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- 2024/03/20 掲載
企業の顧客は「もはや人じゃない」? AIで爆誕の「ビジネスモデル」が新しすぎる
AI活用における「前提条件」とは
2000年代前半からのインターネット、さらに2010年代に入ってからのデジタル活用に次ぐ、第3の大波が押し寄せつつある。それが、日々進化し続けているAIだ。AIの技術革新について、「すでに多くの面で人と同等以上の能力を獲得し、自然言語による対話も可能なまでになりました。AIの力をビジネスに生かさない手はありません」と訴えるのは、ガートナー ディスティングイッシュト バイス プレジデント・アナリストのマーク・ラスキーノ氏である。
ではそんなAIをビジネスにうまく組み込んでいくには、何が必要になるのだろうか。
AIをビジネスに活用していく前提条件としてラスキーノ氏が挙げるのが、「AIのためのビジネス思考の習得」である。その中身についてラスキーノ氏は、デジタルを「打ち上げロケット」、AIをロケットに搭載された「宇宙船」に例えて次のように説明する。
「従来からのデジタルツールは目的が『打ち上げ』と明確です。しかしAI活用では状況は大きく異なります。クラウドやアジャイル開発などのデジタル利用はロケット打ち上げの大前提です。その上で、かつてたどり着けなかった惑星、つまり、課題解決や目標達成などの価値を自ら設定し、そこからAIという宇宙船をデータという羅針盤を頼りに操縦し、到達を目指すことになります」(ラスキーノ氏)
AIのためのビジネス思考の習得とは、ビジネスにおけるAI活用の本質──ツール導入後、目標達成のためにビジネス視点で社内データをいかに活用すべきかを模索し続けること──を理解しておくことにほかならないのだ。
「これまでのデジタルツールでは必要なかった考え方です。ただし、目指すべき惑星や到達ルートは企業ごとに当然、異なり、これを欠いてはいつまでたっても到着は見込めません」(ラスキーノ氏)
なぜ「自律的」であることがカギとなるのか
AI活用に手間取る多くの企業を尻目に、先進企業ではすでにAIのビジネス活用が本格化しつつある。そうした企業における成功事例の共通点としてラスキーノ氏が指摘するのが、「オートノマス(自律的)」であることだ。
ガートナーではオートノマスを、「別々または独立的に機能する」、「外部からの指示を必要とせず、独立している」、「十分な情報に基づいた現場で意思決定を下せる能力がある」、「自己統治をする」ことと定義する。
これらAIによるオートノマス性が、企業のビジネスを支える「組織」、「オペレーション」、「プロダクト」にかつてない機能拡張をもたらしているという。
では、機能的な拡張とは具体的に何だろうか。
まず、組織における機能拡張については、これまでに起きたインターネットやデジタルによる変革でも、情報共有や効率化などの進歩がもたらされていたという経緯がある。しかし、それらの受益者は主に組織の下位層に限られたのに対し、AIによる機能拡張では、経営層を含めた組織の全階層を支援し利益をもたらすという点で決定的に異なる。
下位レイヤーでは、各種作業とそこで必要とされる判断をロボットとAIが代替し、人は人でしかできない作業に打ち込めるようになる。中間層のナレッジワーカーに対しても、業務特化型AIが各種交渉や契約文書の作成、医療画像の読影などを支援する。そして経営層においては、意思決定において効果を発揮する。
「当社の調査でも、多くのCEOがChatGPTを日々の業務で利用していることが明らかとなっています。経営コックピットなどによる単なる数値ではなく、問いかけへの返答で経営戦略を支援するAIの登場は革命的と言えます」(ラスキーノ氏) 【次ページ】AIは「顧客」の概念をどう変える?
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