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  • 2006/04/11 掲載

IT活用が決め手となる全社ブランド価値向上活動のマネジメント

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ブランドの向上を狙う全社的取り組みの成否は、情報をいかに上手に利用して行くのか、管理・評価をしていくのかにかかってくる。本稿では3回にわけて、さまざまな組織・利害関係者(ステークホルダー)に及ぶブランド活動の実際活動における要点を踏まえて、どのようなITツールがその支えになるのか、また、ツール導入・活用における留意点などを中心に概説していく。

日本企業が持つ喫緊の課題


ベリングポイント CRM戦略グループ
シニアマネージャー
井上 考
Inoueo Koh
中央大学出身。大手広告会社など数社を経て朝日アーサーアンダーセン(現ベリングポイント)に入社。主に新規事業戦略構築の支援とCRM領域のさまざまなビジネスソリューションを提供している。2003年6月にはベリングポイントCRM戦略グループから顧客価値の定量化を可能にするREM(Relationship Equity Management:顧客関係価値マネジメント)を発表。顧客洞察を通じた価値創造のために、マーケティング実務をコントロールして行くことが重要であることを説いている。
 企業ブランド、あるいは代表的な製品ブランドにおけるブランドの価値向上活動(Brand Identification Program、以下:BI活動)は、戦略~コンセプト創造~製品開発~販売・販促活動と、バリューチェーンの上流から下流までにわたり広範に及ぶため、エンタープライズ(全社)レベルの大きな取り組みとなることが多い。また日本企業の多くはこれまで、製品力を頼りにブランドは結果として付いてくるものと考えて、マネジメントが積極的な関与を避けてきたり、バブル時代のカタカナCI(コーポレートアイデンティティ)流行への反省があったことから、BI活動への敷居はより高くなっているかもしれない。

 しかし低価格の普及品か、高付加価値なプレミアム商品かの両極が売れる、いわゆる「消費の2極化現象」は今後ますます進む情勢である。プライスリーダーシップをとれるほどのコスト優位性を築き上げるか、高いイメージをもったグローバルなブランドが確立できなければ、将来的には企業基盤すら危うくなってしまうかもしれない。脅かすようで恐縮だが、まさに今、BI活動は喫緊の課題として迫っているのである。

BI活動の二つの側面

 ブランドの価値そのものは、顧客の心の中に結果的につくられるものだから、本来「見えない」か「見えにくい」ものであり、きわめて抽象的なものといえよう。複雑で変化に富むビジネス要素こそ、シンプルな数字やデータをもって考えることがマネジメントには求められるが、ブランドや広告・宣伝などといったコミュニケーションの領域は、その不確実性の大きさから、かつてはたいへん扱いにくい問題だったはずである。

 この厄介ごとを解決するために、今ではさまざまなアプローチが考案されているし、ブランド価値を 計るためのいろいろなスキームも開発されているが、学術的な面やクリエイティブな面はおのおのの専門家にお任せするとして、私からは実務の上で大きく二つの側面からBI活動をとらえて、マネジメントをしていくことをお勧めしたい。

 一つは組織内の日々の活動を推進するために情報流通をコントロールしていく側面、もう一つは活動自身を管理・評価するマネジメントの側面である。この二つの側面は全社的戦略を遂行する上で基礎となる、企業文化とも言うべき知的環境づくりと、日々の活動においてPDCAサイクルを回すための指標とすべきもので、実は表裏一体の関係にあるものだ。

戦略遂行組織の持つべき
確かな情報共有インフラ

 BI活動を実務上のプログラムに分解して考えてみると情報流通の重要さがわかってくる。大胆に簡略化して言うと、ブランドの価値実現は、製品自体のコンセプト企画と設計、エンジニアリングによるその実現、そして、その価値を顧客に伝えるコミュニケーションの連鎖によってなされる(図1)。

 

(図1)目標相関図(例示)

 BI活動におけるプログラムも、一般的な戦略遂行プログラムの一種であり、各レイヤー、部門ごとに具体的な目標を立案し、個別展開していくものだと言える。しかし一般的にブランドの価値定義は観念的なものにとどまるため、容易に戦術に分解され、ルーティンを規定するものにはならない。

 しかもその実行にあたっては、現場の社員がブランドの意味を正しく自己解釈しながら、製品やサービスなどを通じて、顧客にその価値を感じていただくよう意味を再現させるという、まさに高度な知識創 造〈※注1〉が要求されるのである。また、この知識創造活動は特定の人物や一つの部署によるものではなく、部門間を超えた組織全体の知の活動にしなければならない。

 例えば、製品企画の時点では、その企画コンセプトにきちんとブランドの持つ概念が反映されなければならないから、企画担当者は自分だけの知識によらず、関係する設計や技術、販促などの多くの関係者の知恵を集めることになる。さらにこの共同作業に参加した設計者は、企画者や技術者と対話しながら製品コンセプトを設計として実現していくし、技術者は設計者との対話を通じて、その製品が持つべきフィーチャーを獲得すべく要素技術の開発を進める。
 さらに広告・販促担当は製品をどのようにして顧客に理解してもらうか、広告会社など外部の力も借りながらクリエイティブ活動を実行する。このように知識創造活動における要諦は「対話」にあり、組織においては情報の流通として管理すべき対象となるのである。

 対話の促進とその環境づくりは容易なことのように思われがちだが、部門間の壁が高かったり、対話よりも活動効率のみを要求するシニアマネジメント層がいたりすると逆風になるだろう。このような企業の現場には、情報の持つ背景やニュアンスといった抽象的な意味は削ぎ落とされて「指示」や「連絡事項」だけが伝わっていく。BI活動は個人の高度な解釈が必要となるから、「指示」や「連絡事項」だけが伝わっても意味のある情報としてコンセプトを再現することはできないのである。情報流通においては質の面からも考えたインフラづくりをしていかねばならない。 〈※注1〉この稿では『知識創造企業』(著:野中 郁次郎、竹内 弘高、訳:梅本勝博、東洋経済 新聞社)に言う暗黙知と形式知の社会的相互作用による組織的プロセスを指す。

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