- 2025/07/12 掲載
「お客さまの声」すべて聞く必要なし!イーロン・マスクが示す「埋もれない」商品開発(3/3)
時代の空気が読みやすい今だからこその「逆張り」
そこで有効なのが「逆張り」だ。逆張りと言うと、突拍子も無い奇抜な行動と捉えられがちだが、そうではない。潮流を正確に読み取った上で、あえて異なる方向性を選択する手法だ。時代の空気が読みやすい今だからこそ、意図的に競争から抜け出すことができる。
たとえば、電子書籍で何万冊もの本が買える時代に、東京・銀座の森岡書店はたった1冊の本を扱う書店として注目を集めている。毎月テーマに沿った1冊だけを厳選し、その本を読むための空間を提供しているのだ。この差別化を極めた徹底的な「特異点化」により、本好きの間で大きな話題となっている。
高品質な完成品を百貨店が取り揃える時代に、台湾の誠品生活ではあえてDIYで製品を作らせて人気になっている。完成品を所有するのではなく「作る過程を楽しむ」という、他には無い満足感を提供したからだ。
さらに飲食店の世界では、何でも口コミで評判がわかる時代に、あえてGoogleマップに載せない店や、写真の掲載をNGにする店が人気を集めている。情報過多の時代に「逆に情報を制限する」ことが、希少性と話題性を生み出すのだ。
これらは単なる反抗心ではない。生活者の「とあるニーズ」を掴んでいるのだ。
それは「揺り戻し」だ。
揺り戻しとは、一定の流れに対して元に戻ろうとする作用のことだ。
私たちの日常の中でもよく見られる。
SNSで同じような投稿ばかり目にするとき、「もう飽きた」という感覚に襲われないだろうか?
どれほど魅力的なトレンドでも、繰り返し目にすれば新鮮さは失われていく。流行が長く続くほど刺激は弱まり、やがて私たちの興味は、「みんなと違う何か」へと自然に移行していく。
また、周囲の多くの人が同じものを持ち、同じ行動をとり始めたとき、「少し違うものを選びたい」と感じることがあなたにもあるはずだ。人間は本能的に自分と他者を区別したい、個性を表現したいという欲求がある。
この2つの心理が組み合わさることで、揺り戻しは必然的に起こる。

かつて流行が定着するには一定の時間を要した。一部の界隈で兆しが興り、それが徐々に広がって、メディアが報じ、潮流や流行は次第に認識されていった。しかし今やSNSを舞台にして、さまざまなジャンルの流行がスピーディーに拡がって、終わっていく。その様子を私たちは日々目の当たりにしているのだ。
流行や潮流、終わり始める潮目が見えやすくなったからこそ、その反対に向かいたくなるニーズもまた高まっている。昨今では、SNSで潮流の傾向が見え始めたころ、必ずと言っていいほどカウンターパート(反対側の存在)が現れる。これはモノの流行に対しても、政治的な意見の潮流なども同じだ。
この真のニーズとも言える逆の流れを、最適なタイミングで掴めるか。それが今の時代の差別化の鍵になり始めている。
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