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- 2023/10/27 掲載
ネットフリックスまた値上げ…「解約」続出の超リスク、動画サブスク競争の勝敗の行方
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
ネットフリックスが“また”値上げ
米国では2023年7月に、テレビの使用目的におけるシェアで、地上波(20%)とケーブルテレビ(29.6%)の合計が初めて50%を割り込み、代わりに動画ストリーミングが38.7%となったことが、米調査企業ニールセンの調べで明らかとなった(冒頭の図1)。2013年には1億世帯を超えていたケーブルテレビの視聴者数も、2023年には6000万世帯へと減少することが予測されている。過去2年間だけでも、下の図2に見られるように、テレビ使用時間における地上波のシェアはおよそ5ポイント、ケーブルテレビでは10ポイント近く落としている。放送時代の終わりと動画ストリーミング時代の本格的な到来は否定しようがない。動画ストリーミングのシェアが50%以上に達するのは時間の問題だろう。
だが、飛ぶ鳥を落とす勢いの動画ストリーミングにも懸念点がある。相次ぐ値上げで予想されるサブスク顧客離れの可能性だ。
まず、動画ストリーミング最大手のネットフリックスは2022年1月にサービスの利用料金を1カ月あたり各プランで1割強(1~2ドル)値上げした。さらに、複数の世帯でのパスワード共有を禁止し、最安の広告なしプランも廃止するなど増収策を講じていた。だが、2023年10月、これらに追加して、広告なしプランの値上げを実施することが明らかになった。
背景にあるのは、最近行われた脚本家や俳優たちによるストライキだ。これにより新たな契約が妥結されたが、これにより脚本家はストリーミングサービスの各作品において、視聴者数に基づいた追加報酬を得られるようになる。これが、俳優たちの報酬増と併せ、ネットフリックスオリジナル作品の制作コストを押し上げることになる。
また、製作費がわずか2,140万ドル(約32億円)であるのに対して9億ドル(約1,350億円)相当の売上に貢献した『イカゲーム』など超コスパの良かった韓国作品も、俳優と作家への支払いが急騰しており、ここでも経費の増加が顕著となっている。
26%が「節約」で解約? サブスク離れで競争激化
こうして相次ぐ値上げを行っているわけだが、副作用も伴う。2022年6月に前年比9.1%上昇した米物価上昇率は現在3%台で落ち着きを見せ始めているものの、これ以上の動画サブスクの値上げは大規模な顧客離れを引き起こす可能性が高い。事実、コンサルティング大手のデロイトが2023年4月にまとめた米消費者約2000人への調査によれば、2000年前後に出生したZ世代の30%、1980~90年代に生まれたミレニアル世代の32%、全世代の26%が有料エンタメサブスクを「節約のため」にキャンセルしたと回答している。
これらの統計を併せて考えると、動画ストリーミングはさらに伸びることが予想されるものの、インフレによって縮小される消費者のエンタメ予算をめぐり、動画ストリーミング間の競争がさらに激化する未来が見えてくる。
では、動画サブスクの「勝ち組」は誰で、「負け組」は誰なのだろうか。
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