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- 2024/12/23 掲載
GAFAを生んだ「源流」はなぜ米国で生まれたのか、カギとなる「ある二面性」とは
篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第177回)
九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
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・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日
ITブームに見る日米の「相違点」
イノベーションの時代には新ビジネスが次々と勃興する。そのブームがやがてバブルを引き起こすのは避けがたいようだ。ECB(欧州中央銀行)は2024年11月に公表したFinancial Stability Reviewの中で、AIブームによる特定企業株への投資集中にバブルの可能性があるとの懸念を示した。
「ITは革命かバブルか」― ニュー・エコノミー論争が白熱した1990年代も、このテーマをめぐり侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論が交わされた。
前回触れた2000年前後の日米同時ITブームとIT不況は、イノベーション時代のバブルとその崩壊を物語る典型例だ。1990年代終盤のドットコム・ブームで米国のデジタル投資は急増したが、2001年第1四半期には前期比で10年ぶりにマイナスに転じた。
この失速は、米国市場の収縮→アジア地域での米国向け生産縮小→日本からのアジア地域向け生産財・資本財の輸出減→日本の生産・投資の縮小という経路で、すぐさま日本に波及した。IT産業のサプライチェーンが両国間で密接につながっていたからだ。
ただし、その性格は両国でかなり異なっていた。デジタル投資の経済効果は、「長期的」な成長の基盤となる「生産性」への影響と、デジタル投資向け生産の変動が生み出す「短期的」な「景気」への影響の二面で表面化する。
ITブームとIT不況で見られた両国経済の相違点は、この二面に整理すると理解しやすい。
米国でGAFAの「源流」が生まれたワケ
「生産性向上」で重要なのは、イノベーションの成果を業種横断的に享受することだ。そこでは、新たな「利活用」で湧き起こるICT-enabled businessが鍵となる。一方、デジタル投資に対応したICT-producing businessの活動は、投資需要に派生した「景気変動」に翻弄されやすい。日本の場合は、利活用は米国に委ね、そこから派生する生産活動の場面でブームが起きたに過ぎなかった。生産性向上で鍵となるICT-enabled businessの利活用が外需の形で国内経済から切り離され、専らICT-producing businessの生産に依存した構造だったのだ。生産性よりも景気の影響を強く受けやすかったゆえんだ。
他方、利活用のためのデジタル投資が加速した米国は、もちろん投資需要の変動が生み出す景気変動の影響も受けたが、それに加えて、新技術の導入による新ビジネスの勃興とさまざまな産業の生産性向上という効果も伴なっていた。
それが後にクラウド技術を活用したGAFAなどのデジタル・プラットフォーマー時代を切り拓く源流となったのだ。 【次ページ】重要になる「二面性」とは
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