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- 2024/05/23 掲載
iPhone実装候補「8つの生成AI」、ChatGPTかGeminiか? それとも「アップル製」か?
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
アップル大低迷、シェアは「40%→33%」
アップルの主力製品であるiPhoneが、ホームグラウンドの米国においても、ライバルの韓国サムスン電子のGalaxyなどに押され、想像以上のペースでシェアを落としている。市場調査企業の米コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ(CIRP)の調べでは、2022年4月から2023年3月の1年間におけるiPhoneの国内シェアは40%であったが、翌1年間には7ポイントも下落して33%となった(図1)。なお、過去 12カ月間を確認することで季節性を排除したシェアを算出できる。
つい最近まで、iPhoneでは「Pro」や「Pro Max」など収益率の高いハイエンドモデルがよく売れた。だがそうした製品はしっかり作り込まれており、長持ちするため買い替えサイクルが伸びていることが一因であると、CIRPでは分析している。
一方、香港の市場調査企業であるカウンターポイント・リサーチの推計によると、もう1つの主力市場である中国でのiPhone販売台数は2024年1~3月に前年同期比19%減少した。これに伴い、中国スマホ市場におけるiPhoneのシェアは2023年の19%から16%へと後退している。
この四半期に中国では経済低迷が続いたが、それにもかかわらずライバルの中国ファーウェイ(華為技術)のスマホ販売台数は70%近く伸びている。最近はイノベーションが少ないアップル製品よりも、現地消費者が国産品により大きな魅力を感じていることが示唆されている。
さらに、IT専門調査企業の米IDCによれば、2024年1~3月期に全世界で5010万台のiPhoneが売れたが、これは前年同期比9.6%の減少であった。このため、世界スマホ市場におけるアップルのシェアは2023年の1位(20.7%)から、2位(17.3%)へと沈んだ。
これらの数字が示唆するのは、単なる買い替えサイクルの長期化のみにとどまらず、顧客の一部が世界規模でアップル製品に飽きてライバル製品に流れている現実だ。米ニュースサイトのBusiness Insiderが指摘するように、「iPhoneには差別化の販売起爆剤(the extra edge they need to boost sales)が必要」であり、その切り札が生成AIかもしれないのだ。
iPhone搭載の「LLM候補」が乱立
このように、iPhoneに生成AIチャットボットを搭載することで付加価値を付けることは、競合との差別化になるばかりでなく、高級ブランドのイメージや、より高い価格設定と収益率を維持する助けになる。アップルはよく「AIで出遅れた」と言われるが、必ずしも正確な見方とは言えない。実は、2017年から合計21社のAIスタートアップを買収しており、自社でさまざまな大規模言語モデル(LLM)の開発も行っている。
しかし、現状では他社からのアウトソーシングによる導入の可能性も含め、iPhone搭載候補が並立・乱立している状態だ。そのため、最終的に「Apple GPT」がどのような形になるかはわからない。
そこで、「それ」を構成すると見られるさまざまな要素を列挙することで、「Apple GPT」の輪郭と方向性を浮き彫りにしてみたい。
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