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- 2026/03/13 掲載
いよいよ本格始動の「排出量取引制度」、イラン紛争で浮かぶ「経済的な盲点」とは
連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長。現在、イトモス研究所所長。著書に『週刊誌がなくなる日』など。
ついに本格稼働の「排出量取引制度」
2026年4月1日、日本国内において排出量取引制度、通称GX-ETSの本格稼働が始まる。二酸化炭素の直接排出量が直近3年度平均で10万トンを超える企業に対し、制度への参加と、政府が定めた排出枠の保有を法的に義務付ける仕組みだ。対象となるのは、電力、鉄鋼、化学などを中心とした約300社から400社の大企業である。日本国内のエネルギー起源による二酸化炭素排出量の約60%をカバーする、極めて大規模な規制となっている。
この規制、一部の巨大企業に限られた話に見えるかもしれないが、実態はまったく異なる。日本経済を根底から支え、世界市場で激しい競争を繰り広げている中核企業が「狙い撃ち」にされている状態なのだ。輸出で外貨を稼ぐ製造業にとっては、企業の存続を左右する死活問題となる。現在施行されようとしている排出権取引の義務化は、長年培われてきた産業の基盤を根底から揺るがす危険性を孕(はら)んでいる。
排出量取引制度の本格導入は、岸田文雄元首相が主導した「成長志向型カーボンプライシング構想」の産物である。2022年10月のGX実行会議において、当時のトップ自らが炭素税と排出量取引の組み合わせを検討するよう指示を出した。
その後、2023年5月にGX推進法が成立し、2025年5月の法改正によって、2026年4月からの義務化が法定化されるに至った。施政方針演説でも法定化を進めると宣言し、無理やりにレールを敷いてしまった。
経済産業省が発表した報告書には「温室効果ガスの排出削減と経済成長・産業競争力強化をともに実現する」という言葉が並ぶ。しかし、厳しい国際競争にさらされる製造業の現場から見れば、この制度は単なる追加の税金や理不尽なペナルティに映ってしまいかねない。 【次ページ】イラン紛争が日本経済に突き付けた「厳しい現実」
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