーが一つのチームのように一体感を持って進められることが望ましい。実際に情報のやり取りは「参加人数の自乗?参加人数分」になるのだから、個々に対応をしていては連絡業務だけで疲弊してしまう(図3)。込み入った連絡業務が意外に大きな支障になることを、肝に銘じておくべきである。


(図3)コミュニケーション連携とITツールの活用

 すでに知識創造型の企業の多くでは、知識・情報共有のためにさまざまなコンテンツ管理システム (CMS)を導入している。図3のように、中心にツールがゲートキーパーあるいはハブとして存在し、情報を仲介するイメージである。誰もが発信者になることができるし、いつも特定の場所に整理された情報を、自身の都合によって取得しにいけるからユーザー便宜がとてもよい上に、管理コストは抑えられる。

   またCMS製品の多くはWebベースのインターフェースをもつため、PCの操作に慣れた方であれば、直感的で使い易いものに仕上がっている。特に職位が高く優先度の高いユーザーには、IT嫌いで自分でPCを操作するのに抵抗がある方が多いようだが、最近の製品はその点、十分にこなれてきているので、インターネットサイトで検索をして簡単な調べものができる程度のスキルがあれば、ほぼ問題なく使いこなせるはずである。

 多くのツールではユーザー(個々の利用メンバー、部署)がそれぞれの都合によってワークプレイスなどを設け、権限を与えた特定のメンバーに情報を公開し、コンテンツをやり取りできるようになっている。当然、アクセスや更新などの記録は完全に掌握できるようになっているため、システム管理者の負担を最小限に抑えつつ、必要なセキュア対策が備わっているのが魅力である。このためどちらかと言えば個々人、個別部署の自律的管理に任せたビジネススキームへの応用が適しているが、プロジェクト管理やドキュメント標準化によるコンプライアンス対策といった使用方法も想定されている。

 エンタープライズ向けの代表的な製品としてはDocumentum〈※注5〉やFileNet〈※注6〉などが挙げられるだろう。これらは特にグローバルな展開を行い、複数の部署の多くのメンバーが部門横断的チームとして活動するのに適している。

 なお情報共有ツールとしては、業務に限定的なツールも多い。特に工業製品の開発・設計などに関してはPDM(プロダクツデザインマネジメント)ツールが有効になるだろう。ブランドの持つコンセプトは当然、製品によって実現されるものなので、製品コンセプト創出に関わる情報流通から、仕様決定、パッケージや販促ツール展開などブランド価値が共有され、チェックされるべき業務の頻度と量は相当数にのぼる。

 PDMツールはCADデータなどの図面データや仕様書のやり取りに使われるだけではなく、設計や開発に関するドキュメントやデータの管理も広範に扱うことができるようになっている。またスケジュールやワークフロー管理などの豊富な機能が提供されている。すでにPDMが導入されている企業では、BI活動の下支えにPDMを応用することも選択肢として考えられるだろう。

 次に、BI活動自体の管理側面におけるITツールの活用である。
最終的にBI活動を全社的な最重要経営課題とし、PDCAサイクルを永続的に回して行くことを考えれば、いわゆるMBO(目標管理制度)を支援するツールが最適と思われる。戦略遂行のために、バランススコアカードを活用するハイペリオン〈※注7〉などの代表的パッケージもある。

 まず立ち上がりをスムースにするのであれば、各種BI(ビジネスインテリジェンス)ツール〈※注8〉をカスタマイズして利用することも考えられよう。マネジメントがより的確な判断を素早くできるようにマネジメント・ダッシュボードと通称される機能を追加することもできる。主要な指標を一覧でき、便利な上に見た目もよい。IT嫌いなシニアマネジメント層こそ、魅力的に感じるはずである。

 進捗管理のツールがあれば、知りたい人と知らせたい人がお互いに使い勝手よく進捗情報をやり取りすることができるので便利だ。そして、管理面に関わる工数を最小限にすることができるので、現場の抵抗感も薄くなるはずである。ただし、いずれも初期導入の際にビジネスモデルを明確化した上で関連するデータ(指標)を特定し、それらの数値を入手するコストや担当部署なども勘案するなど充分に検討しなければならない。

 パッケージベンダーの素晴らしいデモは、あくまでもベストプラクティスでしかない。現実的にはマーケティング系のデータは未整備であることが多いし、ひどい場合、重要データがデータベース化されずAccessやExcelデータの形式のままで属人的に扱われていたりすることすらある。また各種の経営数値を扱うことが想定されるため、ERPシステムなどとの相性も考えた上でツール選定することが求められよう。

 なお、BI活動とも密接な関係のあるテーマとしてマーケティングROI(投資対効果)が挙げられる。概念としてはアクティビティ単位に顧客セグメントごとのコストとリターンなどを計測し、費用対効果をきちんと見極めながらマーケティングをマネジメントしていくスキームである。マーケティング分野は複雑で広範囲なうえ、関連のコストやマーケティング上の活動を顧客や製品・サービスの属性にきちんとひも付けていることが少なく、どんぶり勘定だと言っても過言ではない。同じルーティンの活動を、ある時は販売関連コストに計上していたり、ある時は催事として広告関連コストに計上していたりするが、特にユーザー自体に不便はないので放置されているといった具合である。

 このような場合、まず活動の流れと個々のイベントのコスト、リターンを製品や顧客セグメントに帰属させることから始めることが必要である。経験によるならば、緻密さを求めて多くの数値を扱うよりも、代表的でインパクトの大きい数値をざっくりとつかんで管理していくことが現実的だと思われる。ツールとして代表的と言えるほどのものはまだ見えていないが、Campaignist〈※注9〉などの簡易なものが実装には好都合だ。

ITツールを使いこなすのも
社員の意識の問題

 ここまで紹介してきた便利なITツールの数々を十分に活かしていけるか否かは、IT製品自体の質や導入ベンダーの優劣だけに左右されるものではない。ITツールはその支えとしてなくてはならない必要条件であることは間違いないが、それだけでは十分条件足り得ない。あくまでも情報の流通、浸透、価値創造のための対話という取り組みは、その主体者であるマネジメントや社員の自覚と意識にかかっているのである。

 逆説的になって恐縮なのだが、BI活動がうまくいく組織は、社員間の情報共有がうまくいく、部門の壁が低い活性化された組織であろうし、特に厳しく強制しなくても、社員自らが率先して、自発的に価値創造活動に取り組める良い体質があるのであろう。

 そのような企業体質ではないから、と逡巡している経営者の方がいるのだとしたら、むしろBI活動に 取り組むことを強くお勧めしたいと思う。鶏が先か卵が先か。このような不毛な議論は置いておくべ きだ。コロンブスの卵の例えもあるが、とにかく一歩前進をしていかなければ明日は開けないはずである。

〈※注5〉詳しくはhttp://www.documentum.co.jp/
〈※注6〉詳しくはhttp://www.filenet.com/japanese/
〈※注7〉詳しくはhttp:http://www.hyperion.co.jp/
〈※注8〉代表的なところでは、BusinessObjects
http://japan.businessobjects.com/
)などがある。
〈※注9〉詳しくは:http://www.campaignist.com/

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