• 2008/01/28 掲載

【インタビュー】運用管理の効率化には「自律運用」と「システムの統制化」が不可欠

IDC Japan ソフトウェア リサーチアナリスト 入谷光浩氏

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オープン化に伴うシステムの複雑化を背景に、企業における運用管理が大きな課題としてクローズアップされている。目に見えないコストとして肥大化していく運用管理コスト、日増しに高まる情報システム部員の作業負荷―。これらを解消するには既存のプロセスを見直し、運用管理の効率化を図る必要がある。そのためのキーワードが「自律運用」と「システムの統制化」である。障害対応などの自動化を推進するとともに、体系的なフレームワークによる運用管理プロセスが欠かせないのだ。これからの企業に求められる“攻め”の運用管理について、IDC Japan ソフトウェア リサーチアナリストの入谷光浩氏に話を聞いた。

オープン化の進展で
運用管理に伴う負荷とコストの肥大化が課題に

【業務効率】運用管理の効率化には「自律運用」と「システムの統制化」が不可欠
IDC Japan
ソフトウェア リサーチアナリスト
入谷光浩氏
 昨今の企業システムはオープン化が進み、サーバやアプリケーションのマルチベンダー化が加速している。各システムには実績のあるベストプラクティスが導入され、業務の効率化やビジネスプロセスの改善などに大きな成果を上げている。しかし、その一方でシステムが複雑化し、シームレスな連携が困難になっている。「それに伴い、運用管理が煩雑化し、システムの維持や保守に要する運用管理コストの増大が大きな問題となっています」とIDC Japan ソフトウェア リサーチアナリストの入谷光浩氏は指摘する。ビジネスの拡大に伴うシステムの大規模化もこの傾向に拍車をかけている。

 IDCが企業のCIOを対象に行った調査もそのことを裏付けている。調査では今後取り組むべき課題として「管理コストの削減」を挙げる企業が目立った。特に大手企業ほどこの傾向が顕著だった。また同じくCIOを対象に、情報システム部員を今後増員するかを訊ねた調査では「変わらない」という回答が最も多かった。「このことから、運用管理にコストも人も極力かけたくないという企業の意向が見てとれます」と入谷氏は分析する。その結果、情報システム部員一人あたりの負荷はますます高まり、運用管理の品質が低下するという悪循環に陥っているケースも見受けられる。入谷氏は「実際、企業システムで発生しているシステム障害の多くは人的ミスによるものが多いのです」と述べる。

【業務効率】運用管理の効率化には「自律運用」と「システムの統制化」が不可欠


IDC Japanが企業のCIOを対象に行った「今後取り組むべき課題」の調査結果



属人性を排除した「自律運用」により
障害対応、構成変更などの自動化が可能に

 では、なぜ運用管理コストが肥大化するのだろうか。システムの構築・導入に伴うコストは比較的把握しやすいが、その後に発生する作業に対するコストはあまり正確に把握されていないことも一因だ。システムは導入後も細かなチューニングやビジネスの拡大に伴うシステムの変更、ヘルプデスク対応、障害対策などさまざまな保守・管理業務を行う必要がある。「これらが目に見えないコストとして積み上げられていくため、結果的に運用管理コストが肥大化していくのです」と入谷氏は説明する。こうした事態を打開するには、運用管理の効率化を推進する必要がある。その際、ポイントとなるキーワードが「自律運用」である。

 自律運用によって大きな効果が期待できるのが障害対応だ。というのも、多くの企業ではいまだに障害に対して人的対応を行っているところが多いからだ。しかも、対応にあたるのは一部のエキスパートに限られる。属人性が高いため、その人がいなくなれば十分な障害対応ができなくなる恐れもある。「障害対応の自動化を実現することで、迅速かつ的確な障害復旧と属人性を排除した効率的な運用管理が可能になるでしょう」と入谷氏はそのメリットを強調する。

 自律運用という点では、構成変更の自動化(プロビジョニング)にも目を向ける必要がある。システムの構成変更の多くも人的対応に頼っているケースが多いからだ。「構成変更の自動化が可能になれば、よりスピーディにシステムを展開でき、システムの拡張にも柔軟に対応できるでしょう」(入谷氏)。

ITILベースの運用管理フレームワークで
統制化されたシステムを目指せ

 自律運用を進めるには「システムの統制化」も同時に考える必要がある。「先ほど申し上げたように、多くの企業システムはオープン化が進んだため、個別最適化されたシステムが分散している状態です。たとえば、拠点ごとに異なるポリシーで運用管理を行っているといったケースも少なくありません。これを改善するにはITIL(IT Infrastructure Library)ベースの全社的な運用管理のフレームワークが有効です」と入谷氏は語る。

 ITILはコンピュータ・システムの運用・管理業務に関する体系的なガイドライン。ITILに沿って、これまでの運用管理プロセスを見直すことが重要なのである。具体的には分散している情報を一元的に管理した上で体系的かつ標準化された運用管理のフレームワークを構築するのだ。「これにより、運用管理のばらつきをなくし、統制化されたシステムを実現できます。そうすればシステムの拡張が必要になった場合も、その都度対応していく後追い的な管理ではなく、標準化されたプロセスを行うことで対応できます。システムの拡張に伴う人的負荷の増大も軽減できるでしょう」と入谷氏はそのメリットを話す。

自律運用を促進する
NECとEMCの戦略的アライアンスに期待

 このように自律運用やシステムの統制化を推進するにはツールの活用が欠かせない。多くのベンダーがこれらを支援するツールを提供しているが、その中でも注目に値するのが、昨年6月に発表されたNECとEMCの運用管理ソフト分野での協業だという。具体的には戦略的アライアンスによる、NECの統合運用管理製品「WebSAM(ウェブサム)」とEMCのリソース管理製品「Smarts(スマーツ)」との連携強化が挙げられる。

 WebSAMは運用ノウハウの結集であるフレームワークを中心にネットワークやサーバ、OS、アプリケーションまでを含めたシームレスな自律運用技術を有している点が特徴。一方、Smartsはモデルベースの障害分析が特徴である。考えられる障害原因と結果の相関関係に基づいて、検出された障害情報から根本原因を自動的に特定する。入谷氏は「両社の製品が連携することでネットワーク、サーバ、OS、アプリケーションまで含めたシステム全体のきめ細かな障害分析が可能です。また、システムリソースのプロビジョニングなどの自律運用にも有効です。情報量の増加や多様化に伴う、システムの急激な負荷変動にも柔軟に対応できるでしょう」と話す。

 いずれにしても、ユーザー企業にとって運用管理を効率化するには自律運用とシステムの統制化がカギを握る。とはいえ、日本の企業は欧米の企業に比べて、従来のやり方を変えることに消極的だ。「その根底にはこれまで大きな問題がなかったのなら、特に変える必要はないだろうという発想があります。まずはこの考えを改め、いち早く運用管理の見直しを図る“攻め”の姿勢が重要なのです」と入谷氏は訴える。

 2月7日(木)に世界貿易センタービル(東京・浜松町)において、“攻め”のシステム運用管理をテーマとしたセミナー「システム運用管理 レベルアップの秘訣」が開催される。当日は入谷氏による基調講演も予定されている。「基調講演では企業が抱える運用管理の課題についてIDCのデータをもとに詳しくお伝えするとともに、それを踏まえた市場の動き、課題解決に向けた最新ソリューションなどを紹介する予定です。“攻め”の運用管理を実現するには、これまでの運用管理を見直すことが大切。講演が運用管理に対する考え方を変えるきっかけになれば幸いです。当日はぜひご来場ください」(入谷氏)。

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