• 2025/12/28 掲載

Rapidus、AI半導体設計基盤「Raads」を発表、AIエージェントにより設計コストを30%削減

Rapidus独自の製造モデル「RUMS」の中核基盤として2026年度より提供

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Rapidus株式会社は2025年12月17日、独自のAI設計支援基盤「Raads(Rapidus AI-Agentic Design Solution)」のツール群を発表した。「Raads」はRapidusが掲げる新たなファウンドリ・サービス戦略「RUMS(Rapid and Unified Manufacturing Service)」の中核として位置付けられ、2026年度から顧客向けに順次提供される予定である。発表によれば、既存の電子設計自動化(EDA)ツールと組み合わせて活用することで、最先端デバイスの設計期間を約50%短縮し、設計コストを約30%削減することが可能とされる。なお「Raads」は従来のAI支援から一歩進め、AIが自律的に設計課題を解決する「AIエージェント」として機能することを目指すコンセプトと位置付けられている。
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(画像:Rapidus株式会社)
「Raads」に含まれる主要なツールとして、LLM(大規模言語モデル)ベースの「Raads Generator」と、設計の性能・消費電力・面積(PPA)を短期間で予測する「Raads Predictor」がまずリリースされる。

「Raads Generator」は、ユーザーが仕様や希望する性能を入力するとRapidusの2nmプロセスに最適化されたRTL(レジスタ転送レベル)設計データを出力する機能を持ち、「Raads Predictor」はRTLデータと設計制約情報を入力することでPPAを効率的に予測する機能を有する。これらにより、設計者はアイデアを即座にコード化し、性能予測を迅速に実施できるようになる。

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Raadsの概要(出典:Rapidus株式会社)
その後も「Raads Navigator」「Raads Indicator」「Raads Manager」「Raads Optimizer」といった設計QA支援やレイアウト最適化、PPA最適化支援ツールが順次提供される予定だ。

Rapidusは「Raads」を2nm製造プロセスに対応したPDK(プロセス設計キット)やリファレンスフローとセットで提供する計画で、設計・製造の一体化によってサイクルタイム全体を短縮し、顧客の市場投入までの期間を大幅に短縮する狙いを示している。北海道千歳市の最先端工場「IIM-1」では既に2nm GAAトランジスタの試作が進行しており、Rapidusはこれと並行してPDK整備を進めている。

Rapidusの取り組みは、AIを活用して設計効率を高めるという点で、先行するファウンドリ企業の動きとも共通しているが、そのアプローチには差異がある。例えば、TSMCはEDAベンダー各社と連携し、設計フロー全体を最適化するプログラムやAI駆動型設計支援を強化している。

TSMCはCadenceやSynopsysらと協業し、AIを活用した設計ツールの検証や最適化フローを提供し、顧客が最新プロセスを活用して高速かつ高性能なAIチップを設計できるよう支援している。またEDAツールの認証・最適化プログラムによって広範なツールエコシステムを確立し、設計者が既存のツールチェーンで先端プロセスを利用しやすくする取り組みを進めている。

サムスンファウンドリもEDAパートナーとの連携を通じて、エンドツーエンドの設計支援や最適化された設計フローを用意し、顧客が同社の先端プロセス技術を活用しやすくする設計環境を整備している。これには仮想設計パートナー(VDP)やデザインソリューションパートナー(DSP)との協力による包括的な設計支援が含まれる。

Rapidusの「Raads」は、AIエージェントとして自律的に設計工程に介入する点が特徴であり、設計者が仕様を入力するだけで初期設計コードを生成し、性能予測まで迅速に行える点が強調されている。また、Rapidusが提供するPDKと連携した専用フローによって、2nm世代の設計を標準化・自動化することを意図しており、設計プロセスの簡素化と時間短縮を戦略的に進める姿勢が見られる。

一方で、TSMCやサムスンなどは主要EDAベンダーとの長年の連携によってエコシステム全体を構築し、広範なツールやライブラリの最適化、国際的な設計標準の整備といった既存設計コミュニティとの協調を重視しているという違いがある。

Rapidusの「Raads」はまだ市場投入前の段階であり、実際の効果や導入実績はこれから明らかになるが、AIを活用した設計プロセスの自動化・効率化という観点で、ファウンドリサービスの価値を高める新たな試みとして注目されている。

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