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- 2025/03/20 掲載
短時間でもスゴイ効果、部門間の「壁」すら打ち破る「壁打ち」活用術を指南
インキュベータ代表取締役。1988年上智大学文学部社会学科卒業後、リクルートに入社。リクルートの企業風土の象徴である、新規事業提案制度「New RING」の事務局長を務め、新規事業を生み続けられる組織・制度づくりと1000件以上の新規事業の起案に携わる。2000年にリクルートの社員として、総合情報サイト「オールアバウト」社の創業に携わり、事業部長、編集長などを務める。2010年に独立起業。大手企業を中心に、新規事業の創出、新規事業を生み出す社内の仕組みづくりに携わり、これまで150社、3000案件、6000人以上の新規事業検討に伴走し支援してきた。「壁打ち」の相手になって新規事業の起案者の話を聴く回数は年間1000回を超える。早稲田大学ビジネススクール修了。大学院大学至善館特任教授、上智大学Sophia Entrepreneurship Network運営委員、明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科客員教授。経済産業省の起業家育成プログラム「始動」講師などを歴任。著書に『Deep Skill』(ダイヤモンド社)、『はじめての社内起業』(ユーキャン学び出版)、『新規事業ワークブック』(総合法令出版)がある。
なぜ新商品の売上が伸びなかった? 失敗の背景には…
ある会社での失敗例をお話ししましょう。新商品の開発にまつわるお話です。その会社の商品企画部門では市場調査を丁寧に行い、データに基づいて企画を進めました。
しかし、完成した商品は、従来品に比べて商品を売るための説明に時間がかかり、営業活動に大きな負担がかかるものでした。
「市場ニーズはあるけど、これは売りづらい」現場の営業部門からは、こんな声が上がりました。結果として、営業部門のやる気は上がらず、売上は伸び悩んでしまいました。
この失敗の背景には、「誰に相談すればいいのかわからない」「正式な会議の場でないと意見を聞けない」という組織内の壁があったのかもしれません。日頃から、部門の垣根を超えた気軽な対話ができていれば、企画段階で営業部門が重視する「売りやすさ」という視点を取り入れることができたはずです。
この事例は、フランクな「雑談」でも、かしこまった「相談」でもない、新しい対話の形の大切さを教えてくれています。企画者の「ちょっと営業の人の意見を聞いてみたいんだけど」という一言から対話が始まっていれば、「実は売りにくい」という大きな問題を軌道修正ができるうちに見つけられていたかもしれないのです。
このような対話の形こそが、壁打ちです。
壁打ちの特徴は「目的も具体性も漠然として曖昧」
ここであらためて、壁打ちの定義をしましょう。壁打ちとは、
話しながら考えをまとめていく対話術
です。定義はこれだけ、非常にシンプルです。
まずは、身近なコミュニケーションとの比較で壁打ちを考えていきましょう。仕事の中で交わされる対話は、おおむね4つに分類できます。
- ① 雑談
- ② 相談
- ③ 依頼
- ④ 交渉
ここに第5の選択肢として、壁打ちを加えていただきたいのです。
壁打ちは、雑談と相談の間にあるコミュニケーションです。雑談ほどラフではなく何らかの目的を持ちますが、相談ほど目的は明確でなく、内容も具体的でないことが多いです。まして、依頼や交渉ほど目的も具体性も明瞭ではありません。
壁打ちの特徴は、目的も具体性も漠然として曖昧なところにあります。「漠然としている」と聞くと、よくないことに思えるかもしれません。しかし、「頭の中にぼんやりとしたアイデアらしきものはある」という段階はよくあることではないでしょうか? それくらいの状況で、相談を持ちかけることは気が引けるでしょうが、壁打ちなら相手に具体的な答えを求めるわけではないので、そんなときでも気軽にやって構わないのです。
雑談ではもの足らない。だけど相談できるほど具体的に固まっていない。そんなときこそ壁打ちによって、考えを整理し深めていくのです。
この「まだ曖昧な段階でも話していい」という気軽さこそが、壁打ちの大きな強みです。相手に迷惑をかけてはいけない、きちんと整理してから話そうと思いすぎて、誰にも相談できないまま時間だけが過ぎていく。壁打ちは、そんな状況を避けるための有効な手段なのです。この「曖昧な段階で話す」ということについて、もう少し深く考えてみましょう。 【次ページ】上手に話す必要なし、頭の中にあるものをそのまま出すだけ
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