• 2025/07/12 掲載

「お客さまの声」すべて聞く必要なし!イーロン・マスクが示す「埋もれない」商品開発(2/3)

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「意思」がない作り手に、魅力的な商品は作れない

 今でこそ中古市場が育ってきたが、前述のようにこれまでメーカーは細かいアップデートを繰り返し、新発売であることを価値として訴求してきた。その結果、私たちの中にも「新しい」を価値とする新品思想が生まれた。

 本体の価値は変わっていないのに、箱を開けた瞬間に価値が下がる。誰かが触った瞬間に価値が下がる。

 キッチンも同じだ。新品で購入して1本目の傷がついたことで、私たちは必要以上に動揺する。「傷がついてしまった」とメーカーに対して訴えかける。

 これらの声を受けてメーカーは「傷つかないこと」、つまりは「新品のような状態であり続けること」を価値としたアップデートを続けてきた。その先にあるのが、すべてをコーティングした無機質なプロダクトたちだ。

 キッチンに限らず、現代では無機質なプロダクトが多い。それらに囲まれてきたことで、私たちの中には今「手触り感」に対する欲求が生まれている。これはいわゆる「クラフト」と呼ばれるジャンルで、大量生産でなく均一品質でないプロダクトのことだ。

 またステンレスキッチンのように傷を自分だけのストーリーとして捉える価値観が生まれ始めた。代表的なのは日本古来の文化である「金継ぎ」だろう。割れた皿やコップを金で継いで使い続ける文化は今、特に若い人たちに人気だ。事実、「金継ぎ」とGoogleで調べると、その話題量はこの10年で5~6倍にもなっている。

 「お客さまの声」から商品を作るのではなく、「作り手の意思」から商品を作る。

 そんなエゴのようなプロダクトが、現代では魅力的に映る。逆に言えば、これからの時代は意思がない作り手に魅力的な商品を作ることはできないだろう。

 「自分の意思」は、情報過多の時代における最も強力な差別化の武器だ。それは選択肢の海で迷う生活者に、「迷わず選べる」という価値を提供する。

 差別化は簡単ではない。しかし、他社と違うことや新しいことを目指すより、「なぜ自分たちはこの商品・サービスを提供するのか」という本質的な問いに向き合うことで、自然と独自の道が見えてくるのではないだろうか。

かつてない精度・頻度で届く「お客さまの声」、問題は…

 差別化するためのもう1つの武器は「あえて皆と異なる方向性を選ぶ」ことだ。

 デジタル化によって、お客さまの声がかつてない精度と頻度で作り手に届くようになった。

 これは提供者にとっても生活者にとっても、世の中の潮流が掴みやすくなったと言える。SNSのタイムラインを注視していれば、さまざまなカテゴリの流行や潮流はある程度掴める。

 問題は、すべての提供者が同じ情報源からインプットを得て、同じようなアウトプットを生み出していることだ。

 全員がSNSで「いいね」を集めている投稿を参考にし、同じユーザー調査に基づいて商品開発をすれば、市場は当然均質化する。

 選択肢が増えても本質的な「選びやすさ」は生まれない。すべてが似ていれば、選択自体が意味を失うからだ。 【次ページ】時代の空気が読みやすい今だからこその「逆張り」
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