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  • 2023/12/15 掲載

キリン・三菱電機・テルモのイノベーターの共通点、「強すぎる」2つの思考法とは

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革新的な製品や技術を開発したイノベーターたちは、一般的な人材とは異なる思考・行動に基づいてイノベーションを起こしています。彼らの思考・行動の元となるのは、「コンセプト」と呼ばれる問題解決への答えです。キリンや三菱電機など、日本を代表する企業で革新を巻き起こしてきたイノベーターたちは、一体どんなコンセプトを持っていたのか。彼らにインタビューして聞き出した、イノベーションの「源泉」に迫ります。

執筆:アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

執筆:アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『正しい質問-ノーベル賞受賞者や経営者との対話で得た、超生産性ノウハウ集』(Amazon)、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

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アクトコンサルティング 取締役の野間彰氏が、イノベーターたちの思考・行動の「源泉」について解説する

日本でイノベーションが拡大再生産できないワケ

 コンセプトとは、現状の延長線上で考えていては解けない問題への、「本質的な答え」のことです。なぜ新規事業の成功確率は低いのか、どうすれば技術の壁を突破できるのかといった問題に対して、間違った答え(=思い込み)を打破し、こうすれば解けると理路整然と説明できるものを指します。


 日本では、イノベーターが持つコンセプトを組織的に言語化、体系化していないことが多いため、せっかくの貴重な知見が普及せず、拡大再生産することができていません。その結果、イノベーターがリタイアすれば、後輩は1から始め、苦労してイノベーションのための思考・行動のコンセプトを生み出すことを繰り返すことになります。

 たとえば、ある医療機器メーカーで、世界のデファクトスタンダードを打ち立てたイノベーターは、「泥団子でも投げれば、当たったか外れたか分かる」とのコンセプトのもと、可能性のあるすべてのケースを実験で確かめていました。彼は、最適と思われる実験結果を段ボールなどを使って簡易的に素早く作り、世界のキーになるドクターに会って早く開発方向を決め、上市までのスピードを上げていました。彼はこのコンセプトを部下や後輩には伝えましたが、企業全体への普及には至りませんでした。

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日本ではイノベーターのコンセプトを体系化できていない傾向がある
(Photo/Shutterstock.com)

 一方、同様のコンセプトは、これよりも後に米国で「リーン・スタートアップ」という名前で体系化され、組織的に普及。やがて日本にも広がっていきました。残念ながらイノベーションを引き起こすためのコンセプトの多くは、(日本でも同様なコンセプトを創造し実践しているイノベーターはいるのにも関わらず)日本以外で体系化され、日本には遅れて普及していくことが多いのです。

自動車部品メ-カーで生じた「ある問題」

 別の例も見てみましょう。ある自動車部品メーカーで、海外生産拠点の拡大スピードを上げた時に、品質問題が発生しました。原因を調べてみると、これまでの海外生産拠点立ち上げでは、管理職や現場リーダーとして日本人が中期期間駐在し、現地に技術を移植していましたが、拡大スピードを速めたために日本人の投入人数や期間が減少。このことが原因で、社内で体系化されていなかった優秀な人材の持っているコンセプトが普及できなくなり、品質の低下につながっていたことが判明したのです。

 このメーカーでは、「デザインレビュー」という設計時点での関係者によるレビュー会議を行う際、駐在する日本人のリーダーが、会議の最初に英語や現地語を交えて冗談を言って場を和ませていました。また、会議中に現地人のレビュアーが、担当者に批判的な態度を取った場合、それを厳しく戒める姿勢を取っていたといいます。

 デザインレビューは「レビュー」ということで、無意識のうちに「担当者の問題点は批判していい」という思い込みに支配されることがあります。しかし日本人リーダーは、デザインレビューは「知恵を出し合う場」とのコンセプトのもと会議に臨んでいました。上記の行動は、一般的に打たれ弱いエンジニアをリラックスさせ、批判でなく知恵の出し合いを活発化するためだったのです。

 ただし、この重要なコンセプトは、デザインレビューの標準マニュアルには書かれていません。このような標準化されていないコンセプトを組織的に普及させることができなかったことが、このメーカーが直面した品質問題の根本にあったのです。

 このように、コンセプトを共有できるかどうかで、ビジネスの成果において大きな違いが生まれてしまうのです。 【次ページ】日本企業に必要な「仕組み」とは

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