• 2026/07/10 掲載

マイクロソフトが本当に伝えたかった…働き方を180度変える「次世代Copilot」の衝撃

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2026年6月に開催されたマイクロソフトの年次開発者イベント「Microsoft Build」では、自律的に動く新製品や、企業が独自に育てられるAIモデルなど、注目の発表が相次ぎました。中でも重要なポイントだったのは、企業における今後のAI活用に必要な視点や、AI時代の競争優位性の築き方です。この点には、マイクロソフトの今の考え方が明確に示されています。Buildの発表内容を題材としつつ、筆者自身の解釈も交えながら整理していきます。AIエージェント時代の到来を見据え、本稿ではMicrosoft 365 Copilotユーザーにとっても見逃せない内容を取り上げます。
執筆:内田洋行 太田 浩史

内田洋行 太田 浩史

1983年生まれ、秋田県出身。2010年に自社のMicrosoft 365(当時BPOS)導入を担当したことをきっかけに、多くの企業に対してMicrosoft 365導入や活用の支援をはじめる。Microsoft 365に関わるIT技術者として、社内の導入や活用の担当者として、そしてひとりのユーザーとして、さまざまな立場の経験から得られた等身大のナレッジを、各種イベントでの登壇、ブログ、ソーシャルメディア、その他IT系メディアサイトなどを通じて発信している。

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AIモデルは日々進化し、用途に応じて入れ替えられるが、組織のコンテキストは交換できない。差別化のカギはコンテキストにある
(画像:筆者提供)

役立つAIエージェントは「コンテキスト」がキモ

 さて、AIモデルの性能の向上は目覚ましく、各社がその性能を競い合うかのようにリリース合戦が続いています。しかし、そうしたフラッグシップモデルのベンチマークを比較することに、どれほどの意味があるのかというのが、マイクロソフトからの大きな問いであったように思えます。

 今後もハードウェアの性能は向上し、AIモデルの動作に必要なコストも下がっていくだろうという中で、フラッグシップモデルを使えること自体は、差別化にはなりにくくなっています。

 Microsoft 365 Copilotがそうであるように、AIモデルはタスクごとに最適なものを選んで入れ替えることができる時代になりました。本連載でも紹介したPowerPointのCopilotでは、テキスト生成と画像生成でそれぞれ異なるモデルを選択できるようになっていました。モデルは交換可能です。では、交換できないものは何でしょうか。それは、私たちが持っているナレッジ、暗黙知、つまりコンテキストです(冒頭の図参照)。

 今後はさまざまな場所からさまざまな形で、AIエージェントが私たちの仕事を助けてくれるようになるでしょう。そのときに、エージェントがそれぞれバラバラのコンテキストで動作していたのでは、ユーザーは混乱するだけです。

 あっちのエージェントはこう言ったけど、こっちのエージェントは別のことを言っているのでは、何を信じたらいいのか分かりません。そこで、今後開発されるすべてのエージェントから呼び出すことのできるコンテキストの共有基盤として発表されたのが「Microsoft IQ」です。
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コンテキストを強化する「Microsoft IQ」とは?

 Microsoft IQは、CopilotやAIエージェントが、組織の情報を理解するための知識の基盤となるものです。4つのIQで構成されており、Web IQ、Work IQ、Fabric IQ、Foundry IQが含まれます。

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【画像付き記事全文はこちら】Microsoft IQはWeb IQ、Work IQ、Fabric IQ、Foundry IQの4つで構成される
(画像:筆者提供)

 Work IQは、前回の記事で詳しく紹介した通り、Microsoft 365などに蓄えられた情報を基にユーザー個別の仕事の文脈を提供するものです。

 Fabric IQやFoundry IQは、さまざまな場所にある業務データを統合し、エージェントが組織を理解し、ナレッジとして利用できるようにします。

 そこにWeb IQが新たに加わりました。Web IQは、インターネット上の情報から、いま必要な情報を取得するための仕組みです。すでにMicrosoft Copilotなどで採用されているようです。

 Microsoft IQの4つの要素がそろったことで、これらを参照するエージェントは、共通のコンテキストの上で動作できるようになります。

 コンテキストの重要性は、Microsoft 365 Copilotユーザーであれば、近ごろのWork IQの強化によってCopilotの返す回答の品質が向上していることで実感している方も多いはずです。私たちが日常的にMicrosoft 365を使い、Outlookでメールをして、Teamsでチャットや会議を行い、ExcelやWordでドキュメントを作り続けていること。

 それが私たちの働き方の足跡となり、Work IQが提供するコンテキストが強化されていきます。そしてこのコンテキストこそが企業の暗黙知でもあり、独自に持つ強みとなり得る競争優位性の源泉にもなります。

副操縦士から自動操縦に? 新製品「Microsoft Scout」とは

 そしてこのWork IQは、マイクロソフトが発表した新たなカテゴリーの製品でも生かされていきます。その製品とはMicrosoft Scoutです。

 これまでCopilotは、ユーザーの問いかけや指示により動作するものでした。それに対しScoutは、常にそばで動作し続け、指示を待つことなく先回りして作業を行います。MicrosoftはこれをAutopilotsという新しいカテゴリーで紹介しました。これまでのCopilot(副操縦士)ではなくAutopilots(自動操縦)というわけです。

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Autopilotsは指示を待たずに自律的に動作し続ける新しいカテゴリーとして発表された
(画像:筆者提供)

 会議の調整や準備に必要な資料の生成をScoutが能動的に行いながら、常に進ちょく状況を知らせてくれます。ほかにも、必要な成果物を追跡し、その作成時間をカレンダー上で確保してくれるなど、まさに専属の秘書と言うべき存在です。

 Scoutは、オープンソースのAIエージェントであるOpenClawをベースに構築されています。OpenClawはデスクトップアプリを介してユーザーの環境で動作するエージェントの仕組みで、そこにWork IQが加わることで、私たちの業務を理解しながら支援してくれるものになっています。

 現在、Scoutはフロンティアプログラムとしてプレビューでの利用が可能です。ただし、ローカルPCで動作するということもありセキュリティの懸念も考えられます。そのためか、利用にはMicrosoft 365 Copilotライセンスに加えて、Intuneでのポリシー設定のほか、GitHub CopilotのBusinessやEnterpriseライセンスが必要であるなど、導入のハードルは少々高い状況です。注目される機能ではありますが、ライセンスの要件などについては引き続きチェックが必要でしょう。 【次ページ】注目は7つのAIモデルと「初の自社製AI推論モデル」
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