- 2006/08/10 掲載
【CIOインタビュー】 サン・マイクロシステムズ セキュリティプロジェクト統括責任者 中村彰二朗氏(2/3)
2兆円規模の政府系IT調達を、いかに健全な競争環境にするか
e-Japanでは、日本の政府と地方自治体のIT予算は2兆円程度。独立法人を加えれば、毎年計4兆円程度が使われている。その政府系IT予算2兆円の約75%が、未だに旧来型のレガシーシステムやメインフレーム(汎用機)の運用保守に使われているため、e-Japan戦略を成功に導くための新規開発に回ってくるのは25%程度しかない。
「現在はIT予算の75%が何も新しいものを生み出さない維持メンテナンスや更新のために使われてます。e-Japan構想は世界最先端のIT国家を実現するための戦略であり、国民と民間企業と政府系機関が安全かつ安心して相互に利用できる優れたIT環境基盤を目指すものですが、そこには残念ながら予算の25%しか振り向けられていない。それでも、日本の財政状況が良くて、年々新規開発のための予算が20%くらいアップするなら話は別ですが、政府/自治体ともに予算は削減傾向にあるわけで、維持メンテナンスに費やされている75%をいかに新規開発に回せるかが重要になってくるのです。そこでITのコスト構造を2010年までには逆転させて、新規開発に多くの予算を使えるように、IT投資領域の構造改革を支援したいと考えています。
それを実現するためには、レガシーシステムを守ろうとするIT企業と一時的に衝突する場合があるかもしれませんが、オープンスタンダードへの流れは誰にも止められないし、税金を使用して開発納入する政府系ITシステムには、重複開発など決して無駄があってはならないことも関係者の共通認識になりつつあり、改革の実行段階に入っていると実感しています」
自治体の共通基盤の無償化を支援
アプリケーションシェアの実現でTCO削減を狙う
この状況を打破する秘策を、中村は、「電子自治体アプリケーションシェア協議会」という自治体グループと、その実現を支援する民間団体である「オープンスタンダード化支援コンソーシアム」の幹事メンバーと共に練っている。そのひとつが、どの自治体でも利用可能な共通基盤を開発し無償で提供、共通基盤自体を調達仕様とし、そのうえで稼働する業務アプリケーションをシェア(共有)出来るように、これまでの個別開発のモデルを変えてしまうこと。
小泉政権下で市町村合併が盛んに行われ、全国に約3000あった自治体は約2000まで減小している。自治体が3000あったということは、地方公務員の給与システムが3000あったことを意味する。昔はベンダーごとに技術が異なっていたし、日本にはアメリカに負けない情報産業を育てるための公共投資としての政策が必要だったが、オープンスタンダードが当たり前となった現在、本当に個別システムを開発/納入することが必要なのか、 あらためて問い直すべきときにきていると、メンバーは考えている。
無駄なIT投資構造を改革するには、中村が言うようにベンチャー単独では難しいだろうが、サンの実績と技術力、そしてパートナー企業との連携があれば十分可能だ。そこで、サンでは、共通基盤を作ってオープンでフリーなITにするといった斬新な策を、ユーザ自治体主導でコンソーシアムメンバーとともスタートさせた。三井物産戦略研究所が事務局を務めめ、理事企業としてサン以外に、日本オラクルやSAPジャパン、マイクロソフトなどがアライアンスモデルを構築する。業務アプリケーション開発の主役は地域のITベンダーとしたうえで、その共通基盤上に、各自治体が人事給与や財務会計、電子申請などのアプリケーションをそれぞれ構築するようになると、無駄なIT投資が省け、地域ITベンダーの産業振興にもつながると目論む。
「これには中心の自治体となった福岡県の麻生知事や宮城県の浅野知事(当時)も賛同してくれました。計算上では、75%のうちの約3割がカットできる見込みでスタートしました。これで、無償の共通基盤が県レベルで使えるようになるだけでなく、趣旨に賛同した地方自治体がその共通基盤を使い、アプリケーションをシェアできるようになります。さらに、参加自治体が増えれば増えるほど、開発費がシェアできるモデルでもあるのです。これで新規開発分野であり、e-Japan戦略を実現するために重要な分野であるコンテンツやセキュリティなどに予算が回せるようになるはずです。」
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