- 2025/08/02 掲載
「時間がない日本人」vs「ゆとりのドイツ人」、それでも生産性1.4倍の残酷格差の正体
ドイツ歴40年。父親の転勤に伴い8歳から13歳(小3から中2)までの6年間をドイツの現地校GrundschuleとGymnasiumに通い生活。ドイツ語の習得はもちろん、ドイツの文化・生活にどっぷりとつかって少年期を過ごした経験を持つ。慶応義塾大学法学部法律学科を卒業後、日本銀行での社会人経験を通じ、また社会の一員として社会的役割の大きい会社での複数の職務の経験を通じ、日本人の若者は目指したい道(各種の職人、スペシャリスト)があってもその目的に向かって歩む道が非常に少ない、または将来に希望が持てないという相談を数多く受けたことをきっかけに、ドイツのマイスター制度にそのソリューションを見出し、高野哲雄と共同でダヴィンチインターナショナルを設立。後にドイツに法人A&TGlobal GmbHを設立し、現在に至る。ドイツに関する情報を日々発信しており、インスタグラム12万人、YouTube2万人など、SNS総フォロワーは30万人にのぼる。
共通点も多いはずの日本とドイツなのに…まるで違う
日本では、ほとんどの社会人の皆さんが「自分の時間が取れない」と言います。「毎日、自由な時間がいっぱい!」という社会人は、まずいないのではないでしょうか。
社会人に限らず、学生のころから、部活だ、受験だ、習い事だといって自由時間のない人生を送ってきているのが、多くの日本人の実態だと思います。
そして、それが大人になっても続いています。
朝起きたら慌ただしく準備をして、満員電車に揺られながらスマホで情報を得る。
会社に着いたら、同僚と軽くあいさつを交わして、すぐに仕事に取りかかる。
長引く会議や、次々と舞い込んでくるトラブルに対応しているうちに、気付けば終業時間も過ぎ、終わっていない仕事を片づけるために残業。
帰宅したらすぐに寝てしまうし、休日も疲れてベッドで1日を過ごす……。
「タイパ」や「時短」に取り組んでみても、なぜか「やらなきゃいけないこと」は一向に減る気配がなく、一体いつになったら「やりたいこと」ができるのだろうと悩んではいませんか。
とはいえ、定年退職してぽっかりと時間が空くと、今度は何をしていいのかわからない。あるいはそのときには病気になってしまって、なかなか好きなことができない。
そのような人生を送っている人が周りにいないでしょうか。
それに比べて、私が長く住んでいるドイツでは、「時間がない」という人に滅多に会いません。巷(ちまた)にあふれている情報からも、社会人は時間が足りなくて大変という雰囲気は、まったくないのです。
多くの日本人は、ドイツ人のことを「真面目」や「勤勉」で、自分たちと同じくらい忙しく働いていると思っていることでしょう。ドイツと日本は同じ技術大国で、経済レベルも同じくらい。しかし、国の面積や人口は、ドイツのほうがやや小規模かなという印象を持っている人が大半だと思います。そのため、日本人と同じように、仕事が人生の中心で、自由な時間が取れない生活をしているように見えるかもしれません。
しかし実際は、ドイツ人はゆったり、たっぷりと自分たちの人生の自由時間を楽しんで生きています。あくせく時間に追われている印象は、まったくなし。
朝も機嫌良く出勤し、終業時間になったらすぐに帰っていきます。帰宅後には家族や友人たちと一緒にご飯を食べたり、サッカーや合気道、オーケストラなどの習い事を楽しんだりしています。
それでいて国内の経済は悪くなくて、生産性はヨーロッパの中で比較的安定しています。『データブック国際労働比較2024』によると、2022年の国内総生産(GDP)はヨーロッパで1位でした。
日本と比較してみると、その差はわずか約1.06。
2023年には、ドイツが日本のGDPを抜き、世界3位となりました。とはいえ、もちろんドイツの経済にも政治にも、さまざまな課題があることは言うまでもありません。
ですが、街を歩いていると、ドイツ人のほうがあくせくせずに、幸せに過ごしているように感じます。特に街を歩く年配の夫婦が仲良く手をつないでお買い物をしている姿を見ると、将来に希望を感じます。これは、ただ単に文化の違いがあるだけではありません。若いときから一緒に時間をともにしてきた結果、仲の良い夫婦関係が続いているのです。実際に幸せオーラが漂っています。同じ先進国に分けられているはずの日本とドイツなのに、国民の時間の感じ方も、幸せそうな雰囲気も、まるで違うのです。
なぜなのでしょう?
【次ページ】なぜ日本人はいつも「時間が足りない」と感じているのか
ワークスタイル・在宅勤務のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR