そして、2006年5月1日、新会社法の施行と共に中森氏の活動は新しいフェーズに移った。代表作と同名の合同会社、「関西商魂」を立ち上げたのだ。新会社法によって可能となった合同会社（LLC）。なぜ中森氏は合同会社を選んだのか、そして設立のポイントは何か。中森氏に語っていただいた。

共同会社のメリットとは？


--合同会社を一番乗りで設立されましたね。

中森●5月1日から新会社法が施行されましたが、この法律の目的は多くの人が起業しやすくすることにあります。私自身、今までブルームエンタープライズという屋号で仕事をしてきましたが、法人格にすることによって今まで以上のメリットを得られます。大きいのは信用ですね。法人対法人の付き合いができますから、個人よりも可能性が広がります。

--どうして合同会社という形態を選ばれたのでしょう？

中森●LLCとも呼ばれる合同会社と良く比較されるのがLLP（有限責任事業組合）です。違いの1つは、1人でできるかどうか。LLPの設立には2人以上必要で、1人になったら解散しないといけません。あるプロジェクトのために、構成メンバーが力を合わせて仕事を進めていくための組合ですね。一方の合同会社は、1人でも設立できます。合同なのに、1人とはこれいかに（笑）。合同会社はずっと会社として存続し続けることができます。
　税制も違います。LLPの場合は、税金が構成メンバー1人ひとりにかかります。合同会社では、会社には法人税がかかり、個人には所得税がかかります。一見すると二重課税のようですが、累進課税になっていますから、個人の税金が高くなりそうな場合でも、法人税とのバランスを取ることもできます。やり方によっては、節税になりますね。

　従来の会社法には株式会社と有限会社がありましたが、新会社法では株式会社に一本化されました（これまでの有限会社は存続できるが、有限会社の新規設立はできなくなった）。株式会社も資本金1000万円が必要という縛りがなくなり、1円起業ができるようになりましたが、手続きが合同会社に比べると煩雑です。
　また、従来から合資会社、合名会社という形態もありましたが、これらは無限責任なんですね。それに対して、株式会社や合同会社は有限責任です。有限責任ですから、資本金や会社の資産以外については責任を取らなくてもいい。ところが、無限責任だと、事業で失敗した時に家や財産を差し押さえられてしまうこともあります。
　要するに、新会社法で可能になった合同会社は、株式会社、合名会社、合資会社のいいとこ取りをして作られた制度なんですよ。


--合同会社にデメリットはないんでしょうか？

中森●新しくできた制度ですから、これから問題が表面化することはあるかもしれませんね。ただ、ほかの形態に比べて大きなデメリットがあるわけではありません。個人事業主に比べてのデメリットといえば、設立は簡単でも法人は法人ですから、税制上厳しく見られるようになるというくらいでしょうか。きちんと帳簿を設置して税金を納めなければなりませんし、場合によっては税理士などと契約を結ぶ必要も出てくるでしょう。


会社、商標、書籍という3本柱からなる「関西商魂」

--合同会社関西商魂の業務内容はどうなっていますか？

中森●全部で13項目ほどありますが、書籍の『関西商魂』でやってきたこととかなり重なっています。つまり、目的は関西のビジネスを元気にするということです。企業の宣伝サポート、プロモーショングッズや映像の制作も請け負います。
　実は、もう1つ仕掛けをしているんですよ。会社設立とほぼ同じタイミングで「関西商魂」の商標を登録しました。第35類（広告、事業の管理・運営）と第41類（教育、娯楽、スポーツ及び文化活動）の2つです。今後は、セミナーなどの企画も関西商魂の名前でやっていきます。合同会社、登録商標、そして書籍の3つで、活動内容がまったく同じなんですよ。3つ柱があれば、大丈夫かなと思いまして。日本人は「3並び」が好きですしね（笑）。