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- 2024/05/15 掲載
AIが完成すれば人は何をすべきか? 「遊んで暮らせる」のか?
1994年、石川県金沢市生まれ。東京大学 大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 松尾研究室 に所属後、現在はAI研究者。博士(工学、東京大学)。人工知能分野における強化学習の研究、特にマルチエージェント強化学習の研究に従事。ChatGPT登場以降は、大規模言語モデル等の生成AIにおける強化学習の活用に興味。著書に『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト 第2版』(翔泳社)、『AI白書2022』(角川アスキー総合研究所)、訳書にR. Sutton著『強化学習(第2版)』(森北出版)など。
AIに聞けば、すべての疑問が解決する?
ここでは、より中長期的な視点に立って、将来的に生成AIによって生じるであろう影響とその負の側面、議論されている問題、そして人類の未来への展望を述べます。ここでの記述は、先行研究や実際に起きている事象を参考に解説したこれまでの連載とは異なり、研究者の間で合意が得られた考えではありませんし、私個人の意見を多く含んでいます。実現しないこともあるかもしれませんし、負の影響については過小評価しているかもしれません。以上のことをご理解いただいたうえで、これから生成AIについて考える参考になるよう議論を提供できればと思います。
さて、将来的にはGoogle検索や現在のChatGPTがパワーアップする形で「AIに聞けばなんでも解決する」世界がやってくると思われます。日常の悩みも、リアルタイムで起きていることも、ゲームの裏技も、仕事で行き詰まったことも、人類の積み上げた科学知識も含めた「なんでも」です。
現在のChatGPTなどの生成AIは、入力できる文字数の制限やハルシネーション(誤った情報を出力すること)、学習に使用するデータを収集した期間などの技術的制約から、真の意味でなんでも聞いて解決してくれるものではありません。まして画像を入力としてまともな回答をしてくれるAIはまだ少数であり、質問への回答に画像や動画、実際の操作画面などを返してくれる実用的なAIはまだ存在しません。
また、現在の生成AIは稼働させるために膨大な計算リソースを必要とすることから、個人が独占して利用することもほとんどできません。
一方、技術発展の異常なほどの速度を目にしている研究者の視点では、これらの技術的な問題については、おそらく中長期的には解決されるものと思っています。文字数の制限という点で言えば、本書を執筆した短い期間でも、よく使用されるモデルで数倍、ある特定のモデルでは数百倍以上の性能改善をしたとの研究が出てきています。 【次ページ】アイデアさえあれば、なんでも実現できる?
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